第4回労働安全衛生活動交流集会基調報告
 2005年9月3日
1、はじめに

 (1)自治体リストラですすむ労働者の健康破壊
 日本の多国籍企業は2年連続で史上最高の利益を更新し富裕層はますます富を集中させ、労働者は厳しいリストラのもと長時間労働や労働強化にさらされ賃金は低下、不安定雇用と失業者が増大して、3万人もの国民が自ら命を断つという悲惨な状況に見舞われています。相次ぐ社会保障制度・税制改悪で国民負担は増加、さらなる制度改悪や消費税の増税が迫ってきています。政府・財界は「多様な就業形態を可能とする労働市場の整備」を掲げ、労働時間規制を撤廃する「労働法制」の大改悪を進めようとしています。
 「構造改革」により、国民との矛盾が堆積、噴出するなかで、郵政民営化法案の参議院否決、国会解散・総選挙の事態が起こりました。9月11日投票の総選挙は、まさに小泉「構造改革」路線に対する審判の場が提供されるまたとないチャンスです。国民に痛みを押しつけるだけの政治、憲法改悪して戦争する国づくりに狂奔する政治勢力に、きっぱりとした審判を出せなければ、21世紀に日本の進路と私たちのくらしは立ち直れないほどの事態に直面するのは明らかです。労働者、国民の意思が正しく反映された議会勢力や民主議会が構成されるなら、構造改革路線をおし戻し、国民のいのち、くらしを向上させることができます。
 小泉「構造改革」により、自治体では構造改革特区法、地方独立行政法人、PFI法、指定管理者制度など新たな手法によるリストラが推進され、自治体行政の変質が進行しています。「骨太方針2005」では「小さくて効率的な政府」にむけた「人件費改革」として職員数の純減や地方公務員の給与削減などをめざすとしています。
 東京都は、「都におけるマンパワーの動向と今後の方向」を公表し、「職員の大量退職に対し、大量採用により人材確保する方策はとらない」と明言、これまで以上の都政リストラと職員定数削減、少数精鋭主義の徹底を図るとしました。都に限らず、区市町においても同様な対応がとられる事は政府の姿勢からも容易に想像できることです。自治体行政の公務・公共性の破壊、定数削減や成績主義強化が、長時間過密労働や労働強化を進行させています。仕事上のストレスも増えて職員の心と体の健康をむしばみ、最悪の場合、過労死や過労自殺さえ増えていく事が懸念されます。それだけに、職場での「労安活動」の強化が求められています。

 (2)集会の目的
 1)労働安全衛生法等の改悪がねらわれており、その内容について学習する。
 2)各単組・支部・職場での労働安全衛生活動を交流することにより、それぞれの単組・支部・職場での課題と要求、運動の方向性について前進をはかる。
 3)安全衛生委員会における活動水準をひきあげる。各単組が関わる中央安全衛生委員会と、事業所毎の安全衛生委員会における活動を活性化させることをめざす。活動に必要な法律や厚生労働省通達や指針(ガイドライン)の活用方法に習熟し、その具体化をめざす。
 4)過重労働や不払い残業の解消をめざすとりくみについて交流する。また、職業病の実態についての報告・交流や、公務災害認定裁判闘争の交流、激励を行う。
 
2、労働者をとりまく情勢の特徴

  政府・財界の進める規制改革・民間開放推進政策は労働分野にも重大な改悪をもたらし、これまでの労働者の闘いによる権利水準を後退させようとしています。

(1) 労働安全衛生法の「改正」問題
 国会解散で廃案となりましたが、再度の法案提出が予想されます。改悪内容の学習宣伝を進め、世論を喚起して改悪を阻止するとともに、月45時間以上の時間外労働から産業医の助言指導を受けられるよう取り組みの強化を図ります。
 1)改正論議の経過と背景について
 「労災被災者年間53万人 ・重大災害の頻発 ・労働者の6割が仕事で強い不安・ストレス ・H15年には310件の脳・心疾患、内157件が過労死認定」などの労働安全衛生対策をめぐる状況の悪化がありました。
 しかし、規制改革・民間開放推進の一環としての労働安全衛生法「改正」でもありました。財界からの「過重労働による健康障害防止措置の見直し」要求などが色濃く反映された結果となっています。
 2)財界の要望にそった内容の過重労働対策
 現行の「過重労働による健康障害防止のための総合対策」より後退した内容となります。事業者に「医師による面接指導」を義務づける水準、条件を(1)1月の時間外労働時間が100時間を超えること、(2)労働者から面接指導の申し出がされることとしました(具体的には省令による)。 
 月間時間外労働100時間は脳・心疾患を発症するおそれが極めて高い水準です。過労死・精神疾患の未然防止のためには、もつと低い水準から―少なくとも、残業を月45時間以上行った労働者に対して医師の面談指導を義務付けるべきです。
 3)「時短促進法」を廃止、労働時間管理は個別企業任せに
 1992年に制定された時短促進法は、「年間総実労働時間1800時間」の実現をめざしたものでした。今後は、全国一律の統一的な時短目標をなくし、労働時間の決定を個別企業の労使協議に委ねる新たな法案に置きかえるものです。いまや労働組合の組織率は20%を割り込み、今後団塊の世代が大量退職していくなかで組合員が減少し、労働組合のない企業も増えていくなかでの労使協議では、事実上労働時間が企業の手に委ねられるというとんでもない事態が想定されます。

(2) 労働法制改悪の動き
 1) 「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」の設置
 2003年の労働基準法改正の際、衆参両院の附帯決議を受けて、「今後の労働契約法制の在り方に関する研究会」が2004年4月に設けられました。2005年4月に「中間とりまとめ」が公表され、秋には最終報告が出される予定です。
 これまでの労働基準法改正などにより、一般公務員にも裁量労働制が持ち込まれています(「任期付研究員法」2000年7月施行)。また「短時間勤務公務員」も保育職場などに導入されています。労働契約法が制定されれば、公務職場にも波及、適用されて、雇用や労働条件が切り下げられる事になります。
 2)「中間とりまとめ」で検討されている内容と問題点
 (1) 「解雇の金銭解決制度」の導入―解雇紛争の救済手段の選択肢を広げる観点から検討するとしています。この制度が導入されれば解雇権濫用法理は空洞化され、いまでも横行する企業の経営上の必要とする不当な解雇がさらに多発することになります。
 (2) 「雇用継続型契約変更制度」も使用者による一方的な労働条件変更に法的お墨付きを与える点で大変危険なものです。変更になった労働条件に不満な労働者は会社と裁判で争えというものです。企業側は「解雇の金銭解決制度」ともリンクさせ活用することで、気に食わない労働者を合法的に解雇できます。
 (3) 「労使委員会制度」の創設も問題です。労使同数の委員で構成される「労使委員会」での合意で、解雇の金銭的解決や就業規則による労働条件の変更、配転、出向、解雇などに対して合法性が付与されます。労働条件切り下げや首切り「合理化」に不服な労働者が裁判で争う権利さえ奪われ、少数労働組合の団体交渉権が空洞化される危険もあります。
 (4) 「労働時間法制とホワイトカラー・エグゼンプション制度」については、「多様・弾力的な働かせ方」をねらう日本経団連など使用者団体の主張にそって導入し、「裁量労働」に移行させ時間外手当を削減しようというものです。長時間労働がいっそう激増し、労働者の健康と家庭生活の破壊、過労死・過労自殺の増大という最悪の事態が、容易に予想されます。
 (5) 「試行雇用契約」制度を設けようとしています。「試用期間」を「有期労働契約」とするもので、使用者の判断により長期間の「試用」の末に不適当と判断されれば期限が切れる事で自動的に「クビ」にできるというものです。「有期労働契約」の更新にあたっては「書面による手続きの明示」を強調していますが、有期労働契約者の「継続して仕事をしたい」という要求や、現実に多発している有期雇用契約の反復と「雇い止め」に対する制限、恒常的に存在する仕事への有期労働契約の導入を禁止や期限の定めのない雇用契約とするなど保護規定を充実させるべきです。

3、東京の自治体労働者の健康、安全の実態

  (1)一般健康診断、健康教室の状況
 東京都職員の場合「東京都職員の健康管理の状況」(2003年度)によれば、定期健康診断の一般検診における有所見率は46.8%(前年46.6%、以下カッコ内前年を略す)です。40歳代で49.9%(49.7%)、50歳代62.5%(63.5%)、60歳代72.0%(72.0%)と加齢とともに上昇しています。その原因は「肝機能低下」「高血圧」「高脂血症」となっています。
 東京自治労連の安全衛生活動状況調査の受診率(15年度)は、90%台14委員会、80%台5委員会、70%台2委員会となって高率です。有所見率は17.1%から70.4%までとバラツキがありました。厚生労働省東京労働局の調査では有所見率は45.9%です。ほとんどの委員会で、この所見率をうわまわっていました。

 (2)病気・休職者の状況
 30日以上の病休者(知事部局)は635人(667人)で羅患率(対千人比)は20.6%(21.0%)です。疾病別の割合で第1位が「精神障害」37.5%(37.2%)、第2位が「新生物」16.7%(17.7%)、第3位が「損傷・中毒症」10.4%(9.0%)の順となっています。「精神障害」は238名(248名)で年代別では20歳代34人(55人)、30歳代96人(90人)、40歳代47人(46人)、50歳代60人(57人)となっています。知事部局における病休者総数は878名で「15日以上30日未満」が243名、「30日以上」は635名にもなっています。
 安全衛生活動状況調査には病気休職から退職者となった人員数が水道局6名、目黒区・文京区4名、豊島区3名などと把握されています。個々の事情のあることですが、退職を選択せざるを得なかった事実、働く能力を喪失したときの厳しい現実を思わざるをえません。
 都では管理監督者に対する精神保健講習会を2003年度2回開催し、424人(666人)が受講、エイズ講習会も実施され16名が参加しています。また、全職員対象のストレス対処講習会が2回実施され延べ611名が参加、健康診断結果で「保健指導」の対象者に健康教室を実施し延べ152名が参加、健康づくり教室(メイクヘルス35)には94名が参加しています。職員への精神保健相談は80件(102件)のべ面接回数277回(346回)実施されています。99年度から制度化した職場復帰訓練は25人(24人)の申請に対し終了者23人(18人)、予防指導(復職後の健康管理)を45人(45人)のべ461回(305回)を実施したとしています。

 (3)公務・労働災害、通勤災害
公務災害発生状況を見ると東京都全体では1987件(1927件)で1日9件起きていることになります。教育庁が前年比60件増となっていますが他の部局では減少しました。知事部局の発生件数は93年474件から増減を繰り返しながら400件前後で推移してきましたが15年度は前年比25%増の490件(391件)になりました。局別では病院経営本部が247件(186件)で発生件数が最も多く、中央卸売市場128件(100件)、福祉局46件(36件)となっています。他の局は前年と同水準です。発生原因別では過失等によるもので勤務場所での「施設内」が85.3%(84.4%)です。
また労安活動状況調査では、水道局42(37)件、下水道局10(16)件、国立市4件、区関係では文京区20件から足立区51件の範囲で発生となっています。労働災害は知事部局の統計がなく、水道局2(4)件、国立市14件、区では足立区2件から文京区20件の範囲で発生しています。
申請件数が発生件数を下回っている自治体もあります。たとえ軽徴であっても基金に申請する原則を確認する必要があります。
通勤災害は知事部局で28件(前年26件、以下前年略)、水道7(5)件、下水道局1(1)件、区では文京区4件から世田谷区14件の範囲で発生しています。
現在、公務災害認定闘争は、板橋区給食調理員・志村腰痛事案が係争中です。
(4)臨時・非常勤職員の取り組み強化を
  臨時・非常勤職員は正規職員との労働条件の格差や低賃金構造のなかで、労働安全衛生の問題が、立ち遅れており、取り組みを強化することが課題となっています。臨時・非常勤職員の雇用形態にかかわらず労安法適用となります。健康診断は1年以上の勤務が予定され、週の所定労働時間が正規職員の4分の3以上の者は実施対象となります。なお、4分の3未満であっても概ね2分の1以上である者については実施することが望ましいとされています(平成5・12・1基発第663号ほか)。
  労災保険は現業系では適用されますが、非現業系は適用されません。しかし、地方公務員災害保障法により(69条)、各自治体の条例により適用となります。
非常勤職員でも常勤職員と同じような勤務であれば一年後は、地方公務員災害補償法の適用があり、その他については労災保健等の適用となります。
  東京自治労連には公務公共一般労組が結成されていますが、臨時・非常勤職員の組織化を進めると同時に、労働安全衛生・健康問題を重視し、要求を把握し労働安全衛生活動を強化していく必要があります。

4.労働安全衛生活動の現状ととりくみ

(1)時間外労働削減、36協定問題
 1)東京都水道局の場合
 2005年4月からの36協定では1年の特別延長時間について制限なし(1440時間)から990時間(45時間×6ヶ月+120時間×6ヶ月)に削減されました。
 2)東京都下水道局の場合
 「超過勤務の事前命令・事後確認について」の事務連絡(2005.6.1)が出され、「必ず事前に命令し、事後に勤務実績を確認すること」が指示されています。さらに、「一斉退庁日の実施について」(5.9.30の改正として17.6.29)が通達されました。そこでは、「総勤務時間短縮に関する職員の意識向上等」として、「職員は、正規の勤務時間に業務を終わらせるとの意識をもって、職務を遂行し、超過勤務の短縮を心掛ける」、「管理職員は率先して定時退庁に努めるとともに、職員に対しても定時退庁を呼びかける」こと等の取り組みが強調されています。
 3)超過勤務時間を毎月集計し把握する
 過重労働対策の一環で、「月100時間以上」に限定している当局もあれば「月35時間以上」「月45時間以上」などこまかな集計でされているところも有ります。
 労働基準法に違反し、不払残業が蔓延、横行している実態のなかで、厚生労働省は不払賃金総合対策要綱と指針を通知(2003.5.23)し、要綱では「各事業所ごとに労働時間の管理責任を明確にし、実態把握や改善へ労使の協力を求め」、指針でも「労働基準法を尊守するためには、使用者は適正に管理する責務がある」などを指摘し、労働時間の適正な管理と賃金不払残業の解消を推進しています。
 しかしそれでも公務職場では極度に進められた人員削減のなかで慢性的な長時間労働と不払残業の実態があります。時間外労働を前提にした業務体制を放置している当局の責任は重大です。また、予算がないことを理由にした不払残業も一部に依然として存在しています。今後も定数削減や賃金(本給、退職金、特殊勤務手当、超過勤務手当、福利厚生費等)切り下げなど総人件費削減が進められる情勢です。毎月の超過勤務時間の把握がされていることからも、当局に、総労働時間の短縮を求め、必要な人員や予算、業務体制の見直しや仕事の進め方の改善などを要求するとともに、やむをえない時間外労働には支払いを要求します。定められた労働時間を厳守し、時間外労働はあくまで例外である事の認識を確立することが、「働くルール」の確立にもつながります。

(2)36協定締結職場を拡大しよう
 1)地方公務員は労動基準法の適用除外なのか
 地方公務員の場合、労働基準法が地方公営企業と単純労務職員には全面適用されます。それ以外の職場では人事委員会が労働基準監督機関の権限を代行して行使しているといわれますが、それは労動基準法の範囲内ということです。恒常・常態化している時間外労働は36協定を結ばなければ労基法違反になります。
 地方公務員にも「36協定」締結権があることは旧自治省も認め(行政実例1952.10.12)、国会(1992.5)でも認めていることです。労基法では、労使が協定して届出をすれば労働時間を延長しまたは休日に労働させることができます。この場合、時間外勤務時間の上限を労働大臣が定める基準(例:年間360時間)以内とする必要があります(労基法36条、平成10年労働省告示154号)。36協定は事業所ごとに結ぶのが原則です。その事業所で、過半数の労働者を組織している労働組合(支部、分会、班、職場委員会など)と、その事業者の当局(「使用者」)との間で「36協定」を結ばなければなりません。36協定を結ぶ場合は必ず期限を定めなければならず(規則16条A)、その期間の長さは「3ヶ月以内の期間がのぞましい」(1982年労働省告示69号)とされています。
 労働組合は時間外労働や休日労働をできるだけなくす方向で、「36協定」に対応していくことが大切となっています。そのために労働組合は、時間外や休日労働の実態をつねにつかみ、人員配置や労働条件の改善を求めていくことが必要だとされています。
 2) 都庁における36協定
都庁職場では3年間の協議期間を経て1999年から36協定を締結してきています。
対象職場は出先職場の一部(約1万7千人)で、本庁職場等(約1万5千人)は対象外です。
2004年4月から適用された「特別条項付き36協定」の主旨にそって基本協定を改定すること、36協定職場の過重労働に関した産業医の助言や保健指導の実態を明らかにする事、超勤実態を明らかにし、労働基準監督署や都人事委員会からの改善指導の実態を明らかにし、改善策を示す事などを要求し、改定交渉を進めています。(「都庁職」第433号05.6.15より)
 3) 36協定可能な職場への締結交渉申し入れ
労基法別表一の「事業所の区分」については特別区では「物の製造・加工」など15区分とそれを除く官公署、その他に分類されています。この区分については特別区人事委員会と東京労働局長との間で3年ごとに区分に間する協定を結び、また必要に応じ協議もしています。
 その結果、特別区人事委員会が労働基準監督機関の職権を行使する事業場が職員研修所をはじめ区役所、出張所、区民会館など区のほとんどの施設となっています。労働基準監督署が労働基準監督機関の権限を行使する事業場は給食調理場や土木事務所、保育園や保健所、職員保養所、清掃工場・事務所となっています。
 こうした職場での36協定締結を当局に問題提起し、締結していく事で、順次、36締結の適用職場を拡大していくことを問題提起します。

(3)不払残業の解消をめざすとりくみ
 ○自治労連都庁職衛生局支部神経病院分会では、2004年8月〜10月の超勤自己申告記録による当局請求、交渉を重ね、労働基準法違反申告を労働基準監督署に提出。さらにタイムレコーダの設置による残業把握を要求し取り組みを進めてきています。
 ○江東区職労では3月、4月、5月でノー残業デー職場巡回を実施して、係単位、課単位で超過勤務が行われている実態を把握し宣伝してきています。区当局は、一律10%の超勤削減を進めようとしており、保育園職場への超過勤務手当の配当見直しまで強行しようとしています。(「江東」05.5.27付NO.27より)
 ○墨田区職労でも5月、6月に庁内超過勤務実態調査を行い(18時と19時の2回実施)、在席者数を把握するとともに、超過勤務手当を請求するかどうかのミニアンケートを実施しました。慢性的な残業の実態が明らかになるとともに、「超勤手当請求せず」が45.4%にもなっていることなどをもって、区当局に責任ある適切な対応を厳しく求めています。(「日刊すみだ」NO.5631、5646より。)
 厚生労働省の賃金不払い残業解消指針では、始業および就業時間の確認および記録は使用者の責任であるとしています。都庁の労働組合や墨田区職労などではICカードによる出退勤システムの退庁時間を超過勤務の終了時間に連動させるよう要求してきています。

(4)人員要求、職場環境改善のとりくみ
 定数削減や退職者不補充が続くなかで、限られた人員を住民サービスの向上や、業務量の増大にふさわしい人員配置をさせていくことが重要となっています。世田谷区職労では、生活保護ケース増に対応するワーカー増など、職場要求に応じた増員(「団結」05.2.24号より)を実現させてきています。

(5)メンタルヘルス問題
 メンタルヘルス対策は最も重要な課題となっています。
 あらゆる職場で「リストラ合理化」が強行され、長時間労働が蔓延し精神的なストレスが広がる中で心の病を抱える労働者が急増しています。心の健康は人員配置や人事異動、業務量や時間外勤務、成績主義評価制度など人事・労務管理とも密接に関係しています。うつ病やパニック障害など心の病を引き起こす要因は過重労働と仕事上のさまざまなストレス、「働きづらさ」にあります。
 メンタルヘルス対策は、心の病に陥ったときの適切な早期対応は勿論のこと、日頃からの心の健康の保持増進が重要です。そのためには、心の疾患に対する理解を深めることや、ストレスに気づくことの重要性、ストレスの対処法等、心の健康に関する基礎知識を職員一人ひとりが習得でき、また組織としても取り組むことのできる環境づくりが必要です。併せて、心の病に陥った職員の円滑な職場復帰に対する、職場の理解と支援も重要となってきます。根源的には、「何でもいえる雰囲気の職場環境を作ることが最大の予防策」であることです。この面での労働組合の果たす役割は重要です。
 こうしたなか、厚生労働省は、「心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き」(平成16年10月14日)を明らかにしています。
 都・区の職場にも職場復帰支援プログラムがあります。東京都における職場復帰訓練は25人(24人)の申請に対し終了者23人(18人)、予防指導(復職後の健康管理)を45人(45人)のべ461回(305回)を実施したとしています。
 職場での状況について
 ・ 主税局では、今年度全職員にストレスチェックシートを配布し、ストレスの有無や対処能力などを調べるスクリーニング検査を実施予定となっています。結果は本人通知され、カウンセリングが必要な職員にはコメントが記入され、また治療が必要な職員には、提携している医療機関を紹介するとしています。
 ・ 文京区では、40歳以上の職員に、一般定期健康診断の際、メンタルヘルスチェックシートが配布され、早期発見、早期治療の予防活動が実施されています。

(6)安全衛生委員会活動―各局・区・市(単組・支部)の労働安全衛生委員会の状況
 2004年の労働安全衛生活動状況調査(東京自治労連実施)によれば、回答のあった21(前年29)の委員会で年6回以上開催は毎月開催の豊島区、立川都税、水道本局、隔月で八王子都税の4委員会でした。年3〜5回開催は11委員会、内訳では定期開催6、不定期開催5となっています。年1〜2回開催は6委員会でした。
 産業医は毎回出席が14委員会、欠席は下水道局安全衛生委員会のみでした。産業医の職場巡視活動は共済組合を除き全委員会で取り組まれています。
 健康教室等の実施は品川区14回、共済組合10回が突出していますが、各委員会で取り組まれています。品川区の内容を見ると腰痛予防指導会(年4回)、メンタルヘルス講習会(30、40、50代で)、VDT実地指導会となっています。
 労働安全衛生委員会の内容について組合ニュース、機関紙で知らせているのは11組合でした。労働組合の労働安全衛生活動に対する「推進委員会」などの設置は9組合にとどまり、労働安全衛生委員会前の会議や打ち合わせなどにとどまっている状況です。

5.労安活動の発展のために

(1)労安活動の意義・役割について
 1)労働組合は「いのちと健康の守り手」―自治労連の位置づけ
 自治労連は、「第9回地方公務員安全衛生・職業病全国交流集会」で、いのちと健康を守る闘いの特徴を次のようにまとめています。
 職場で一人でも取り組むことのできる課題
 労基法・労安衛法・通達・指針など法律や行政を活用できる課題
 職場の仲間の支持を得て取り組める課題
 後戻りの許されない課題
 労働組合の資質を問う課題であり、職場で闘う課題
これらの課題を、労働組合の闘いの柱と位置づけて取り組むことが強調されました。
 2)労働安全衛生法の内容、特徴
 労働災害が続発するなかで1972年に労働安全衛生法(以下、労安法)が労基法42条から独立して制定されました。労働安全衛生法の目的は、職場における労働者の安全と健康の確保、快適職場環境の形成と促進にあり、労基法とあいまって労働災害の防止基準や責任体制、国と事業者、労働者の責任を明確にしたものです。
 第3条では「事業者は単にこの法律で定める最低基準を守るだけでなく、快適な職場環境の実現と労働条件の改善を通じて職場における労働者の安全と健康を確保するようにしなければならない」として、事業主の責任を明確化しています。
 50人以上の事業場では統括安全管理者、安全管理者、衛生管理者の配置、安全・衛生委員会の設置を義務づけ、10人以上50人未満の事業場では安全衛生推進者の配置を義務づけています。
 安全・衛生委員会の調査審議事項は、
1、 労働者の危険・健康障害を防止するための基本となるべき対策に関すること
2、 労働者の健康の保持増進を図るための基本となるべき対策に関すること
3、 労働災害の原因及び再発防止対策に関すること
4、 労働者の危険防止、健康障害防止及び健康の保持増進に関する重要事項
などと定めています。職場における安全と衛生に関するあらゆる問題を取り上げ調査審議する事ができます。

(2)労安活動推進のための要求・課題
 1)労働安全衛生法が根づいた快適安全な職場環境をめざします
 ・ 使用者責任を明確にし、健康面での「自己責任論」を排除する必要があります。
 ・ 課題は職場の長時間労働・不払い残業解消です。労働者の過半数を組織している労働組合では当局に36協定締結や有効な超勤縮減策を要求し、人員配置や、業務量の見直しを進めましょう。
 ・ 過重労働対策では医師による助言指導を月45時間から適用させましょう。
 ・ 休暇取得、健康診断項目の充実、メンタルヘルス対策の重視、新VDT基準の適用、禁煙・分煙対策など快適職場づくりを進めましょう。
 2)職場から公務・労働災害の根絶をめざします
 ・ 看護、保育、給食調理職場では慢性的な腰痛症や頚肩腕症候群を訴えています。公務・労働災害を発生させない取り組みが重要です。
 ・ 現在、板橋区職労・志村真理子さんの学校給食調理業務中の腰部捻挫に対する公務外認定取り消し請求裁判が闘われています。引き続き、本部と単組で連携した取り組みを進めていきます。
 ・臨時職員や関連法人職員などの労働災害についても情報や運動の交流など闘いを強化します。
 3)事業所段階での労安活動の活性化のために
 「抵抗なくして安全なし、安全なくして労働なし」は、労働安全衛生活動の立脚点です。自治労連は「公務職場のいのちと健康を守る―安全衛生活動の手引書」を発行しました。この手引書を活用して、取り組みを前進させることが重要です。
 1、安全衛生委員会(衛生委員会)は法で月1回の開催が規定されています。労働組合が方針と体制を確立し、サービス残業問題で記帳運動や実態調査などを進めているように必要なバックアップすることも大切です。また、労働安全衛生に関する法令・通達を学習し習熟すること、そのための研修、学習する機会を安全衛生委員会活動の一環として要求することが重要です。
 2、49名以下の事業所でも労働安全衛生規則関係者の意見を聞くことを定めています。出先機関や保育園や出張所など少人数の職場が多数ある職場では、その事業所をまとめた形で委員会を設置することも可能です。
 3、健康調査をはじめ職場の安全・衛生について日常的に点検・改善をめざすことです。
 4、 労働安全衛生委員会活動の報告については、委員会としての報告をさせるとともに、労働組合でも機関紙やニュースでその内容、組合選出委員の活動、主張、成果などを知らせましょう。
 4)労働安全衛生活動家の養成について
労働安全衛生活動を活性化させるには、労働安全衛生活動に意識的に取り組む労働組合の活動家が必要です。また今後、団塊の世代が大量退職していくなかで労働安全衛生分野の役員の世代交代を見据えた計画的な役員育成をしていく事が重要です。
 ・当局に、労働安全衛生委員会活動に関わるすべての委員に対する必要な講習会を要求します。
 ・「東京社会医学研究センター」「働くもののいのちと健康を守る(全国、東京)センタ―」などの開催する学習会などへの参加を組織します。
 ・自治労連や全労連などの主催する労働安全衛生交流集会などへの参加組織を進めます。

6.結びにかえて
 いま、働き方、生き方が問題になっています。多様な個人の価値観や人生観に基づく自己実現の要求、結婚、育児・教育などを通じた夫婦や家族との共同関係、地域共同社会への参画などです。
 長時間労働の部署に配属された青年労働者は、「お金ではない。毎日の食事さえコンビニでの弁当などで満足なものも食べられない、休日は疲労でグッタリしている。この生活を変えたい」と悲痛な叫びをあげています。
 労働安全衛生活動は、労基法や労安法を後ろ盾にして、事業者・当局に対して職場の労働者のいのちと健康に関する法律や規則を守らせ、労働条件を改善させる取り組みです。地道な学習と継続した粘り強い取り組みが求められます。しかし、それはさまざまな職場で健康でいきいきと働きつづけたいとの願いをもつ労働者の信頼を勝ち取る事のできる大変やりがいのある運動です。意気高く、すすめましょう。