第3回自治体リストラ反対交流集会基調報告
2004年5月26日
  東京自治労連中央執行委員会

はじめに
 住民の最善の利益を職場の要求と住民の要求とを結合させて実現していくことが私たち自治体労働組合の役割です。職場と住民に犠牲を押し付ける自治体リストラに対する闘いは自治体労働組合運動の重要な課題であり、自治労連の意義と存在感を明らかにする闘いです。
 東京都の「都民のくらしむき年報」によると1993年と2002年とを比較すると生計支出は93年の380,352円から335,066円と約15ポイント減少しています。特に食料および履物、教育、教養・娯楽という労働力の再生産に欠かせない項目が減少要素となっています。これに対して住居、光熱・水道、保健・医療、交通・通信など社会的に支える部分の支出は93年の支出を上回っています。工業統計調査によると事業所数は99年の30,773事業所から02年の23,051事業所に減少し、付加価値額も約7兆7千億円から4兆7千億円に3兆円も減少しています。生活保護世帯は95,642世帯から120,873世帯に26,3%増加しています。これに対して高齢者医療費助成は2000年の約997億円から766億円に約230億円減少しています。
 都民生活が疲弊している中で、生活を支える自治体の役割の後退がさらに都民生活を低迷させている実態があります。
自治体リストラは1982年9月の行革大綱を実践するため誕生した中曽根内閣によって85年地方行革大綱の閣議決定によって「緊縮財政型」としてはじめられました。96年1月に発足した橋本内閣は90年にアメリカ政府に約束した公共事業450兆円投入を進めるための6大改革を進め、97年に自治体リストラ新指針を通知し、自治体の役割変更を迫りました。さらに民間による市場拡大を進める小泉構造改革は、自治体リストラを進める具体的な手法をほとんどそろえ「三位一体改革」と称して自治体への財源削減を背景に自治体リストラを迫っています。なお、小泉内閣の残る制度改悪は平和条項や公務員の「全体の奉仕者」、民間団体への公的資金提供禁止条項などの憲法条項となっています。
しかも今年改訂された特別区の職員ハンドブックは、これまでの「行政の仕組み」などで始まる第1章を「自治体の経営」とNPMの民間経営の手法が当然であるかのような導入になっています。自治体には住民の税金で住民間の実質的な公平を確保するために運営する役割があります。そのために地方自治法・地方公務員法は民主的で能率的な運営を求めているのです。利益を追求する企業の効率性だけの理論では自治体の役割を発揮できません。
今、住民・職員犠牲の自治体リストラは新しい段階に入っています。ある首長は「たとえ経費が高くついても民間に委託する」と述べています。自治体リストラが「緊縮財政型」から「自治体の役割放棄」と質的に変化している現われです。自治体に対して小泉内閣が準備した指定管理者制度・任期付き公務員などリストラ手法や道具(ツール)を実行させない闘いが重要になってきています。
小泉構造改革によって国民生活との矛盾が大きくなっている現在、住民福祉の向上を図る自治体労働組合や自治体労働者の役割は益々、重要となっていますし、住民からの期待も高まっています。
 今後の東京全体を視野に入れた闘いと各単組の闘いを結合させて展開するために、これまでの取り組みを交流し、到達点と課題を明らかにするために本集会を開催します。

1 各自治体のリストラの現状
 (1) 都の自治体リストラの現状
   財政再建推進プランや第二次都庁改革アクションプランによって東京都の役割を事業の実施主体からコーディネートに変質させようとしています。大規模開発と治安に重点をおいた都政を推進しようとし、都民生活に密着する事業からの撤退、局の統廃合、意識改革を求めています。
   また、民間企業の福祉・医療など各分野への進出を積極的に図るための施策を推進しています。
   しかも、これらの事項は管理運営事項であるとして多くの局で労使交渉を困難にしています。

 (2) 市の自治体リストラの現状

   各市でも財政危機を口実に自治体の市場化を進めようとしています。特に小泉内閣は構造改革の三位一体改革によって地方交付税・補助金削減により自治体にリストラを一層、強いようとしています。多摩市は財政白書を発表し、市当局が高水準にあると評価している多摩市の行政水準を引き下げる計画を発表しています。

 (3) 区の自治体リストラの現状
   ほとんどの区で「経営企画部」や「経営推進室」など経営という名称を用いた部が設置されています。文京区では「新しい行政経営の手法によって進める」と自治体を経営対象とし、NPMの手法を用いることを明確に表明しています。すべての区で保育所民営化を実施又は検討していますし、公の施設の指定管理者制度導入を具体的に進めている自治体もあります。

 (4) 外郭団体・臨時・非常勤職員への影響

   各自治体のリストラでは、図書館・施設給食・学校・保育園などで働く臨時・非常勤職員の解雇や雇い止めが発生しています。また、目黒区のように非常勤職員を採用せず、派遣職員等へ切り替えていくことを検討している区もあります。
   外郭団体は自治体に準拠していた労働条件を独自に切り下げています。さらに公の施設の管理を行っている団体は実質的に06年4月までに指定管理者をめざすか解散するかの選択を迫られており、労働条件引き下げか雇用かの選択を職場に強要しようとしている団体もあります。

2 自治体リストラの背景
1) 日本型新自由主義による自治体の変質
日本における新自由主義は小さくて強い政府を実現しようと進められています。民間企業でできるものは民間企業の競争にまかせ小さい政府を実現し、国は国際貢献という名の下で軍事中心の国家体制を確立しようとしているのです。その自治体への現われは競争至上主義による自治体業務の市場化です。住民生活を守るべき自治体の役割は変えられ、弱肉強食の市場の押し付けと敗者に対するセーフティネットに限定されます。さらに、国家財政は軍事予算の確保に重点をおいて編成され、三位一体改革に見られる自治体に対する財源なき事業の押し付けとして現われます。財界も自治体にも道州制や自治体合併のように住民生活より大企業の利益優先を求める姿勢を強めています。自治体は従来の住民生活中心の運営から地方分権推進を隠れ蓑にしながら国の下請け中心の業務となる危険性があります。

2) 産業構造の変化による重点分野の変更
日本経済の構造は大企業の多国籍化、中小零細企業の切り捨てなどによって労働者のリストラ、大型合併などによって変化しています。この変化は雇用や土地利用計画に変化をもたらしています。国土再生法は東京圏と大阪圏および地方都市の市街地再開発に浪費的公共事業を重点的に行なおうとしています。政府は産業構造の変化による財界の要求に応え大都市中心に公的資金を投入することとしたのです。
さらに政府は浪費的公共事業に対する国民批判を避けるため公的資金の投入先を拡大し、浪費的公共事業から民間資本の参入を促進させるための条件整備と医療や福祉などへ参入する民間企業へ公的資金の投入先を転換しようとしています。03年12月の日本経団連の経営労働政策委員会報告では医療・公衆衛生・福祉・教育分野で公的規制の撤廃や自治体の土地や建物の利用を可能にするように求めています。さらに、公的資金の民間団体への支出を制限している憲法89条を改正し、福祉・教育分野で企業への公的資金の直接補助なども視野に入れて検討しています。このことは住民生活を守るべき自治体に対して事業の民間への委譲など市場化を求める強い圧力となっています。

3) 世代構造の変化を背景とした財界の利益確保
財界は少子高齢化によっても企業の利益を確保するためには労働者の賃金を引き下げるとともに国民負担を増やすことが重要と位置づけています。
賃金引き下げについて政府・財界は特に拡大が予想される分野において労働者の賃金引き下げを行なうことが企業の利益につながるとして、自治体に市場化を迫っています。例えば福祉や医療市場は将来的に拡大すると予測しています。「21世紀の産業経済政策の課題と展望」(2000.3.16 産業構造審議会)では高齢者福祉で見ると1995年の39兆円である市場は2025年には112兆円〜155兆円に拡大すると予測しています。この拡大する市場で営利活動を展開し、利益をあげるためには人件費率が阻害要因となっています。福祉分野は8割程度が人件費であり、公務職場が大半を占めているために賃金体系は公務員準拠となっています。公務比率を下げること=自治体リストラを進めることが労働者全体の低賃金化に合致するとしています。
次に国民負担については企業の社会保険における雇用主負担を下げるだけでなく税の所得格差是正機能を低下させようとしています。消費税率の引き上げを求めて繰り返し発言しています。また、保育料などを応能負担から応益負担に改悪し、国民の負担率を引き上げようとしています。厚生労働白書によると所得間格差は毎年拡大しています。本来、国や自治体には税や社会保障、直接・間接の給付によって所得間格差の是正を図る機能があります。

3 自治体リストラの手法;新しい自治体経営論(NPM)の手法
   2001年6月「今後の経済財政運営および経済社会の構造改革に関する基本方針」で行政部門への民間経営手法の導入も重要であるとして、自治体に対して企業と同様に効率性優先の経営を行なう新しい自治体経営を求めました。民営化・民間委譲・アウトソーシングを積極に進めるよう求めるとともに、次のような手法があり、各自治体で既に一部導入されています。
   NPMは自治体の企業化によって住民の階層化をもたらし、全体の奉仕者としての自治体労働者の役割放棄につながります。

(1) 事業部制・予算の総額配当制;重点配分型
事業部制は人員配置や予算執行を事業部長が行なうことによって事業部間に効率性を追求した競争を行なわせるものです。その結果、年度途中の異動や予算の効率的部門への集中配当など自治体の役割からではなく経済的利益の視点からだけの運営がなされます。
予算の総額配当制は予算を局や部に総額として割り当て、具体的予算化や査定は部単位で行なうもので、権限の委譲などとして行われています。しかし、実態は前年度比でマイナス配当とし、リストラを強いています。さらに都や複数の区で人員を削減すると一人あたり○○万円と計算して配当予算を増額する動きもあります。

(2) バランスシート・行政コスト計算書・包括的外部監査・複式簿記化
資本を持たず、税金を基本的な財源とする自治体財政は非営利を基本とし、民主的で能率的な運営を行なうために単年度予算主義によって歳出・歳入のバランスの確認、透明性の確保を行っています。企業会計で利益を導くためのバランスシートや複式簿記化は浪費的公共投資の事実を隠すだけでなく、効率性中心の行政運営をさらに進めることとなります。さらに、各項目の恣意的な設定(例えば全職員が退職した場合の退職金総額を負債の部に計上している)などによって実態を反映せず、公会計の透明性を阻害します。東京都では公会計制度の見直しを検討するとしています。

(3) 行政評価・第三者評価・住民満足度の数値による測定
行政評価は客観的・総合的に実施すべきです。しかし、現在、その手法は自治体業務に関して確立していません。現在、都および23区で実施されている行政評価は特定の事業を縮小・廃止するために結論先にありきで行われています。また、第3者評価や住民満足度調査は理論的には客観的な評価になり得ますが、全住民を対象とした全般的な評価は不可能であるとともに評価の基準が効率性を中心に恣意的に策定されているケースが多くなっています。さらに評価委託自体が特定の民間企業へ利潤をもたらすこととなっています。

(4) 「三位一体改革」など財源による自治体リストラの誘導
小泉内閣は04年度予算編成に際して「三位一体改革」として地方補助金・負担金を公立保育園に対する国庫負担金や介護保険の事務費用で1兆円、地方交付税を9千億円、それぞれ削減しました。財源移譲は具体的財源を示せず、所得譲与税として4千2百億円、地方財源とするに止まりました。各自治体、特に三多摩の市町村では04年度予算編成に大きな影響があり、予算編成ができないとの理由から更なる自治体リストラを進める動きが現われました。
また、東京都は市町村調整交付金の算定や都区財政調整における算定基準の見直しを通じて学校における現業職員の全面委託化など各自治体に対して自治体リストラの推進を求めています。
一般財源化は国が事業の実施責任から撤退することを意味します。また、国の責任財源保障機能や財政調整機能を放棄する不当なものです。また、各自治体において本来、一般財源であれば各自治体の判断で事業展開することとなるはずですが、国や都の「意向」と言って住民や職場に説明する口実となっています。

(5)  PFI
   本来、公務分野にノウハウや資金がない場合、民間企業の資本やノウハウで事業を推進することですが、実際は民間企業への丸投げし、公的資金を投入するために行われています。東京都では既に下水処理施設などで導入され、病院への導入が検討されています。民主制の確保、公的責任や事業費の補助額の適正化判断、事業・業務の安定性・継続性などで課題があります。

(6) 電子自治体化・電子競争入札
  自治体のIT化は情報公開や一般競争入札の拡大による公正性の確保、利便性のなどの効果はありますが、プライバシーの保護や住民管理を強化する手段となる危険性もあります。また、業務の電子化によって業務の基礎知識を各労働者が意識的に習得しないと住民の課題がマニュアルによる機械的・画一的処理となり具体的な解決につながらない危険性があります。 

(7) 住民・NPOとの協働・行政ボランティア
  埼玉県志木市では廉価な行政ボランティアによって市職員を600人から50人に削減しようとしています。群馬県太田市では図書館委託について「報酬については雇用契約でなくNPOの精神に基づき、図書館運営に生きがいをもって奉仕することにより低額の報酬を得ることに賛同する会員を会則に明記したことにより、会員の連携意識が強化され、併せて経費の削減が図られる。」として労働者性を否定し、「奉仕論」を展開しています。世田谷区では住民との共同という名で民間委託を検討しています。
そもそも住民は主権者であり住民参加の本来の意味は住民が意思決定に関与することです。しかし、現在の住民参加、協働は決定されたことを実施するだけが住民参加として位置づけられています。住民を意思決定過程ではなく事業執行にだけ参加させることは住民参加の本質に反します。さらに、行政ボランティアやNPO労働者は最低賃金を下回る賃金で働かされています。安価の労働や奉仕を前提としたNPOの活用は業務の継続性や安定性、専門性の確保の観点から不適切です。なお、ヨーロッパではNPOも事業所でありNPO労働者の労働条件は均等待遇となっています。

(8) マニフェスト・トップダウン
    マニフェストを掲げて当選首長によって自治体リストラが強権的になされています。マニフェストは公約であり実現することは重要ですが、実現にあたっては民主的に行われることが前提となります。議会を持つ首長制の自治体においては議会や労働組合との協議、住民を含む合意なし、職場での議論なしに進めることは民主主義の否定となります。トップダウンによる押し付けは職場の創意工夫を妨げます。いくつかの自治体で勤務時間外に門前で宣伝行動を行なうことを規制したり、集会参加者の氏名や所属団体を確認したりするなど憲法の基本的人権を踏みにじる事態や法令に違反する事態が発生しているのはトップダウンによる弊害と言えます。

(9) 意識改革・公務員制度
政府は公務員制度改革大綱による公務員制度改革関連法の提出を先送りしましたが、04年通常国会に地方公務員法と任期付き公務員法の「改正」案を提出しました。この改悪は広範に任期付き公務員の導入に道を開くものであり、公務労働職場にも労働者の流動性を進めるものです。この結果、自治体の継続性や安定性、公平性が担保できなくなる不当なものです。
なお、現在行われている脱法的臨時・非常勤職員の労働条件については改善がなく、不充分な内容となっています。
 公務員制度改革大綱に基づく制度改悪は自治体単位で進んでいます。東京都では人事考課による昇給延伸を04年4月から実施をしています。各自治体でも人事制度を改悪し、職場の中の上位下達を徹底し、管理を強化しようとしています。ある市においては「都表導入は公務員制度改革を視野に入れたもの」と発言しています。これは自治体労働者の職場での共同性や公平性を否定し、専門性を低下させることとなります。
 また、研修やプロジェクトチームを活用した意識改革も進められています。憲法原則や自治体の役割の基礎を軽視し、技術や実務だけの研修は多様に変化する住民の課題を機械的・一面的に判断し、住民課題の具体的解決を図れません。職員ハンドブックなど研修資料や講師などについても積極的に意見を表明する必要があります。

(10) 地方独立行政法人
公共上の見地から確実に実施させる必要のある事務事業のうち自治体が直接実施させる必要のないもの、民間に委ねては確実な実施ができない恐れのあるものを効率的効果的に実施させるため自治体が設立する法人であり、国会で総務大臣は「『民間でできるものは民間で』が基本的立場であるが、いろいろ困難もあるため、その過程として導入をするもの」と答弁しています。
具体的な対象業務はア 試験研究 イ 大学の設置管理 ウ 公営企業に相当する水道、自動車、ガス、病院などの事業の経営 エ 保育所・特別擁護老人ホームなど社会福祉事業の経営 オ その他の公共的な施設の設置・管理であり現段階では図書館・美術館・区民会館は対象としないとしていますが、5年後に見直しするとしています。
総務省は比較的大規模な施設を想定し、東京都では既に都立大学で具体的な検討に入っています。

(11) 指定管理者制度
地方自治法244条の2の改悪によって庁舎等限られた施設を除く公の施設に関して民間企業を含む指定管理者に権限の法的委任が行なえるようになりました。指定管理者は利用許可・利用料金の設定などができ、行為の責任は指定管理者が追うこととなります。現在のところ学校や病院などは個別法で民間企業に代行させられませんが、政府は04年通常国会に一括の改悪法を提出する準備を進めていましたが、矛盾の拡大など推移が不透明であることから断念しています。東京都や豊島区では具体的検討がはじまっており、江東区では既存の民間委託施設について、足立区と墨田区では新規の委託施設について条例改正が行われました。なお、03年度現在、公の施設を委託している場合は実質的に06年4月までに指定管理者とするか、直営に戻すかの選択が迫られています。各受託団体は指定管理者制度を視野に入れ、解雇か労働条件の改悪かを迫っています。医療や福祉、教育・文化の水準を守るため人員削減や解雇を許さず、労働条件を引き下げない闘いを展開します。
指定管理者を採用する際には

@ 指定管理者制度の導入可否の施設単位での検討
A 指定管理者制度導入に関する条例
B 指定管理者の指定の議会議決
C 指定管理者による代行の実施

という段階をとります。具体的な闘いや要求設定は基本的に導入段階で問題点や課題を職場や住民に明らかにして原則的で広範な取り組みを展開することです。
各段階での取り組みは

@ 指定管理者制度導入について、当局の検討状況の情報収集
A 指定管理者導入の可否に関して自治体の役割を果たすことができるのかどうかを基準とした職場や地域での旺盛な議論
B 導入反対を確認した場合は職場や地域からの旺盛な闘い
C 条例化の段階では条例事項とする基本的項目の拡大によって恣意的運営を最小限にする。また、基本的には個別条例とする。
D 指定管理者の選定にあたっては従来の委託先を尊重することを基本に首長や議員関係者を排除するためにも公開・公募の選定委員会の設置等を求める。
E 実施後も業務内容の検証を住民と共に行なう。また、委託先の労働者の組織化についても目的意識的に追及し、拡大を図る。

など、要求職場の誇りと働き甲斐を守り、住民利益をまもることを基本にそれぞれの段階で取り組むことが重要です。

(12) 構造改革特区・規制緩和
    構造改革特区は臨時職員の3年雇用や幼保一元化など規制緩和・市場化を進めるための手法です。構造改革特区は自治体からの提案という形をとっていますが、住民の意見は反映されていませんし、実際は国の行政改革推進室や企業によって提案されたものです。規制緩和を進め、低賃金労働や民間企業への委譲を容易にするための条件整備です。
また、04年5月12日、地方分権改革推進会議は「地方公共団体の行財政改革の推進等行政体制の整備についての意見−地方分権改革の一層の推進による自主・自立の地域社会をめざして−」の中で地方の自由度の拡大として必置規制や義務付け等、国による過度の関与が地方の主体的な決定や創意工夫ある行財政改革への取り組みの支障となってはならない。と地方自治体自体による規制緩和を求めています。

(13) 事務職業務のアウトソーシング
東京都の都庁改革アクションプランUでは福利厚生事業など事務職業務の一括委託を例示しています。既に防衛庁で業務委託を受けた業者が各自治体を訪問し具体的提案をしています。図書館や住民記録事務の委託や派遣労働者の配置なども各自治体で提案や実施がされています。プライバシー保護や公平性、行政事務の均一性を確保する闘いが求められています。

4  自治体・自治体労働者の役割
自治体には本来、主権者としての住民の生活と権利を守り、住民福祉の向上のため次の役割があり、自治体労働者にも自治体の役割を実現するため、住民主体の自治体づくりの役割もあります。各事業の直営で行なう意義を明らかにして闘うことが重要であることから基本的事項について以下に示し、各職場での討議の素材としてください。

1)  自治体の役割
(1) 平等性・公平性
住民は権利として平等に自治体の施策を受ける権利があります。基本的に所得の違いによって住民の生活に必要な施策が質的に変えられたり、権利が制限されたりすることがあれば、人間としての生活が平等に保障されないこととなります。
また、当然、事業や行政の執行は公平に行われなければ、安心して生活が送れません。

(2) 継続性・安定性

住民は継続的・安定的に自治体の施策を受ける権利があります。しかし、自治体と企業では目的が違うことから継続性・安定性で差がでます。例えば企業活動の目的は経済的利益の確保で住民との矛盾が生じると企業は利用対象者の利益より企業の利益を優先します。その結果、住民に対する責任を放棄し、常に倒産や撤退の危険があり、福利を受ける住民の権利が安定的に保障されません。

(3) 所得の再配分

   自治体には税や社会保障制度などを通じて、住民間にある所得格差を是正し、経済的平等を実現する役割があります。住民が主権者として人間らしく生活することを保障するためです。したがってそもそも効率性は民主的な効率性であり、自治体には事業目的との関係であえて収益性よりも公共性を重視した事業を展開する義務があります。

 2) 自治体労働者の役割
    自治体労働者として本質的に次のような特質があります。なお、臨時・非常勤職員も当然、これらの特質を有しています。自治体には役割分担や研修などによって特質が発揮される条件を整備する責任があります。

(1) 専門性確保
住民は専門的な知識を有した労働者によって自治体の施策を受ける権利があります。自治体労働の多くは住民とのコミュニケーションをとりながら課題を解決する労働であり、個別性に着目しながら一般的基準の中で住民の課題を解決するヒューマン労働です。憲法・法令や各基準・他の事業などに精通し、基本を踏まえた専門的で総合的な判断を求められます。
自治体労働者は住民の発するメッセージを受け止め、専門的な知識や経験を発揮して意識的・系統的に生活の中で課題の解決や改善を図っていく専門的な労働です。

(2) 裁量行為
自治体労働の主人公は自治体労働者と住民です。住民要求の多様性に的確・迅速に対応するためにはマニュアルではなく専門的判断に基づく裁量・現場の判断機能が必要です。
なお、マニュアルには2つの側面があります。ひとつは基本的マニュアルの把握を行なうとともに技量向上が必要です。憲法・法律・条例・規則・安全基準・指導指針などがあり専門性を確保するためには必須のものです。つねに習得と熟練が求められています。他面、マニュアルの進行は「自治体業務」の商品化につながります。経費を削減するためにはマニュアルによる規制があります。その結果、人員や消耗品を中心に削減が可能となります。しかし、市場化のためのマニュアルは自治体労働を単純労働化させます。住民要求の機械的否定や自治体業務の執行責任をマニュアルに押し付けることとなります。自治体労働者として自ら基本的知識を基にして考える姿勢が後退します。住民との接し方や住民の生活をマニュアルに合わせることとなり、さまざまに変化する行政需要に対応できないとともに住民の権利や生活を保障できません。

(3) 職場からの政策提起
企業は利益をあげることが目的で公的目的は2次的、3次的となります。企業自体が現場から出された住民のための政策提起を積極的に行なうことはありません。労働者も職場での改善要求が困難になります。利益をあげることにつながらない要求は受け入れられず、そもそも企業内で政策提起の手続きも存在しません。もし、あったとしても自治体と異なる人格であることから自治体政策に実現する手続きがありません。

(4) 民主的効率性の確保
   地方公務員法は民主的で効率的な運営を保障するために制定されています(地方公務員法1条)。自治体労働者は主権者である住民の意思に基づいて効率的に自治体の業務を進めることが必要となっています。従って、日常的な業務の効率性の追求は住民要求や憲法・法令等に照らして行なうこととなります。

(5) 労働条件の確保と意欲の継続
    自治体労働者が専門性を発揮しながら住民福祉の向上を図るためには自治体労働者の「誠意」や「情熱」だけに頼ることはできません。そもそも労働者が安心して主体的に技能を向上させるためには健康で人間らしく働ける環境が必要です。自治体に働く労働者も平等に安定して住民に接するために、そして、自治体労働者の自主的・主体的な専門性向上やスキルアップ(訓練による技能向上)の意欲のためにも労働条件の確保が必要です。

5 新しい自治体の姿
 (1) 管理からコミュニィティ(民主的共同社会)の形成へ
    地方分権は本来、自治体が国の出先機関としての住民統制機関からの脱却にあります。主権者たる住民が自ら決定し、自ら運営するという自治体像を追求する必要があります。民主的議論手続きの確保・情報公開・特権的利益の廃絶などを通じて住民が自治体の意思決定に参加することが重要です。現在、行政改革として進められている住民参加は既に決定された政策・施策の元での単なる運営への参加であり、民主主義の学校といわれている意思決定への参加はトップダウンなどによって逆に否定されています。

 (2) 政策提案型自治体へ
   自治体労働者は専門家としての提案を行い、住民とともに議論して生活する自治体課題や将来像を決定していくことが重要となってきています。自治体全般や個別課題について提案し、判断するのは住民であるとの基本的立場で各自治体から積極的な政策を発信することが求められています。
   全労働者の労働時間短縮や家族的責任を果たすための条件整備など労働条件改善のため自治体労働者が闘うことも重要となっています。

 (3) 財政運営の民主的効率性の追及
  多くの自治体では誤った財政危機論によって自治体の変質を強行しようとしています。財政状況を正しく明らかにするとともに住民との相互検証が重要です。自治体の役割を明確にして必要なところに財源を投入するための議論を進めることが必要です。

6 取り組みの基本
(1) 学習と行動の両輪で
どんな仕事をしているのか、どんな仕事をしたいのか、どんな仕事であるべきか、そのため各施設や自治体はどうあるべきかなどを職場で語り合うことが重要です。東京自治労連の各補助組織や部会・協議会では各自治体の現状を分析すると共に職場での討議資料等を作成しています。各単組の成果を持ち寄ると共にこれらの資料も活用した学習会、懇談会等を開催しましょう。
その上にたって、自治体リストラの現状や背景、私たちのめざす自治体などについて学習を進めます。東京自治労連保育部会では自治体保育の考え方と具体的施策について保育政策づくりをすすめています。
学習は行動を伴うことによって更に深まります。行動することに対し、あるいは行動した結果での疑問を学習活動に反映し、更に議論を実態に即して深めることが可能となります。学習と共同行動の積み重ねによって住民と共に闘う基盤ができあがります。世田谷区職労では保育闘争で毎週、駅宣を行なうと共に保育園門前宣伝を行い、父母の会のネットワークづくりをすすめています。

(2) 地域住民との広範な共闘で
日常的に自治体職場の役割や機能、実際の仕事を住民に伝えることが重要となっています。各単組で給食まつりや子どもまつりが開催されています。
また、専門性を発揮し日常的に地域で活動することやイベント参加も自治体職場の役割や機能を伝えていく上で有効です。地域商店街との連携での専門性を生かした相談コーナーなどを設けた単組もあります。
さらに、利用者などとの日常的で率直な議論ができる対等・平等なコミュニケーションの関係を造ることが求められています。
自治体リストラの事実はいち早く住民に全戸配布やインターネットを使って情報提供を行ないます。文京区では全戸宣伝を行ないました。区主催の説明会や1000件を超えるはがき、メールによる身直しを求める声によって区当局も部分的に素案の変更を行ないました。板橋区職労の全戸宣伝では2回目の宣伝に対して激励が寄せられています。都区一般では中野区の非常勤職員の解雇問題で住民への宣伝を行い、住民との共闘組織をつくり、当初、2園とも民間企業を指定管理者としていた当局の考えを変更させ、指定管理者は社会福祉法人と企業となりました。
住民などと共にミニ学習会や懇談会・シンポジウムを重ね率直な議論を進めることがリストラ攻撃を跳ね返す大きな力となります。単組・支部・分会単位で可能な方法を模索し、一歩でも踏み出すことが重要です。

(3) 組織・拡大強化の視点で
自治体リストラは職場を破壊する攻撃です。労働組合が先頭に立って闘うことが重要です。自治体リストラを否定しえいない連合自治労との対決点ともなります。
また、自治体リストラは臨時・非常勤職員に対する雇止めなどの攻撃を伴います。闘う戦線を拡大しながら要求実現を図ることが重要となっています。東京での都区一般の闘いなどの実践はもとより全国からも闘いの中で労働組合員を拡大しています。
なお、引き続き、委託先企業等で働く労働者の組織化にも取り組みます。

(4) 東京自治労連総体・単組総体での取り組みで
東京自治労連はリストラ闘争本部を設置しました。東京自治労連全体としての闘争方針の確立と個別単組への援助、各分野での闘いや到達目標の交流などを行い、執行部はもとより全単組が一丸となった闘いを展開するためです。
特に自治労連の設置した医療と保育の闘争委員会の提起は東京自治労連全体の行動とします。
各単組においても闘争体制の確立が自治体リストラ反対闘争を進める上で重要となっています。
   
7 具体的取り組み
   職場からの職場自治研活動と住民との地域自治研活動と基礎に職場の意思統一と地域との共同でリストラ攻撃に反撃する必要があります。具体的には次のように取り組みます。

(1)調査活動
各自治体のリストラ状況・NPMの導入状況などについて随時、調査活動を行ないます。
また、自治労連を通じ、国や国会の動き把握するとともに都の行政部や市長会・町村会などの資料を収集します。
収集した資料は各単組に活用しやすい形態でフィードバックします。
各単組でも住民アンケートや○○実態調査、財政分析、白書づくりなどを進めることが重要です。

(2)学習活動
東京自治労連として随時、課題ごとの学習会や講師養成講座を開催します。
各単組等の学習会開催を支援します。
学習活動は随時、機関紙等で開催前と開催後に職場にお知らせします。

(3)共同行動の展開
東京自治労連として都段階の関連労組との共同はもとより、社会福祉法人などの経営者団体と懇談等を行ないます。
各単組・支部では住民団体や地域団体・地域労組などとともに具体的な自治体リストラへ反撃する地域行動や地域共闘組織の結成をめざします。各単組の地域事情や共同の到達点は異なりますが、まず、地域団体主催の行事への参加や分野ごとの○○まつりや語る会などの開催や市政懇談会・区政懇談会や○○市・区の未来を語る会などを学者・文化人などとともに開催し自治体のあり方論を日常的に懇談します。
民主的自治体建設と結合した広範な闘いを追求します。

(4)三位一体改革・対政府・対都交渉の強化
小泉構造改革や三位一体改革に対する闘いを強化します。三位一体改革の現状を迅速に各単組に知らせると共に必要に応じて見解を表明し、闘いの方向性、具体的取り組みを提起します。
政府や都の政策・審議会等の報告内容を迅速に分析し、各単組に報告すると共に必要に応じて見解を表明し闘いの方向性や具体的な取り組みを提起します。

(5)当局や議会による不当な介入を許しません。
当局や議会による時間外の門前宣伝に対する不当な干渉、懲戒処分指針等に対してその不当性を明らかにするとともに職場組合員総体で反撃を行ないます。
東京自治労連弁護団による弁護団見解の発表や現地調査を行ないます。

(6)個別単組の支援

必要に応じて東京自治労連リストラ闘争本部のもとに単組の支援対策本部を設置します。
支援対策本部は、個別単組に対する全都応援など単組の方針に基づく全都的運動や自治労連への要請などの役割を担います。
以  上