「指定管理者制度」についての第2次取り組み方針
2004年3月17日 
東京自治労連中央執行委員会 

  はじめに……地方自治法244条の2が改正されて約9ヶ月が経過したが、この悪法が大嵐のように全国の自治体に吹き荒れている。NPMに基づく自治体リストラ手法の一つである「指定管理者制度」により、「公の施設」の民間開放が急速に進められようとしている。全国の自治体労働組合にとってこの問題は、「公務職場がなくなる」との危機感さえはらむものである。
 また、雇用と労働条件、労働者の組織化の面でも、公務公共サービスの担い手が大きく変化する中で、これを組織する自治体労働組合のあり方そのものを大きく変える可能性もあり、労働組合の総力を挙げた取り組みを行う必要性がある。
 東京自治労連は昨年11月12日、「当面の取り組み方針」を決定し、制度の概要と問題点、取り組みの基本方針などを明らかにしたが、約4ヶ月間で事態が大きく進展している。そこで、この間の動向について明らかにするとともに、さらに具体的な取り組み方針を以下に提起するものである。

  1.都内自治体の動向について

   (1) 東京都……第2期石原都政は昨年11月、「第2次都庁改革アクションプラン」を発表し、都政リストラを強行するための組織の再編や都政運営の手法を示した。それらにはNPMの考え方が強く表れていることは言うまでもない。
 そして、その一つである「指定管理者制度」については、「『平成15年度』中に『指針』を示す」として、現在該当する施設の洗い出しと「障害」となる個別法などについて調査を行うとともに、関係各局の担当課長会議を開催し、調整を行っていると言われる。
 東京都には現在40を超える「東京都監理団体」(一般的に「自治体出資法人」と言われる団体のこと)があるが、旧「管理委託制度」の下で、「公の施設」を管理してきた監理団体では、3年以内に指定管理者制度に移行するか、直営に戻すかが迫られるため、その期限である「平成18年」に向けて大変な危機感を持って、新制度下でも管理を「代行」できるよう、企業イズムの徹底を図っている。
 また、直営で管理を行っている施設についても、これを機に「指定管理者制度」に移行することを検討しているものもあると言われ、「指針」の発表後、急速に問題が顕在化することは必至である。
 さらに、新設施設については、「平成18年までに」という期限は無縁であるため、
 江東区南砂において「平成17年度」に開業する「東部療育センター」(重度心身障害児施設)について「指定管理者制度」を導入することを、2003年12月都議会において条例化を行った。条例では民間業者に「代行」させることはしないとしており、「社会福祉法人」を公募対象とし、これまでこれらの施設と強く関わってきた「社会福祉法人全国重症心身障害児(者)を守る会」(略称「守る会」)に代行させるとする条例を第1回定例会に提案している。この事例は、指定管理者制度の導入に伴って、民間企業の参入を促進するという政府・財界の意向に対して公共性を確保するという意味で(民間企業参入のメリットがない分野という側面はあるものの)、参考となるものである。
   (2) 23区の動向とその特徴……庁内紙「都政新報」(2003年12月12日付)は「すでに11区が条例提出」と報道している。
 足立区では、来年度オープンする文化芸術劇場に「指定管理制度」を導入することを昨年の12月議会で決定した。全国自治体でもNPMのパイオニアとして、「包括予算制度」を導入したことを竹中大臣が視察したことで有名となったが、「指定管理者制度」導入でも、都内自治体のトップを切ることとなった。
 江東区では、三つの保育園に「指定管理者制度」を導入することを12月議会で決定したが、このうちの二つの保育園ではこれまで委託してきた社会福祉法人に、新制度の下でも引き続き「代行」を求めることを決めたものであり、公募を行うことなく、これらの法人に決定したことは、公的責任を発揮するという点では評価できると考えられる。また、新設の一園についても社会福祉法人に「代行」させることを決めている。
   (3) 多摩の動向……現時点では「指定管理者制度」の導入提案は行われていないが、東大和市で4月より「指定管理者制度担当主査」設置するなど動きは急で、今後具体化されることは必至である。
 
 2.この間の私たちの取り組み

   (1) 東京自治労連は昨年10月の定期大会後、直ちに「リストラ闘争本部」を設置するとともに、その下に「地方独立行政法人など対策委員会」を設け、この対策委員会で「指定管理者制度」問題について取り組んできた。当時はほとんど情報もなく、本問題についての単組・支部の理解、問題意識がきわめて低かったため、11月初旬に2回にわたり資料集を発行した。
 さらに東京自治労連としての「当面の取り組み方針」を11月12日に決定し、取り組みの具体化を決定した。
 その前後から、各単組・支部・各級機関で旺盛な学習会が展開され始め、1月、2月と学習会の開催がさらに強まっている。
 2月7日には福祉や医療、社会保障関係の部会を中心とした「リストラ集会」を開催し、ここでもあらためて「指定管理者制度」について学ぶとともに交流を行ったところである。
 また、共同する東京自治問題研究所が、ブックレット「指定管理者制度」を発行したが、タイムリーな出版であったため、わずか2ヶ月で4000部を普及した。
   (2) 「指定管理者制度」に関する闘いの事例……「指定管理者制度」を巡る具体的な闘いの事例はまだ少ないが、ここでは二つの例を紹介する。
    @ 都庁職本庁支部の取り組み……先述したように、東京都庁では監理団体における指定管理者制度問題が重大課題となっており、自治労連加盟ではないが、都庁職本庁支部の組合員が働いている歴史文化財団でも、「指定管理者制度」問題がもっと緊急かつ重要な課題となっているため、支部はいち早く財団当局との交渉を開始し、その模様を逐次「機関紙あらぐさ」で報道してきた。
 当局の考えは、やはり新制度の下でも「代行」できるよう財団の「体質改善」を図ろうとするものであり、その一つとして都からの派遣職員を引き上げようとしている。
 これに対して、本庁支部は「公的責任の発揮」を当局に求め、現在粘り強く交渉を続けている。
    A 墨田区職労の取り組み……墨田区では、あおやぎ保育園と中川児童館を指定管理者で行うことを昨年12月議会で決定した。二つの施設とも、「厚生館」という保育園や母子支援施設を経営している社会福祉法人であるが、この団体は墨田区内ではなじみのある団体で、区当局が公的責任を発揮するという意味では一定の評価が出来る。
 墨田区職労は区当局との交渉の中で、非常勤・パート職員の雇用問題について触れ、「非常勤職員の雇用の一方的な打ち切りをしないこと」と要求し、当局から「十分承知している」との回答を引き出すなど、当局との具体的な協議をすすめている。
    B 公務公共一般の取り組み……中野区が32ある保育園のうち、宮園、宮ノ台の2園を「指定管理者制度」により民間企業に投げ出す方針を10月初旬に自治労中野区職労に対して提案、11月に正式発表を行った。
 これに対して保育園に働く非常勤・パート職員で組織する公務公共一般労組が立ち上がり取り組みを開始した。その努力により、提案内容を全く知らされていなかった保護者及び地域住民からも「あまりに拙速である」との声が上がり、闘いは大きく高揚した。
 残念ながら条例案は12月議会で通過したが、反対対運動の主体である「連絡会」はさらに大きな取り組みを展開し、2月12日には中野ゼロホールで700名の参加で大集会を成功させた。2月には業者が指定されたが、一園については民間事業者に代行させたものの、他の一園については社会福祉法人とした。これは運動の反映であり、住民と結びついた運動の貴重な到達点として確信を持つ必要がある。

  3.具体的な取り組み方針

   (1) 当局に協議を求める……現在当局は、指定管理者制度を導入するための検討を全面的に行っている。検討状況を労働組合に開示し、事前協議を保障すべきである。新しい法の下で、公の施設の管理をどのようにするのか、根拠法規などをを明らかにさせる中で、直営の堅持を求めるとともに、管理委託制度に基づき委託されている施設についても、自治体の公的責任をより発揮することを求めていく必要がある。
 また、協議の中で次のことも追求する必要がある。
   (2) 条例などについて……やむを得ず指定管理者制度に基づく場合でも、より民主的な条例づくりに向けて取り組む必要があり、当局との協議に加え、議会への働きかけも重要である。
    @ 公的責任を保障するためには、公社などの公的セクターに指定させることも有意義である。条例にそのことを明記することも可能であるし、「複数の公募」を原則としてはいるが、法に定めているものではなく、実績を尊重して、これまでの管理委託者を引き続き指定することももちろんかまわない。
    A また、複数公募する場合でも、条例の中で対象を限定することにより、民間企業の参入を阻止することもできる。
    B 指定に至る経過についても、民主的な制度を担保することを条例に明記することも可能である。選定委員会を設置し、恣意的な指定にならないよう、市民参加、情報の公開などを追求することが重要である。
    C 法では兼業禁止規定がなく、首長や議員などの関与、癒着の温床となる危険性が懸念されるが、条例の中に兼業禁止規定を盛り込むことにより首長や議員などの関与を否定することも可能である。
    D さらに、当局の条例案をチェックする際のポイントは以下の通りである。
・実績や専門性、サービスの質、継続性、安定性などを明確に位置づけること。
・職員の身分、賃金、労働条件などが安定的に確保されること。
     ・指定管理者としてふさわしいものがいない場合は直営で行えるような規定を設けさせること。
     ・施設運営への利用者、住民参加の仕組み、管理運営のチェックシステムを設定させること。
     ・既存の個人情報保護条例の改正、協定への明確化を図ること。
・使用料の範囲、算定方法、上限の適正化、減免規定の設定など。
   (3) 公的セクター職員の雇用・労働条件を守る闘いと組織化について
 指定管理者制度の導入に伴い、自治体労働者の雇用や労働条件は重大な影響を被ることとなる。以下、事例別に見てみると、
    @ 自治体出資法人(東京都では監理団体、23区では公益法人など)に代行させる場合は、自治体からの派遣職員は引き上げ、固有職員とりわけ非常勤・パート労働者等の不安定雇用労働者の増大が図られる。ここでの労働条件と雇用を守る闘いが極めて重要となる。
    A 民間企業に代行させる場合は、それまで直営であったならば、自治体の正規職員の引き上げが当然行われる。公的セクターに委託していたならば、正規職員の引き上げ、固有職員の雇い止めが生じる。もちろん、取り組みにより、「山梨県『丘の公園』の事例のように代行する民間企業に雇用を要求することも可能である。
    以上のように、指定管理者制度の下では、公的セクターにおける取り組みが極めて重要となる。取り組みの基本は、「自治労連『指定管理者制度と緊急にどう闘うか』(改定版)」(15ページ)によるが、労働組合がない場合は労働組合を組織し、学習を足がかりにしながら、当局との交渉など取り組みを強化することとなる。
 労働組合がある場合は、当局との交渉、未組織労働者の組織化などの取り組みにより、雇用と労働条件を守る闘いを展開することが肝要である。

  4.まとめ

 いずれの場合も、指定管理者制度に対する取り組みでもっとも大切なことは、その施設を利用する住民の皆さんにこの制度の本質を宣伝し、公務と公共性を確保することが大事であるということを理解していただくことである。
 そのために学習の強化と住民との共同をあらゆる機会を活用して展開し、政府・財界ぐるみの民間開放の企みを打ち砕き、住民本位の公共サービスの確立と公務サービス労働者の雇用と労働条件を守る壮大な闘いに立ち上がろうではないか。