指定管理者制度問題に対する当面の対応方針
2008年2月27日
東京自治労連中央執行委員会
 指定管理者制度が2003年9月に施行されたことを受けて、自治体関連法人(以下、関連法人という)に管理委託されていた多くの施設が2006年4月から指定管理者へ切り替えられ、指定期間3年が多数を占める中で、2009年3月末で期間満了を迎えることとなります。
 指定管理者である関連法人では、この間、大規模なリストラが推し進められ、この結果として住民サービス低下を招いており、再指定時期を控える中で、この問題への対応と再指定の確保へ向けた対応が強く求められています。
 また、直営施設の指定管理者制度化攻撃も強まっており、改めて指定管理者制度の問題点を整理し、取組の強化を図るものです。

1 公的責任放棄と市場化促進の指定管理者制度
 「公の施設」の管理は、その公共性を考慮し、地方自治法第244条の2によって公共的団体に限定されていたものですが、同法改正により「指定管理者制度」が導入されました。
 これまでは、契約により管理業務を委託する管理委託制度であり、委託先については@地方自治法上の公共団体、A公共的団体、B自治体出資法人、(以下、関連法人という)に限定されていました。しかし、制度改正によって、管理者指定という行政処分により私人に管理権限を設定するもので、指定管理者は団体であることを要しますが、範囲についての制約は無く、純然たる株式会社も参入可能となりました。
 また、これまでは「委託」であったため、施設の管理権限・責任は自治体が有していましたが、指定管理者制度は「委任」として、指定管理者に権限が委ねられるため、自治体に残るのは施設所有権(=国賠法上の責任)のみとなりました。
 さらに「指定期間」設定や「公募」を原則とすることにより、「公の施設」の公的責任放棄と市場化を促進する、極めて不当な制度となっています。
 法改正をうけて全国で約6万施設が指定管理者制度で運営される事態に至っており、そのうち約47・3%が指定期間を3年に設定されている状況です。
 総務省調査でも34施設が「指定取り消し」に至っているように、その問題点も顕在化している状況です。

2 都内関連法人における大規模なリストラと住民サービス低下
 都内自治体で施設運営を担っていた関連法人は、指定管理者制度移行に際して、民間事業者との競争を口実とした大規模なリストラ攻撃を受け続けています。
 労働条件の「自治体準拠」原則は崩壊し、関連法人固有職員の大幅な賃金削減・労働条件改悪が相次いでいます。
 自治労連の調査では、基本給で6%削減から手当全廃などを含めて25%減収という事例まで生じています。
 また、目黒区立特別養護老人ホームをはじめとした福祉施設を運営する目黒区社会福祉事業団では、04年の職員数は常勤職員224名・非常勤職員76名でしたが、07年は常勤職員198名・契約職員(非常勤職員)120名と、常勤職員定数の大幅な削減と不安定雇用労働者の拡大が進んでいます。
 こうした常勤職員削減と不安定雇用労働者への切り替えを中心とした大規模なリストラ合理化と指定期間設定に伴う先行き不安が、職員定着率の低下と職員確保に困難をもたらしています。
 世田谷区立特別養護老人ホーム等を運営する世田谷区社会福祉事業団における05年2月から3月の状況では、常勤・非常勤・臨時職員の退職者数が101名に達する一方で採用は74名にとどまり、27名が欠員として放置される事態に至っています。
 こうした執行体制の悪化は、職員のモチベーション低下はもとより、直接処遇職場では著しい利用者へのサービス低下を生じており、特に高齢者介護の現場では利用者個々への対応が困難となるなど、介護力が低下し、利用者は施設入所によってむしろ歩行能力が低下する事態も指摘されています。

3 直営施設の指定管理者制度化(=民営化)攻撃
 法施行後3年以内に指定管理者制度に移行するか、直営に戻すかの選択を行う経過措置との関係で、当初は管理委託がなされている施設の扱いが焦点となっていましたが、近年は、指定管理者制度に基づく直営施設の民営化攻撃が激しさを増しています。
 特に、児童館や保育園などはじめとした児童福祉施設、体育館や図書館などの社会教育施設の民営化が進行しています。
 保育園民営化問題では、住民との共同闘争の前進の中で、一部において攻撃を押し返す到達点も築いていますが、指定管理者制度を口実として、多くの職場が一方的に民営化を余儀なくされている実態もあり、この流れは加速しています。
 公的責任の後退はもとより、公設公営で築き上げられた事業水準を維持する基盤としての執行体制の著しい低下を招くものであり、住民サービス低下は必至です。加えて、自治体が住民ニーズを踏まえた行政運営を行ううえで、現場を直接運営しないことは大きな弊害となるものです。


4 指定管理者制度の基本的な問題点
(1)「公募」を利用した「架空の競争」でリストラ推進
 管理委託制度のもとで、関連法人は、公的責任の受け皿としての位置づけを踏まえて、自治体当局からの財政支援のもとに、設置自治体職員に準拠した関連法人固有職員の労働条件確保、質の高い住民サービス提供が行われてきました。
 しかし、指定管理者制度導入を受けた総務省自治行政局長通知「地方自治法の一部を改正する法律の公布について(通知)」(平成15年7月17日付、総行行第87号)の中で、「指定の申請に当たっては、複数の申請者に事業計画書を提出させることとし、」と記されていることなどを根拠として、各自治体当局が「公募」を原則として位置づけています。
 このため、民間事業者との競争を口実として、関連法人に対する自治体支出金の大幅削減が強要され、この財政基盤喪失が関連法人の執行体制を破壊し、住民サービスの大幅な低下をもたらしました。
 特に、公務関連業務には競争原理が働かない分野も多く、応募事業者が想定されない施設や、当初から公募によらず従前の関連法人を指定する場合においても、財政支出削減が強行されるなど、「架空の競争」のもとに関連法人のリストラが推進されています。
 こうした動きは、「再指定」にむけて、さらに強まっており、指定期間満了後の「公募」を口実とした更なる経費削減に基づく一層のリストラ攻撃にさらされており、労働者の労働条件切り下げが人材確保を困難とし、住民サービス低下に直結する事態を迎えています。

(2)多くの矛盾と問題を生み出す「指定期間」設定問題
 地方自治法第244条の2の第5項「指定管理者の指定は、期間を定めて行うものとする。」を受けて、指定管理者には指定期間が設定されています。
 指定期間は、5年以下が93.4%、3年以下が55.3%となっており、全体として極めて短期間の指定となっています。
 指定期間の設定は、事業者に対して有期雇用での労働者集団を構成せざるをえない状況作り出すとともに、指定期間設定に伴う先行き不安とあわせて、職員定着率の低下と職員確保に困難をもたらし、住民サービスを支える基盤を損ねています。
 さらに、長期的展望に基づく計画的な事業運営をも困難としており、明らかに公の施設の機能を低下させています。
 
(3)施設の公的責任と役割・機能が著しく低下
 公の施設には、その公的責任と役割を踏まえて、公平性・継続性・安定性・専門性が求められるものです。
 しかし、安上がり本位の公募による事業者決定、関連法人への支出金削減・廃止、指定期間設定などを受けて、継続性・安定性・専門性が崩壊しています。
 また、営利法人の参入と「委任」制度に伴って、利潤確保を目的に利用料金制等を活用した事業に対する「市場化」の持ち込みや、参入事業者の経営破たんや撤退によって、公平性・継続性も破壊されるなど、施設の公的責任・役割と機能が喪失している状況です。

(4)自治体が貧困をつくりだす
 関連法人における「自治体準拠」労働条件の崩壊にとどまらず、徹底したコスト削減を目的とした指定管理者制度活用によって、低賃金・不安定雇用労働者の拡大や解雇をはじめとした雇用問題が生じるなど、自治体自らが「貧困」をつくりだす事態となっています。

5 反撃・到達点
 指定管理者制度を活用した直営施設の民営化反対闘争では、保育園などを中心とした住民との共同闘争が前進し、文京区における保育園民営化を具体的に阻止する到達点が生まれるとともに、闘いの中で、民営化そのものを阻止できなくとも営利法人の排除や公契約条例実現に準じた到達点を得るなど多くの前進を勝ちとっています。

(1)労組確立で関連法人における労働条件抜本改悪を阻止
 少なくない都内関連法人に東京公務公共一般労組が確立されており、これらの職場においては、当局からの過酷な賃金引下げ提案を具体的に阻止し、賃金本体部分は従前制度を維持しています。
 指定管理事業者における労働組合への組織化の重要性を顕著に示すものです。

(2)公契約面での前進
 保育園の民営化問題では、保育の質を確保する上で、職員集団のあり方が極めて重要であることを当局に認めさせ、委託事業者の職員定数や職員の経験年数構成、雇用形態のあり方について具体的に協定書・仕様書などに明記させるなど公契約面での具体的な前進を実現しています。
 また、保育において営利確保を優先させることの弊害を認めさせる中で、公募対象事業者から営利法人を排除するなどの到達点も確保しています。
 住民サービスを維持するうえで、執行体制のあり方は極めて重要な要素であり、すべての公の施設に共通するものです。その具体的な水準を指定管理者指定における条件とさせていくことが求められます。

(3)制度上の問題点を踏まえた措置
 目黒区では、指定管理者制度導入を受けて、「指定管理者制度活用の基本方針」が策定され、指定期間について、「維持管理が中心の施設は3年程度」「人的サービスや事業企画中心の施設は5年程度」と定めていました。
 目黒区における保育園民営化反対闘争を通じて短い指定期間が争点となり、この闘いを通じて、「指定管理者制度活用の基本方針」における指定期間が「原則5年とするが、利用者との関係で安定したサービスの提供が必要な施設は、10年までの範囲で適切な期間を設定する。」と改正させています。
 また、一部の区において図書館を指定管理者に移行させる動きがある中で、墨田区においては、「墨田区立図書館の在り方について」の中で、区立図書館としての蔵書の公平性・公正性や利用者の調査研究に資する資料の所蔵確保などの具体的根拠を示して指定管理者制度としないことを明らかにしています。

6 課題と対応の方向
(1) 実態把握と検証
 関連法人におけるリストラの実態、指定管理事業者運営に伴う住民サービスの具体的な低下内容など、実態を把握し、検証を行うことがきわめて重要です。
 そのために、現場労働者・利用者との懇談などを進めていきます。

(2) 新たな指定管理者制度導入を許さない
 指定管理者制度への移行は、基本的な問題点で指摘しているように、構造的に継続性・安定性・専門性・公平性を破壊し、施設の公的責任・役割・機能を喪失させるものに他なりません。
 この点を踏まえて、当該施設における住民サービスの具体的な低下を、広く庁内外に明らかにして、利用者・住民との共同の闘いを構築して、新たな指定管理者制度導入を許さない闘いを進めることを基本とします。

(3) 自治体基本方針策定・改定に対する対応の重視
 各自治体では、指定管理者制度導入時に指定管理者制度運用に関わる基本方針を策定しています。多くの施設が「指定期限」を迎えるもとで、方針改定と方針内容の具体的な改善を求めて取り組みます。
 同時に、指定管理者制度の構造的な問題点となっている地方自治法第244条の2の第5項「指定期間」の削除など対政府要求も確立して必要な対応を進めます。

(4) 関連法人で生じている大規模なリストラ問題への対応
@ 関連法人においては、法人当局は事実上の権限を有しておらず、設置責任や財政支出規模の決定権を有する自治体当局にこそ実質的な経営責任があります。したがって、関連法人労組による当局交渉のみでは問題の解決に至らないことを踏まえて、当該労組と職員労働組合との共同闘争が重要です。
A 指定期間設定と「公募」によって、当該施設労働者の雇用保障をめぐる闘いは重要です。雇用責任に関わる協定化を実現し、仮に指定管理者の変更が生じても雇用が継続されることを担保する必要があります。この問題では、多摩都税の闘いの到達点に加え、自治労連の政府交渉において総務省から、「雇用の継続保証や斡旋は制度上は禁止されていない。自治体が主体的に適切に判断していただきたい。総合的な判断をすればよい。」と回答も引き出しており、これらを活用して闘います。

(5) 「公募」によらず再指定を実現する闘い
 指定期間満了を控える中で、特に関連法人が「公募」によることなく再指定を受ける取り組みが重要です。
 この問題では、自治労連本部の総務省交渉の中で、「地域の実情や施設の特殊性により最適な者が他にいないことが客観的に明らかな場合は、公募によらない手続きもありうる。」との確認を行っており、この点も踏まえて、対応を強化します。
 
(6) 協定書内容への住民サービス維持・改善へ向けた条件整備規定
 保育園民営化反対闘争の中で風穴を開けてきた公契約的な視点での指定管理協定書改善は極めて重要な課題です。
 また、文京区の児童館においても、公設公営の水準を指定要件とする中で、応募法人が現れずに直営が維持されているなどの到達点も築いています。
 住民サービス水準を維持していく上で、継続性・安定性・専門性が確保できる執行体制は不可欠であり、これらは受託事業従事労働者の賃金・雇用形態・人員数などの労働諸条件に他なりません。
 また、公正性の確保を行ううえで、当該法人が営利を目的とするか否かは決定的です。
 これらを指定要件として確立することをめざして、協定書改善に関わる具体的な要求を確立し、その実現へ向けた取り組みを強化します。
 
(7) 実効性のある評価システムの確立
 東京都当局は、昨年9月に「平成18年度東京都指定管理者管理運営状況評価結果について」を発表しています。
 制度導入後初の評価となるものであり、第三者の視点を含めた評価としていますが、評価実施施設201施設のうち、実に200施設が「概ね適切な状況」と評価され、「概ね適切に管理運営が行われていることが確認できた」と結論付けていますが、到底納得のできないものです。
 一方、千代田区では、指定管理者施設の経営や労働環境について専門家によるチェックを実施しており、6施設を対象に行った労働環境に関するモニタリングによって、偽装請負の派遣切り替え、時間外手当追加支給措置などを講じており、今後もすべての指定管理者施設に対して労働環境モニタリング等を実施するとしています。
 千代田区の運用も踏まえて、実効性のある評価システムの確立を当局に要求し、最低限の施設運営水準を確保していくことも求められています。

(8) 組織拡大強化との結合
 従事労働者の労働諸条件の確保、住民サービスの維持・改善を具体的に図るために、関連法人はもとより、新たに民間事業者へ施設運営が委任されている場合についても、当該職場における労働組合の確立・組織拡大強化が強く求められます。
 実態把握・検証の取り組みにおける施設・労働者訪問・懇談活動などの具体的な取り組みを組織拡大と結合して取り組みます。
 なお、指定管理者の労働者向けに作成されている自治労連リーフの活用など、具体的な対応については別途、方針化を行います。

7 指定管理者制度との正面からの対決を
 指定管理者制度は、政府・財界が推し進める公的責任の放棄と自治体業務の市場化を目的とした自治体構造改革路線に基づく制度に他ならず、公の施設が有する継続性・安定性・専門性・公平性を破壊し、施設の公的責任・役割・機能を喪失させるものです。
 制度そのものに正面から対決し、個々の具体的な問題点を明らかにして、庁内外世論結集・住民共同をつくりだして攻勢的な闘いを進めていきましょう。
以上