| |
2007年11月21日 東京自治労連中央執行委員会 | |
11月20日に、「平成19年度第1回東京都後期高齢者医療広域連合議会定例会」が開催され、東京における後期高齢者医療制度の保険料等を定める「東京都後期高齢者医療広域連合後期高齢者医療に関する条例」(全30条)が決定されました。 低所得者対策の財政負担を東京都に求めており、東京都の財政支出見通しが明らかとなる来年1月の議会において、低所得者対策を盛り込む一部改正案提出予定としています。 しかし、示された保険料は、制度の構造的問題点を改めて示すと同時に、不十分な区市町村の一般財源負担、葬祭事業の給付対象除外、保健事業への一部負担金導入など多くの問題点を有しています。 生存権を脅かす制度は、中止・撤回こそ必要 後期高齢者医療制度は、「医療費削減」のみを目的として、2006年6月に強行された医療制度改悪の柱の一つです。 そもそも、低所得で病気が多い75歳以上の高齢者のみで構成する医療保険では、「保険制度」を逸脱しており、世界的にも例を見ない異常な制度にほかなりません。 差別医療の導入、滞納者からの保険証取り上げ(現行、国民健康保険法施行規則では、70歳以上高齢者は資格証明書発行適用除外。以下、国民健康保険を国保という)、住民の意見が反映しにくい「広域連合」による制度運営など、極めて大きな問題を多数抱えています。 そして、今回の保険料問題においても、制度上の大きな問題点が明らかとなっており、政府は、ただちに制度の中止・撤回をすべきです。 少なすぎる公費負担が高額保険料の最大要因 保険料軽減対策(特別対策)を講じる前の一人あたり保険料は、「112000円」です。 この水準は、厚生労働省試算及び国保保険料水準を上回っており、理解と納得の得られないものです。 後期高齢者医療制度における費用負担については、「公費5割(国12分の4、都12分の1、区市町村12分の1)」・「4割が現役世代からの拠出金」・「1割が後期高齢者の保険料」とされています。 しかし、保健事業・葬祭事業などの事業費や、制度運用上不可欠な審査・支払い手数料に対して公費負担が充当されないなど、高すぎる保険料の最大要因は、低すぎる公費負担にあります。 特に、国庫支出金のうち12分の1に相当する部分は、調整交付金(普通調整交付金90%と特別調整交付金10%で構成)となりますが、普通調整交付金は、所得格差による広域連合間の財政力の不均衡を調整するために交付されるため、所得水準が高い場合、減額されることとなります。 東京都の場合は、普通調整交付金について、平均的所得水準の地域と比較して42%もの減額調整が実施されるため、一人あたり約2万1100円もの保険料上昇を余儀なくされることとなります。 不十分な一般財源対応 制度そのものに重大な欠陥があり、制度の中止・撤回こそ必要ですが、制度導入を前提とした場合、自治体はその責務を果たすべきです。 現行の国保についても制度上の多くの問題点を有しているため、保険料水準の抑制のために、保険者である区市町村は一般財源(=税)の投入を行っており、その水準は、一人あたり特別区で約2万9300円、市町村で約2万4800円(平成17年度)に達しています。 後期高齢者医療においては、特別対策として「審査支払手数料」「財政安定化基金拠出金」「収入率(100%)と予定収入率(98%)の差額分」の計約66億円を区市町村が一般財源で補填するとしています。 この水準は、一人あたり約6000円であり、国保への対応と比較して不十分といわざるを得ません。 葬祭事業を給付対象から除外 特別対策と称して、他の医療保険制度では実施されている葬祭事業について、給付対象から除外し、区市町村の「政策判断」での対応としています。 74歳までは給付し、75歳を超えたら給付しないという対応は本来ありえないものであるとともに、「葬祭費をリスク対策として位置付けることは医療保険制度にはなじまないものと考える。」という考え方を検討経過の中で示していることは、他の医療保険給付のあり方にマイナスの影響を与えることも懸念されます。 なお、区市町村判断とされた葬祭事業について、各区市町村が国保における給付水準を踏まえた事業を実施するよう強く求めるものです。 保健事業に有料化導入 保健事業の実施については、74歳以下に対しては「特定健診・特定保健指導」を義務付けながら、後期高齢者医療においては「努力義務」とされています。 東京都広域連合は、保健事業について、区市町村委託によって実施することとしたうえで、当該費用が保険料負担に反映することを口実に、500円の一部負担金を導入するとしています。 自己負担徴収は区市町村判断としていますが、ほとんどの自治体が現行健診(老人保健法の基本健診)を無料で実施しており、健診全体の有料化に拍車をかけることが懸念されます。 保健事業実施による疾病の早期発見が医療費抑制に効果を有することを踏まえ、保健事業に一般財源を投入し、無料とするとともに、引き続き、各区市町村における現行の健康診断水準が維持されるよう対応すべきです。 低所得者に高額な保険料負担 保険料算定は、「所得割(旧ただし書き方式の総所得金額の6.56%)+均等割(37800円)」(均等割額については、所得に応じて7・5・2割減額適用。限度額は50万円)とされ、特別対策措置後の1人あたり保険料は「102900円」としています。 均等割額については、特別区国保料均等割年額35100円を上回っています。 特別区及び一部の市において国保料の所得割算定基礎には「住民税方式」が採用されており、所得割賦課が生じない被保険者割合が高い実態にあります。 これに対して、「旧ただし書き方式の総所得金額」を所得割算定対象とする場合、「住民税方式」では所得割が賦課されない被保険者に対して、新たに所得割が賦課されることになります。 したがって、現行国保水準を上回る「均等割」に加えて、多くの被保険者に対して、新たに「所得割」も賦課されるため、特別区国保被保険者を例とした場合、所得金額が235万円以下では保険料が大幅な引き上げとなり、低所得層に対して極めて重い負担が強要されることとなります。 特に、普通徴収対象者については、所得水準が低いことと高額保険料を踏まえれば相当程度の滞納が生じることとなり、徴収事務を担う区市町村への過重負担と制度空洞化という事態を招きます。 さらに、現行国民健康保険法施行規則では、70歳以上高齢者は資格証明書発行適用除外とされているにもかかわらず、後期高齢者については、滞納に伴う資格証明書発行が制度化されており、生存権を脅かすものといわざるを得ません。 東京都は広域自治体としての責務を果たせ 低所得者対策は重要であり、均等割減額適用者に対する所得割額の減額措置などの具体的対応が強く求められています。 東京都広域連合は、低所得者対策の財政負担を東京都に求めており、東京都は広域自治体としての責務を踏まえて、財政支出を早期に決断すべきです。 制度の中止・撤回の取り組みとあわせ必要な対応を進めます。 政府・与党は、参議院選挙結果を受けて、制度見直しを表明しているものの、その内容は「法改正は行わない」ことを前提としており、総選挙対策の一部先送りを基本としています。 当面、東京自治労連は、制度の中止・撤回を求める取り組みとして、国会宛署名並びに11月25日の学習決起集会成功へ向けて全力を尽します。 また、東京都に対して財政措置を求めるとともに、区市町村に対しては葬祭事業・保健事業問題等での具体的対応を求めて、関係諸団体とともに取り組みを進めるものです。 |
|
以上 |