保育リストラ闘争方針
新たな段階に入った公立保育園の営利化・保育の市場化とどう闘うか
2004年6月2日
東京自治労連中央執行委員会
はじめに
児童福祉法は、「国及び地方公共団体は…児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う(2条)」「市町村は、保護者の労働又は疾病その他…児童の保育に欠けるところがある場合…それらの児童を保育所において保育しなければならない。(24条)」と国や自治体の責任を定めています。
しかし、「民で出来ることは民で」を進める小泉構造改革と、東京都の「事業の実施主体からコーディネートへ」と事業から撤退し、福祉分野の徹底した「市場化」を推進する施策、各区市町村での「財政難」や「NPM手法」に基づく自治体リストラと、三位一体改革による自治体財源の削減により、公立保育園は、激しい「営利化・企業化」の嵐に晒されています。
一方、長引く不況とリストラ、不安的雇用・低賃金労働者の増大で、保育園待機児童は増え続けています。また、地域社会の崩壊で子育てに不安をもつ親子の増大は、「子どもを健やかに育てたい。」という国民要求となり、次世代育成支援が政治の課題となるような時代となっています。
このような時代の要請を追い風に、自治体の変質と一体になって進められる公立保育園の営利化攻撃にストップをかけ、「権利としての保育」を守り拡充する取り組みを、本部・単組一体になって進めます。
1.情勢の特徴
1)国
(1) 三位一体改革と公立保育所運営費の一般財源化
「三位一体改革」を国は、国から地方への権限の委譲とそれに伴う財源の委譲を国庫補助金の整理とともに進めると説明しました。しかし、その実態は、地方交付税の2.9兆円の削減と経過措置としての「所得譲与税の創設」で、自治体財源を削減したに過ぎません。
この動きの中で、突然浮上したのが「公立保育所運営費の一般財源化」です。「公立保育所運営費の一般財源化」は、国のナショナルミニマムを放棄し、保育の公的保障の責任を自治体に押しつける重大な問題です。
(2) 指定管理者制度・地方独立行政法人法、一般職への任期付き採用
指定管理者制度は、「公の施設の管理を民間企業を含む指定管理者に権限の委任が行える。」とした制度です。指定管理者は、法に定めのない利用料金の設定や利用許可が可能となり、一層の企業への委託が安易に行えるようになります。
地方独立行政法人法は、国会で総務大臣は、「『民間でできるものは民間で』が基本的立場であるが、いろいろ困難もあるため、その過程として導入するもの」と答弁しています。抵抗の強い企業への委託を容易にすることも目的の一つです。
一般職への任期付き採用は、自治体職員の勤務形態の多様化・不安定化をすすめるもので、不安定な職員に自治体の本来の業務を担わせ、正規職員を一層削減するものです。保育園では、育休代替や民営化までの「つなぎ」などへの導入が懸念されます。
これらの新たなツールは、より容易に自治体リストラを進め、企業の利益を確保しやすくすることが目的です。
(3) 幼保一元化・給食室の必置規制の撤廃など
規制改革特区で進めてきた「幼保一元化」や「給食室の必置規制の撤廃」は、企業立保育所の設置をより安易にすることが目的です。
幼保一元化は、保育所の「保育に欠ける」要件を曖昧にし、児童福祉施設から利用施設に変えるものです。その設置基準も低い幼稚園に合わせた「幼保一体施設」を検討しています。また、幼稚園教諭免許と保育士資格の統一も検討されています。
2)次世代育成支援対策
03年7月「次世代育成支援対策推進法」が制定され、05年の4月までに各自治体は、次世代育成支援のための地域行動計画の作成が義務付けられました。この次世代育成支援対策推進法のねらいは、「労働力の担い手が少なくなり、優秀な安い労働力が確保できなくなれば、日本の将来の危機」として女性労働力の確保、そのための保育施策の拡充(待機児童の解消、長時間保育の拡充など)が中心で、子どもの発達する権利や保護者が子育てをする権利を守る視点はありません。
さらに、現在進行している具体的な「次世代育成対策」は、保育の営利化・市場化を前提に、必要な国や自治体の予算は支出せず、父母の負担で、なおかつ保育施策を利潤の対象にしようとする資本の動きを具体化するものになっています。
3)東京都
(1) 民間社会福祉施設サービス推進費補助の改悪
公立と民間のサービスに差があってはならないと、民間で働き続けられるようにと始まった人件費加算を「これまでの画一的な補助方式から努力が報われる補助方式に再構築する」とし、大幅に削減したものです。
民間保育所では、この「改悪」で、職員の大幅な賃金削減、職員のパート化、パート職員の首切り、正規職員の労働条件の改悪などが起こっています。このことは、「コスト比較」差をさらに拡大させ、認可保育所の中で格差を増大させるものです。さらに、社会福祉法人をより「企業化」させるための都の戦略です。
(2) 都加算補助の見直し
すでに、「東京都児童福祉審議会『最終のまとめ』に対する見解」を明らかにしていますが、石原都政のすすめる「都加算見直し」にお墨付きを与えるものです。
そもそも都加算補助は、低すぎる国の児童福祉施設最低基準を補い、東京の認可保育所の保育内容を担保するもので、0歳児保育、時間延長保育、障害児保育など対策ごとにきめ細かく内容を規定しています。しかし、「まとめ」では、現行の都加算補助を廃止し、全児童対策として、保育サービスの拡充と子育て支援全般の充実に活用できる包括的なものにと求めています。
東京都は、この都加算補助の運用を中心に、東京の子どもと保護者に広域自治体として保育の実施責任を明確にしてきました。これを曖昧にすることは、東京の保育水準と東京都の実施責任を後退させるだけでなく、国並みに引き下げ、さらなる営利化・市場化を誘導するものです。
(3) 認証保育所
東京都は、国に対し、「認証保育所」を保育所改革の先導役として、認可保育所の一類型、子育て支援事業、就学前児童の総合施設などあらゆる方法で「認知」を求めています。
このことは、「『保育に欠ける』要件の見直しと直接契約制度の導入」を国に対して求めることと相まって、保育所を誰もが自由に利用できる利用施設に変え、保育所が自由に顧客を選び、自由に保育料を取れる「商品としての保育」を実現すること、即ち保育の営利化・市場化の実現を東京から発信しています。
4)区市町村
公立保育園の民間委託・民営化が、区市町村では急テンポで拡大しています。その理由として「財政難」を口実にしたり、公立保育園では、新たな事業(0歳児保育やさらなる時間延長、休日保育、病後児保育など)に応えられないからとしています。しかし、その本質は、自治体のあり方を変質させることです。その内容は、NPMや「新しい公共経営」とも呼ばれ、住民自治や民主性を否定し、自治体の運営を企業と同様に効率最優先の経営に変えていくものです。
NPMは、事業部制や予算の総額割当制やトップダウンによる重点配分、バランスシートや行政コスト計算書・包括外部監査、行政評価・第三者評価や住民(利用者)満足度調査、PFIやNPOとの協働などを掲げます。
公立保育園に対しては、コストを問題にし、経験の蓄積やそれによる「保育の質」より、効率化を求め、結果として営利化・市場化を進めることになります。
2.闘いの基本
1)情勢は激しく動いています。的確で本質をつかむ学習を、本部・単組・分会(部会)、職場から旺盛に繰り広げます。
2)国・東京都・市区町村の動き知らせる宣伝を組織内・地域で広げます。
3)保護者や民間保育所経営者・保育労働者をはじめ、地域住民との対話を広げ、地域から公立保育園を守る世論や組織を作り上げます。
4)都議会議員請願を始め、区市町村議会や東京都、自治体当局への要請行動をさまざまに取り組みます。
5)地域の実態を分析した「実態調査」や、それに基づく「政策」や「地域計画」づくりを進めます。また、次世代育成対策支援法に基づく地域行動計画や市町村保育計画に、反映させる行動を起こします。
6)職場に広がる非常勤・臨時・派遣・委託労働者など保育労働者の労働条件改善と権利を守るため、組織化します。
7)本部・単組を上げての取り組みとなるよう体制を整えます。
3.具体的な取り組み
1)学習
(1) 自治労連・全国福祉保育労共同パンフ「保育所が根こそぎ変えられる」を使った国の動き、各単組や保育部会が準備する「公立保育園の存在が『子どもの最善の利益』を守る(仮)」を活用し、全組合員を対象に行います。
(2) 組合員の学習を基礎に、各単組として保護者・住民との懇談や学習会などを行います。
(3) 公的保育・福祉を守る東京実行委員会など都・地域の団体との共同学習を広げます。
(4) 国・東京都の動きなど講師養成講座や学習会を適宜開催します。
2)宣伝
(1) 自治労連を通して国や国会の動きを把握し、東京自治労連として、東京都、区長会・市長会・町村会への情報収集を的確に行い、宣伝に役立つようタイムリーに、単組・分会(部会)、職場へ分かりやすく伝えます。
(2) 公的保育・福祉を守る東京実行委員会に結集し、単組課題と結んだ宣伝・署名活動を、創意工夫をしながら全都で取り組みます。
3)要請行動
(1) 厚生労働省や国会議員への要請をはじめ、自治労連の行動に積極的に取り組みます。
(2) 区市町村や市長会・区長会をはじめ、議会も含め自治体から声を上げるよう要請します。
(3) 東京都への要請行動を取り組みます。
(4) 都議会議員や区議会議員への懇談・要請を行います。
4)共同行動の前進
(1) 「公的保育・福祉を守る東京実行委員会」の取り組みを強化し、活動の先頭に立ちます。
(2) 自治労連の提起する「全保育所訪問」を単組の取り組みと位置づけ、単組全体で進めます。
(3) 東京自治労連として、東京私立保育園連盟・東京民間保育所経営者懇話会など経営者団体や、東京保問協など保育関係団体と懇談・共同行動を呼びかけます。地域でも、保育関係団体をはじめ様々な団体との懇談・共同を広げます。
(4) 第5回東京自治研究集会を軸に、保育政策や子どもを巡る状況について広範な団体と共通認識を育てます。
(5) 地域実態調査結果や保育政策を持って、シンポジウムや語る会などを呼びかけ、共同の政策作りに取り組みます。
5)次世代育成支援対策への対応
(1) 従来進めてきた方針の具体化をP.Tとともに早急に進めます。
(2) 保育政策P.Tが準備している「東京の保育政策」(第1次案)をもとに懇談を進めます。
(3) 区市町村での地域行動計画や事業主行動計画の進捗状況を把握するとともに、方針化を計ります。
6)組織強化・拡大
(1) 職場を基礎として取り組みを通じて、職場組合員の団結を強めます。
(2) 非常勤職員など保育園で働くすべての労働者に攻撃の本質を知らせ、ともに取り組む中で組織拡大を図ります。当面、保育職場アンケートの結果を基に具体化を図ります。
(3) 東京自治労連として本部内に闘争本部を設置する方向で、取り組みを強めます。
(4) 部会や単組との交流を適宜開催します。
4.主な日程
東京自治労連
単組
署名など
公的保育・福祉を守る実行委等
6月
全保育所訪問第1回目
対都要請行動
7月
16
東京自治研集会第2回実行委員会
24
第5回東京自治労連組織集会
8月
25
公的保育・福祉を守る実行委総会
9月
全保育所訪問第2回目
第3回東京自治労連労働安全衛生
活動交流集会
10月
3
東京自治研・プレ企画1
23
東京自治労連第16回定期大会
11月
3
保育大行動
中旬
東京自治研・保育分科会
第5回東京自治研集会・全体会
12月
おわりに
「国際貢献」の名の下で日本を「戦争をする国」へ変質させる動きは、自治体を国の下請け中心にし、財源なき事業の押しつけと競争至上主義による業務の市場化を推し進めています。同時に浪費型公共事業に対する国民的な批判を避けながら公的資金=税金の投入先とするために、「規制緩和」の名により、新たな民間企業の儲けの場として医療・公衆衛生・福祉・教育分野がねらわれています。これは、財界の意向に沿う、国の施策です。同時に石原都政は、国を上回る速度と規模で、東京発の「改革」を発信しています。東京を企業活動中心の多国籍企業の拠点とする石原都政が進める保育の市場化を許さず、広範な都民とともに「東京の保育」を守り発展させていきます。
以上