年金改悪法案の自公による強行採決に抗議し、改悪を実施しないことと併せて、社会保障としての年金制度の確立を求める声明
2004年6月9日
東京自治労連中央執行委員会
自民党・公明党は6月5日未明、年金改悪法案を参議院本会議で強行採決しました。今回の法案は保険料負担を上限なく増やしながら給付を現役時代の年収から58%から40%まで減らす改悪法です。各新聞社の世論調査によると「今国会での成立を見送るべき」が6割から7割を超えています。こうした中での強行採決は国民世論に反するものであり、このような政府・与党の姿勢では国民の信頼する年金制度を確立することはできません。
私たちは強行採決に断固抗議すると共に、破綻が明確な内容でありやり方も無法な年金改悪は実施しないこととあわせて国庫負担による最低保障年金制度の確立を求めます。政府は引き続き介護保険の見直し・規制緩和による自治体の市場化を進めようとしています。悪法を推進した勢力に参議院選挙で審判を下し、イラクからの自衛隊撤退の闘いとも連動させ憲法に基づく生存権の確立と社会保障の拡充を闘っていきましょう。
破綻が明確な改悪
政府・与党は今回の年金改革について「保険料は引き上げるが上限を固定する」「支給額は減るが現役時代の50%を切ることはない」から「百年安心」の制度だと説明してきました。しかし、5月12日の参議院本会議で厚生労働省が示した資料によると政府が固定すると説明していた2017年度の上限、16,900円は長期的に名目賃金が2.1%あがると20,860円に27年には25,680円に上昇することが明らかになりました。さらに給付も受給期間が長くなるに従って減り、現在45歳の方で受給開始時(65歳)50.2%が10年後には45.1%、20年後で40.5%になることが明らかになりました。しかも、自民党・公明党・民主党による3党合意を受けて衆議院で法案可決をした後に、参議院の審議で今回の年金改悪の本質を認めるという不当な対応でした。
今回、強行採決した年金改悪法は女性一人の生涯の出生率を1.39人、名目賃金を2.1%上昇、資産運用3.2%、さらに厚生年金の加入者が来年から急に増え始めることや6割に下がっている国民年金の納付率が8割になるという前提でつくられています。企業のリストラやアウトソーシングによって厚生年金加入者が構造的に減少していることや、国民年金保険料が納付できない労働者が増えている現状を無視した机上の空論であり破綻は明白です。
このような法案の実施を許さず、政府と大企業の責任を明確にした将来の年金制度のあり方についての議論を進めましょう。
質問権を奪う委員会強行採決
6月3日、参議院の厚生労働委員会は日本共産党、社会民主党、無所属議員の質問権を奪って採決を強行しました。議員の質問権を奪うことは許されません。「100年安心」の偽りが明らかになり、国民世論が結論の先送りを求める中での強行採決でした。これは法案の中身が国民にさらに明らかになり、反対世論が大きくなることをさけようとする政府・与党の民主主義を否定する姿勢の現れです。さらに、委員会議決の非民主制を反省することなく参議院本会議で採決を強行したことは断じて許されるものではありません。民主主義議会制が多数決原理と共に持つ、少数意見の尊重、合意形成機能を改めて確認し、自公の不当性を明らかにする必要があります。
最低保障年金の確立を
年金改悪に対する私たちの闘いは終わったわけではありません。実施までには時間があります。実施を許さない闘いを国会や自治体および自治体議会に向けて広範に取り組んでいきましょう。国庫負担の2分の1を直ちに実現すると共に負担と給付のバランスをとりながら無年金者や低額年金受給者の支給額の底上げを図る議論を進めることこそが本当の改革議論です。全労連は7万円の最低保障年金制度を確立することを提起しています。財源は現在の基金の年金への活用や国の財源支出、大企業の負担増によってまかなえます。特に年金基金の特定官僚やOBへの便宜供与、特定国会議員の地元対策、投機的運用を止めさせることが必要です。国の財源支出は福祉目的税や消費税による財源確保ではなく、不要、不急の浪費的公共事業や防衛予算の削減で実現できます。
「年金財政危機論」や「消費税財源論」の不当性を国民に明らかにして最低保障年金の確立をめざし引き続き闘いましょう。
参議院選挙で審判を
政府は今、介護保険の見直しを進めています。現行40歳の保険料負担年齢の引き下げ、障害者支援費との統合など制度改悪の方向で検討が進められています。国の負担を減らすのでなく日常的に加重労働や低賃金労働を強いられている現場労働者の意見や国民の意見を反映し、高齢者が人間らしく生き生きと暮らせる社会保障としての制度を確立する必要があります。
また、財界は社会保障の全面的な見直しを求めています。社会保障制度と財政、税制との一体的な抜本改革の必要性を強調し、歳出改革と社会保障給付のスリム化・運用機関の合理化を通じて、国民負担率の上昇を抑制すべきであるとしています。そのうえで、企業負担のない消費税を活用することや社会保障をサービスとして自由に選択できるよう、多様なサービス提供主体の参入を促すべきであるとしています。社会保障における国や自治体の責任を免罪し、企業による福祉の商品化を求めています。
今回の年金改悪法の強行採決は社会保障の後退、消費税による国民負担の増を目指す政府・財界による国民に対する一連の攻撃の一環です。また、年金制度は戦費調達のために制度化されたという歴史もあります。イラクからの自衛隊の撤廃、平和憲法改悪阻止の闘いと結合して社会保障の充実を求める世論をつくっていきましょう。
今回の暴挙を許さず、国民が安心して暮らせる社会保障を確立するためにも7月に予定されている参議院選挙は重要です。年金改悪NO、社会保障の充実と民主主義守れの意思を参議院選挙で表明しましょう。
東京自治労連も皆さんと共に闘いを進める決意です。
以 上