地方公務員災害補償基金の「メリット制」導入に対するとりくみについて
地方公務員災害補償基金(以下、基金)は、「メリット制」の導入を検討しています。「メリット制」とは、地方公共団体からの負担金を過去3年間の収支の状況によって増減させるもので、具体的には、過去3年間の基金の給付費を負担金で割ったものを収支率として計算しこの収支率を全国比較することで、収支率の高い団体、つまり給付費が多い団体は負担金が増となり、逆に収支率の低い団体は、負担金が減となる制度です。
「メリット制」は、別紙「資料」に示したように大きな問題をもつ制度です。
この間、自治労連は「働くもののいのちと健康を守る全国センター公務部会」で、全教等とともに、「メリット制」導入への対応について検討をすすめてきました。その中で、公務部会として基金本部に要請するとともに、各基金支部がどう対応するかが重要であり、各地で各基金支部要請に積極的にとりくむこととしました。
「メリット制」導入に関する資料
2009年5月7日
自治労連 賃金権利局
1.「メリット制」導入の経過等
基金は、2003年度決算で創立以来はじめて赤字に転落、以後3年連続の赤字を記録、2007年度も赤字は不可避とし、2006年6月から財政委員会で「メリット制」について調査検討を始めました。財政委員会は2008年3月に「メリット制の制度設計について」との答申を出しました。
この後も検討が続けられ、今年6月の基金の代表者会議で定款の変更等を行うなど導入を決定し、来年度から実施するとしています。
2、具体的制度設計内容
@適用単位 団体ごと職種ごと
A適用団体 都道府県、指定都市、中核市又は特例市及び特例区を対象とする。(消防職員は別)
B適用職種 対象職種:義務教育学校職員、義務教育学校職員以外の教育職員、警察職員、
消防職員、電気・ガス・水道事業職員、その他の職員
対象外:船員、運輸事業職員(人数が少ない等)
C通勤災害 メリット制の算定基礎に含める
Dメリット収支率
団体ごと職種ごとに給付費の額と負担金の額との割合によりメリット収支率を算定する。メリット収支率は、個々の団体の個々の職種ごとに被災職員にかかわる給付費を当該団体・職種が納入した負担金で除して算定する。
Eメリット増減率
メリット収支率に応じ、決定する。幅は土20%とし、率の刻みは 5%の4段階とする。負担金は当分の間3年ごとの収支均衡を図る純賦課方式(数年間の収支と支出の均衡を図る方式)とする。
F適用開始年度 2010年度
基金では、2009年3月30日に財政委員会が開催され、企画課よりメリット制導入のシミュレーション等が提案され、導入にむけての検討が行われています。企画課の話では、今後6月の代表者会議で定款の変更等を行うなど導入を決定し、2010年4月から実施するとしています。また、基金は、2010年度からの実施にむけて、2009年度より次第に準備を進めていくとしています。
3、私たちの基本的な考え方
基金は、「メリット制」の導入で「基金の赤字や、支部・団体間で負担と給付の不均衡を解消する」とともに、「任命権者の公務災害防止努力を促すことで、公務災害そのものの減少を図る」としています。基金の各支部長は都道府県知事や政令指定都市市長です。公務災害発生の背景には異常な自治体職員や教職員の定数削減等があります。支部長である知事や市長は、「災害そのものの減少を図る」ため、何より定数を大幅に増やすこと等に全力をつくすべきです。
しかし、公務職場ではメンタルヘルス不全者の増大など大きな問題がある中で、「メリット制」導入は公務災害の発生そのものを減らすのではなく、認定件数を減少させることや公務災害の認定請求を抑制するなど「公務災害隠し」が横行することが懸念されます。現在でも公務災害の認定請求が出しにくい状況が、メリット制の導入で、さらに出しにくいことになりかねません。
地方公共団体は、地方公務員の公務上の災害(負傷、疾病、障害又は死亡)や通勤による災害に対して、きちんと補償しなければなりません。基金は、地方公務員災害補償法により、地方公共団体等に変わって迅速かつ公正な補償を実施するために設けられました。この設立の目的のもと、地方公務員の公務災害の発生の実態をふまえ、公務の実態に合わせた認定基準の改善や、公務災害補償をきちんと行うことを第一に施策を検討すべきです。
以上