東京自治労連「当面の現業闘争方針」
2009年秋季年末闘争から2010年春闘期の現業闘争前進をめざして
2009年9月30日
東京自治労連中央執行委員会
1 はじめに
この間、自治体構造「改革」路線に基づいた極めて厳しい現業職に対する攻撃が続き、賃金改悪、退職不補充方針に基づく定数削減、民間委託化・民営化が強引に推し進められてきました。
しかし、闘いが情勢を切りひらき、新規委託化を阻止し、現業職域を守り、退職不補充方針を打ち破ることが可能な、客観的な状況の変化を築いています。
東京自治労連として、現業・非現業一体の闘い、正規・非正規が一体となった攻勢的な闘いを構築し、賃金要求の前進を含めた諸要求の前進をつくりだしましょう。
2 現業賃金・合理化・任用替問題は一体の攻撃
(1)政府の強い地方統制に基づく現業賃金改悪攻撃
特別区は、2007年賃金確定闘争において現業給料表平均9%引き下げ、東京都においては2008年賃金確定闘争において、同8%引き下げでの決着を余儀なくされています。
政府は、2007年6月19日に「経済財政改革の基本方針2007」(骨太方針2007)の中で,自治体現業職員を名指しした賃金改悪を掲げ、民間の同一又は類似職種従事者との均衡した賃金水準への改悪を基本として、その取組方針を2007年度中を目途に策定・公表することを全国の自治体に強要しました。(2007年7月6日付、「技能労務職員等の給与等の総合的な点検の実施について」)
2009年人事院勧告の取扱を決定した8月25日の閣議決定においても「現業職員給与は骨太方針2007に沿った取組の着実な推進」と明記し、同日付の総務事務次官名「地方公務員の給与改定に関する取扱い等について」通知においても「現業職員給与の見直し」を位置付けており、政府の強い統制に基づく現業賃金改悪攻撃が継続しています。
しかし、学校・保育園の給食調理業務をはじめとした公務現業労働者の賃金を、民間同職種と比較する考え方は、当該職務を民間へ置き換えることを念頭に置いたものであり、公務労働・公共サービスの否定に他ならない不当な攻撃です。
(2)退職不補充方針に基づく定数削減・業務委託化の拡大
現業職員数の削減率は極めて大きなものとなっており、特別区の場合、1998年度の現業職員数(技能X・Yを除く)17279名が、2007年度には9478名と10年間で55%の水準に至っています。
特に、「地方公共団体における行政改革の推進のための新たな指針の策定について」(2005/3/29)が、「5年間で4・6%の職員数純減を目標として、2005年度から2009年度を期間とした『集中改革プラン』策定」を強要したことを受けて、総定数純減方針と自治体現業総人件費抑制を背景とした退職不補充方針による現業職員の定数削減は一層加速し、退職不補充方針を背景とした強引かつ安易な業務の民間委託・民営化が拡大しています。
特に、近年は、団塊世代の大量退職を迎える中で、委託化による定数削減が加速し、新たな職域への新規民間委託化提案も増加しています。
(3)全国的に進行する現業職廃止を狙う任用替問題
国の指導に基づく現業職員の給与などの見直しに向けた取組方針は、ほぼ全ての自治体において策定されていますが、岡山県・広島県では現業職員全廃方針を決定しています。
広島県では現業職全廃へ向けて現業職員の行政職への任用替えを進めており、全国的に、現業職廃止を狙う任用替問題が相次いでいる状況です。
こうした動きを受けて、自治労連は、「現業賃金攻撃・現業リストラの手段としての任用替えを許さないとりくみの強化について(職場討議)案」(2009年8月6日付)を発表すると共に、全国的に現業闘争の強化を提起しています。
3 情勢の変化
(1)政治的背景を持つ現業賃金改悪(現業職廃止攻撃と一体)攻撃と、自公政治の終焉
2007年度時点で、地方公務員総数(教員や警察官を含めて)295万人に対し、現業職員は17万6千人でわずか6%にすぎず、この部分のみを人件費削減の重点対象としても財政的な効果はほとんどなく、全国の自治体当局が計画策定や民間賃金の特別調査まで実施して現業賃金改悪を行う状況は異常な事態です。
骨太方針への位置付けは、自治体現業賃金問題を「国家の重点課題」としたことにほかなりませんが、「骨太方針2007」は与党の歴史的敗北に終わった2007年7月29日の参議院選挙に先立つ6月19日に策定されたものです。
まさに、構造改革の矛盾が噴出し、与党に対する猛烈な逆風の中で、安倍政権が選挙対策として打ち出した政治的背景を持ったものといえます。
その自民・公明政権が先の総選挙において国民の審判を受けたことで、決定的な政治的背景の変化が生じています。
(2)公的責任強化の世論拡大
「民間でできることは民間で」「財政効率最優先」「自己責任」の新自由主義・構造改革路線が、国民生活を破壊したことから、「公的責任強化」の世論が強まっています。
こうした世論変化を受けて、行政内部にも変化が生じています。
先の2009年人事院勧告では、定年延長問題に関わる組織活力維持施策の中で、「公務外の業務の公務への再配置(公務が直接担う方が効率的と考えられるものに関し、その業務を公務に取り組むこと)」を掲げる事態が生まれています。
(3)偽装請負・違法派遣問題での情勢変化
現業業務の民間委託化問題では、委託攻撃に対して、住民共同を強めながら正面から闘いを進めてきました。闘いの中では、従前から偽装請負・違法派遣の視点で問題点を指摘してきましたが、一部に法の解釈における曖昧さがあり、強引かつ安易な委託拡大に歯止めが掛かりませんでした。
しかし、偽装請負・違法派遣が社会的問題となり、労働局の是正指導が行政当局に対しても行われるようになるとともに、本年3月31日付で厚生労働省職業安定局長通知(職発第0331007号)「37号告示に関する疑義応答集」が発表され、自治体現業職場の委託化を「偽装請負」と断定できる事態が生まれました。
具体的には、同通知によって、@請負作業場に、作業者が 1人しかいない場合は、偽装請負、A詳細な作業工程指示は、口頭のみならず文書であっても、請負側責任者に対するものであっても偽装請負、と判断されることになりました。
同通知を踏まえた、省庁交渉においても前進があり、本年6月18日の自治労連による文部科学省交渉のなかでは、「学校用務は、『派遣契約が適切』」(=請負は不可)との回答も引き出すなど、委託化を阻止する有力な材料が新たに生じています。
(4)墨田区職労における10年ぶり現業新規採用実現の闘い
2009年度人員予算要求闘争では、学校用務委託問題で墨田・豊島区職労が本格実施提案押し返して、「試行」「検証実施」を労使確認するなど、各単組の闘いも前進していますが、墨田区職労が画期的な到達点を獲得しました。
墨田区職労は、労使で、土木事務所の役割や公共性の認識を一致させ、技術の伝承、作業水準の維持・向上の必要性を踏まえて、最低限必要な人員措置について双方で確認することで10年ぶりに土木現業職員の新規採用を勝ち取ったものであり、退職不補充方針の壁を打ち破る到達点です。
4 秋季年末闘争から春闘期に情勢変化を踏まえた攻勢的闘いを
現業職場の新規委託化を阻止し、現業職域を守り、退職不補充方針を打ち破ることが可能な情勢の変化を築いています。
しかし、厚労省疑義応答集などで偽装請負が明確となっているにもかかわらず、当局は相変わらずの退職不補充方針に固執した委託業務拡大・定数削減攻撃を続けており、闘わない場合、委託拡大・定数削減が進行する事態となることは避けられません。
したがって、2010年度定数予算編成へむけた今秋季年末闘争から2010年国民春闘期の攻勢的展開が必要です。
情勢の変化を踏まえた闘いの展望を共有化し、攻勢的な秋季年末闘争を進める意思統一と闘う体制づくりを行い、新規委託化阻止、委託拡大阻止で現業の職域を守り、人員増と現業賃金要求課題の前進を実現しましょう。
5 取り組みの課題
(1)賃金闘争の前進をめざして
現業賃金問題をめぐって、東京都においては、級格付け廃止2年目を迎えた中で、任用制度改善が重要課題となっており、都労連は「現業職の改善要求書」を準備しています。特別区においては、5月22日に特区連が「業務職給料表の組み立て等に関する要求書」を区長会に提出し、秋へ向けた闘いの重点課題と位置付けています。
三多摩各市職においても、総務事務次官通知などを背景とした現業賃金改悪問題が確定闘争における争点となることが想定されます。
各交渉組織の賃金闘争への主体的結集をはかり、現業賃金要求の前進を勝ち取るために奮闘します。
(2)委託化阻止・新規採用実現の闘い
現業職場の新規委託化・委託拡大を阻止し、直接雇用化・現業職員新規採用を掲げた闘いを進めます。
闘いの基本は、住民サービスの維持・改善のために必要な執行体制の確立をめざす闘いであり、住民サービス水準の維持・改善を前面に掲げ、広く住民世論を結集した闘いを基本に進めます。
その上で、3月31日付厚労省疑義応答集などを活用して、偽装請負・違法派遣一掃の視点で闘いを進めます。
具体的には、「自治体職場からの偽装請負・違法派遣の一掃へ向けて」(6月24日、東京自治労連中央執行委員会決定)に基づいて取組むものです。
(3)非正規・公共関係労働者の組織化と労働条件改善
非常勤職員が労働条件面で不安定な状況に置かれ、執行体制が安定しないことが常勤職員の労働条件悪化をもたらしているように、直接雇用非正規職員の労働条件を安心して働き続けることができるように改善していくことは、業務水準維持に欠かせません。
また、民営化・委託化阻止の闘いは直接雇用の正規・非正規共通の闘いの課題であることも踏まえて、直接雇用非正規職員の組織化と労働条件改善の闘いを重視して取り組みます。
6 具体的な取組
(1)10.15全国現業統一闘争の成功
現業・非現業一体の闘いで秋季年末闘争を闘うスタート集会として都庁前総決起集会を主体的に成功させるとともに、現業組合員が、情勢の変化を踏まえた闘いの展望を共有化し、取組強化の意思統一を図るために、本闘争方針の学習を主な内容として、都庁前集会後に現業学習決起集会を開催し、多数の参加で成功させます。
【10.15全国現業統一闘争行動概要】
開催日:2009年10月15日(木)
@都庁前総決起集会
時間:16時45分〜17時30分
会場:都庁第2庁舎前
規模:1000名
A現業闘争推進学習決起集会
時間:18時〜19時30分
会場:都庁職大会議室(都庁第2庁舎32階)
規模:総決起集会参加の現業組合員を中心に100名規模
*17時45分〜18時30分まで新宿駅西口において宣伝行動を別途実施するため、現業評議会役員数名を弁士として派遣します。
(2)現業闘争委員会の設置
この方針に基づく闘いの具体化を図り、現業闘争を東京自治労連総体として推進していくために、2010年国民春闘終了までの間、東京自治労連現業闘争委員会を設置します。
@委員の構成: | 東京自治労連本部役員 2〜3名 東京自治労連現業評議会役員 2名 各単組選出現業役員代表1名。 職域代表を一部追加選任(各単組選出委員の職場・職域構成を踏まえて補う) |
A開催頻度: | 月1回定例開催 |
(3)単組段階での闘いを強化するために
@拡大中央執行委員会において、単組・補助組織・職域部会代表との意思統一を図ります。
A各単組現業評議会あるいは現業組合員を擁する支部・分会において学習会を開催するなど組合員との意思統一を進めるための取組を具体化します。
B単組執行部の指導も踏まえて、課題に関わる攻勢的な方針・要求の確立、運動具体化を図ります。
C委託問題との闘いを中心として、庁内世論形成を重視し、現業・非現業一体の闘い、正規・非正規一体の闘いを進めます。
(2)新規委託化阻止を具体的に実現するために
@ 個々の単組における新規委託化提案に対する具体的阻止を実現して、全体としての確信を持つために、必要に応じて東京自治労連全体で支援行動を行うなど、力の集中で運動を強化することも検討します。
A 自治労連の文部科学省交渉(6/18)において、文科省当局が、「違法状態があれば看過できない。指摘の厚労省通知は省としても認識しており、伝達・指導をおこなう所存だ。」「違法の実態があれば必要な措置を講じるよう教育委員会に対し指導を行う。」としていることを踏まえて、東京都の学校用務委託問題など具体的事例に基づく文部科学省要請の配置を自治労連に依頼するなど、中央本部と連携した効果的取組を検討します。
B 職域別の交流集会の実施を検討します。
C 単組交渉における活用に供するため、現業職場の委託化における法的留意事項等を整理して、配布します。
以上