公的保育制度を解体する「認定こども園」法に反対し、国と自治体の
責任で子どもたちに豊かな保育を求める取り組み方針
2006年 5月10日 
東京自治労連中央執行委員会
1.はじめに
 政府は、「就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律案」(以下「認定こども園」法案または法案)を3月7日閣議決定し、第164国会に提出しました。
 法案提出に先立ち、厚労省、文科省は「就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設(認定こども園)の実施に向け、05年4月から在り方の検討のために総合施設モデル事業を実施しています。総合施設モデル事業評価委員会が、05年12月に中間まとめ、最終報告を3月31日に行いました。「認定こども園」法案は、最終報告も待たずに国会に提出され、06年10月施行が狙われています。10月施行のためには、6月または9月都議会で条例化となり、各自治体で具体化されることになります。
法案によって新設される施設・制度は、国と自治体の責任を否定し、保育水準を引き下げ、事業者と利用者の直接入所契約制度の導入、利用者の応益負担につながる保育料の自由設定など公的保育・幼児教育を解体するものです。
 東京自治労連は、「認定こども園法案」に反対し、その問題点と運動課題、取り組み方針を確立し、各単組、関係団体との協力・共同の運動を取り組みます。

2.財界による幼保一元化、総合施設「認定こども園」
  経団連は、99年3月「少子化問題の具体的取り組みを求める〜政府、企業、地域・家庭が一体となってシステム改革の推進を」との提言を行い、「保育サービスの実施状況について公営保育所の取り組みが、民営保育所に比べ著しく劣っている」とし、@民間活力の一層の導入、Aバウチャー制度(利用券・回数券方式)の導入による保育を提供する側から利用する側への補助への切り替え、B幼稚園と保育所の一層の連携を主張しました。
 財界の意向に沿って2002年10月地方分権推進会議は、「事務・事業の在り方に関する意見」において「幼稚園と保育所はほとんど均質化し、差異は感じられない、地域の判断で一元化できる方向を検討すべき」、「幼稚園、保育所に対する国の関与を根元から見直し、併せて補助負担金も見直し、基本的に地方毎の判断で一元化も可能とする方向」を示し、幼保一元化を取り上げました。
 2003年6月政府は、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」国庫補助負担金整理合理化方針重点項目のひとつで新しい児童育成のための体制の整備として「就学前の教育・保育を一体として捉えた一貫した総合施設の設置を可能とする」ことを掲げました。7月には、総合規制改革会議が「規制改革のためのアクションプラン・12の重点検討事項」として幼保一元化を@両施設に関する行政を一元化し、施設整備基準、資格制度、職員配置、幼児受け入れなどの基準の統一化、A保育所の調理室の設置義務の廃止、B保育所の入所制限の緩和、C幼稚園の株式会社等による設置の解禁、D入園年齢の緩和を打ち出しました。2004年政府は、「規制改革・民間開放推進3ヵ年計画」を閣議決定し、幼保一元化(総合施設)の導入について2006年度本格実施を打ち出しました。
 これらを見ると、財界の意向に沿って政府の諮問機関が意見を出し、政府方針となって、「認定こども園」法案の国会提出という財界主導の小泉構造改革の流れが明らかとなっています。

3.総合施設(認定こども園)の概要
  認定こども園法案からその概要と国、自治体の役割を否定し、園児の選考や保育料の設定にかかわるものについて下記に示します。
 1)目的
 我が国における急速な少子化の進行並びに家庭及び地域を取り巻く環境の変化に伴い、小学校就学前の子どもの教育に対する需要が多様なものとなっていることにかんがみ、地域における創意工夫を生かしつつ、幼稚園及び保育所における小学校就学前の子どもに対する教育及び保育並びに保護者に対する子育て支援の総合的な提供を推進するための措置を講じ、もって地域において子どもが健やかに育成される環境を整備に資することを目的とする。
 2)認定基準等
  (1) 設置者は、都道府県知事または、知事より委任を受け、教育委員会の認定を受けることができる。
  (2) 当該施設が幼稚園である場合、幼稚園教育要綱に従って編成された教育課程に基づく教育を行うほか、当該幼稚園に在籍している子どものうち保育に欠ける子どもに対する保育を行うこと。
  (3) 当該施設が保育所等である場合、「保育に欠ける」子どもに保育し、かつ満3歳以上の子どもに対し、学校教育法第78条各号に掲げる目標が達成されるよう保育を行うこと。
  (4) 子育て支援事業を保護者の要請に応じ適切に提供し得る体制の下で行うこと。
  (5) 文科省と厚労省が協議して定める施設の設備及び運営に関する基準を参酌し、都道府県の条例で定める認定の基準に適合すること。
  (6) 幼稚園及び保育所建物及びその付属設備が一体的に設置されている場合に、次のいずれかに該当し、(4)(5)に該当すれば都道府県知事の認定を受けることができる。
   @ 満3歳以上の子どもに対し、保育を行い、かつ幼稚園との緊密な連携協力体制が確保されていること。
   A 保育所に入所していた子どもたちを引き続き幼稚園に入園させて一貫した教育及び保育を行うこと。
 3)認定の有効期間と更新
  (1) 都道府県知事は、認定をする場合、5年を越えない範囲で有効期間を定める。
  (2) 保育に欠ける子ども以外の満3歳以上の子どもに対する保育を引き続き行うことにより、保育に欠ける子どもの保育に支障が生じるおそれがあると認められる場合を除き認定の有効期間を更新しなければならない。
 4)認定こども園に関する特例
  (1) 学校教育法の特例
   @ 認定こども園である幼稚園または幼保連携施設は学校教育法の適用については、園務等に子育て支援事業を含むものとすること。
  (2) 児童福祉法等の特例
   @ 認定を受けた市町村の設置する保育所は、入所希望の保育に欠ける子ども及び保育に欠ける子ども以外の子どもが入所する場合に適切な保育の実施が困難となることやその他事由がある場合公正な方法で選考することができる。(なお、私立保育所に係わっても同様に選考することができる。)
   A 認定を受けた私立保育所について、保育の実施を希望する保護者は申込書を入所希望の保育所に提出する。
   B 私立認定保育所の保育費用は児童福祉法第56条第3項の規定は適用せず、当該私立認定保育所の設置者が定める。(保育料の額を定めたときは市町村の長に届けなければならない)

4.国・自治体の責任を放棄し、子どもの権利を侵害する「認定こども園」
  認定こども園は、@幼稚園・保育所が連携した幼保連携型、A幼稚園に保育園の機能をプラスした施設、B保育園に幼稚園の機能をプラスした施設、C東京の認証保育所など地方が独自で行ってきた地方裁量型の4類型に分類されています。
 第一に法案は、事業者と利用者の直接入所契約制度を導入し、利用者の応益負担の考え方からお金次第で保育内容に格差が生じる保育料の自由設定方式を導入するとしています。保育に対する国や自治体の責任を放棄し保育市場化に拍車をかける役割を担うものです。
 第二に保育内容や施設の条件については、文部科学大臣と厚生労働大臣が定める指針を「参酌」して都道府県知事が条例で定めるとしています。なお「参酌」とは色々な事情、条件等を参照して判断し認定するというものです。現在の最低基準のようにこの基準を満たすべきと言う義務づけではありません。国の制度を維持発展させる義務を放棄し、都道府県に責任を転嫁しています。
 第三に現行の保育水準が引き下げられる可能性を大きく含むものとなっています。総合施設モデル事業の評価委員会最終まとめでは、0〜2歳児について職員配置、職員資格は「保育所と同様の職員配置が望ましい」「保育士資格を有するものが望ましい」、調理室については、「設置が望ましい」として、最低基準とならない、「望ましい」との表現で基準を曖昧にしています。現行保育基準が引き下げられるならば、地域内の公的保育への悪影響も予想されます。そもそも政府が本当に「子どもの最善の利益」を第一とするなら、低すぎる最低基準こそ引き上げることが不可欠です。保育や教育の質につながる基準を曖昧したのでは、子どもの発達を保障する保育・教育が実現するわけがありません。
 第四に待機児童解消とはほど遠いものです。待機児童対策モデル事業評価委員会「最終まとめ」では、「積極的に施設の新設を意図するものではない」と述べています。ましてや圧倒的多数の待機児童は、乳児であり、離乳食など食育に必要な給食室の配置を「望ましい」などでは、待機児童解消など考えられません。
このように「認定こども園」導入の狙いは、財界主導による国の「構造改革」として保育と教育を企業に開放するために公的保育制度を解体する狙いがあります。
 いま果たすべき国と自治体の役割は、保育所における待機児童の解消、保育内容の充実、家庭いる子どもに対する自治体の子育て支援など、国民の切実なニーズと要求を市場化の流れに利用することではなく、国と自治体が責任を持つ、現行の保育所、幼稚園制度を基本的に進めること、子育て支援センター・児童相談所・保健所などとの連携を強め、実現を図り充実させることです。

5.取り組みの基本
 1)保育の市場化を加速させ、教育への市場化導入につながる「認定こども園」法制化に反対し、廃案を求めます。
 2)公的責任による子ども・労働者の権利擁護のため総合的な福祉政策を進め、少子化対策を行うことを求めます。
 3)国、自治体の責任による公的保育の拡充、とりわけ国の最低基準の引き上げを求めます。
 4)自治体の現行保育基準を守り・拡充することを求めます。
 5)学習を基本に保育、教育関係者、保護者、子育てに関わる幅広い住民と対話・宣伝し共同を広げます。
6.具体的取り組み
 1)東京自治労連の取り組み
  (1) 4月28日「認定こども園」法案のねらいと問題についての学習会の開催と取り組み方針(案)で運動の意思統一をはかります。
  (2) 自治労連に結集し「認定こども園」法案の国会審議傍聴行動・国会議員要請行動に参加します。
   @ 5月10日(14:30〜17:00)参議院文部科学委員への要請行動、傍聴に積極的に取り組みます。
   A 引き続き文部科学委員会の傍聴に取り組みます。
   B 参議院議員へのファックス、メール要請行動を実施します。
  (3) 都教組、福祉保育労東京地本など保育・教育関係団体との懇談を呼びかけ、問題意識の共有化を図り、共同の取り組みを検討します。
  (4) 保護者、住民宣伝のためのチラシ等を作成します。
  (5) 対都要請及び各自治体要請を各単組と協力し実施します。
 2)各市職、区職労等での取り組み
  (1) 公立保育園の民間委託・民営化に反対する取り組みと結合し運動を進めます。
  (2) 自治労連作成の学習リーフレットも活用し各単組で学習会を取り組みます。
  (3) 保育・教育の関係団体と協力・共同の取り組みを進めます。とりわけ組織化も展望し、公立幼稚園職員と対話し共同を追求します。
  (4) 当該自治体及び各市・区議会各会派要請行動を実施します。
  (5) 住民向け地域宣伝を実施します。
 3)国会行動、法制化後の闘う日程
  @全国闘争
   4/28    東京自治労連学習会・意思統一集会
   5/10    参議院文部科学委員要請行動
   5/初旬〜中旬 参議院文部科学委員・厚生労働委員へのファックス、メール要請等
  A自治体闘争
   6月〜7月   東京都、各自治体に対する要請行動
           <東京都への要求案>
           ~@保育園・幼稚園について、都として水準向上のため、これまでの都基準を上回る基準を定めること。
           A地方裁量型を導入しないこと。
           B待機児童の解消や子育て支援のため自治体に対する補助金を増額すること。
 4)公的保育を守り拡充する闘いの強化
  @5/16 子育て交付金等に対する対都要請
  A5/21自治体に働く保育労働者の東京集会
  B6/17第6回東京自治研究集会テーマ2「安心してくらせるまち」権利としての社会保障(板橋グリーンホール)
  C6/25第6回東京自治研究集会テーマ3「子どもたちのすこやかな発達を保障するために」子ども・親・子どものために働く大人が手をつないで(平和と労働会館(全労連会館))
以 上 
※ 資料 総合施設モデル事業の評価委員会最終まとめについて

 2005年4月より総合施設モデル事業が、34都府県35施設で実施され、総合施設モデル事業評価委員会は2006年3月31日最終まとめを行いました。委員会は、モデル事業について職員配置、施設設備等の状況、実地調査等によって検証し、その評価を通じて総合施設の在り方を整理したとしています。実施が前提の最終まとめ総論では、「子どもの最善の利益」を第一に考えるとしていますが、「次代を担う子どもが人間として心豊かにたくましく生きる力を身に付けるための施設であるべき」「仕事と子育ての両立支援や働き方の見直しなど社会全体で子どもの育ちや子育てを支援する次世代育成支援の観点から、保護者や地域の子育て力を高めるために各種の支援を行う施設であるべき。」としています。しかし、国や自治体が担ってきた保育、教育、子育て支援の各分野の課題や現状を検証せず、また、保育労働者、教育労働者の専門性、労働条件などについて明らかにしないまま論じています。
 また、総合施設利用対象と施設の機能としては、「親の就労の有無・形態等で区別することなく、就学前の子どもに適切な教育・保育の機会を提供する機能とともに、すべての子育て家庭に対する支援を行う機能を備えるものである。」とし、対象は子を持つすべての親に保育・教育・子育て支援をするとしています。
 「総合施設は、サービス提供の枠組みであり、積極的に施設の新設を意図するものではない。」とし、少子化対策や待機児童対策を根本的に解消するものではないことを自ら認めています。
 実施モデル事業は、@幼保連携型(幼稚園、保育所が連携し、一体運営を行う)A幼稚園型(幼稚園機能の拡充)B保育所型(保育所機能の拡充)C地方裁量型(無認可で地域の教育・保育の総合施設)の4類型で実施したとし、地域の実情に応じた適切・柔軟な対応が可能となるよう一定の指針を策定するとしています。一定の指針は、職員配置、職員資格、施設整備、教育・保育の内容の7点の評価を踏まえるとしています。
 その主な内容は、
 @ 職員配置について
 0〜2歳児については、保育所と同様に8時間程度利用する子どもが典型的な利用者なので、保育所と同様の職員配置が望ましい。
 3〜5歳児については、0〜2歳時と異なり、4時間程度、8時間程度の利用者が同時に存在するため、3〜5歳児の4時間程度の共通の時間は学級を単位とし、学級ごとに職員を配置することが適当であるが、8時間程度利用者は登降時刻が異なることが想定されるため個別対応も必要。
 A 職員資格について
 0〜2歳児は保育資格を有する者が従事することが望ましい。
 3〜5歳時、モデル事業実施施設は教育・保育を担当する職員の7割が幼稚園教諭免許と保育士資格を併用している。両資格を併用することがより望ましいが、常に両資格の併用を義務付けるのではなく、学級担任には幼稚園教諭免許を求め、8時間程度利用する子どもの保育を担当するものには、保育士資格を求めることを原則としつつ、他方の資格のみを有するものを排除することないように配慮することが望ましい。
 B 施設設備について
 施設機能を十分に発揮するためには、すべての施設整備が一体で設置されていることが望ましいが、幼稚園と保育所の間に一定の距離がある場合などには幼児の移動時の安全の確保などの配慮が必要である。
 園舎、保育室、運動場の広さは、モデル事業ではほぼすべてのモデルが幼稚園・保育所のいずれの基準も満たしていた。基本的には双方の基準を満たすべきと考えられるが、既存の施設が総合施設になることが困難にならないような対応が必要である。
 給食については、すべてのモデル事業が実施しているが、乳幼児の食事についてきめ細やかな対応を図り、食育を推進する観点から、調理室については、その設置が望ましい。
 仮に外部搬入方式をとることを認める場合でも、調理機能、栄養面、衛生面、個々の子どもの年齢・発達や健康状態に応じた対応等につき、一定の条件を付けることが必要と考えられる。
 運動場については施設の同一敷地内にあるか隣接しており、専ら施設による利用が可能なものであることが望ましいが、近隣の公園などを運動場とすることを認める場合でも、幼児が安全に利用できるかどうか、利用時間と場所を日常的に確保できるかどうかなど、運動場としての機能を果たし得るかどうか、一定の条件を付けることが必要と考えられる。
 C 教育・保育内容について
 幼稚園教育要綱及び保育所保育指針を踏まえながら、子どもの1日の生活のリズムや集団生活の経験年数が異なることなどの総合施設に固有事情も盛り込んだものにしていくことが適当である。
 D 保育者の資質向上等について
 教育・保育の質の確保・向上を図るためには日々の指導計画の作成や教材準備、研修等が重要であり、必要な時間の確保は午睡の時間や休業日の活用、非常勤職員の配置など施設ごとに工夫されているが、幼稚園教諭と保育士の相互理解に基づきさらに充実が必要。
 教育・保育に加え、子育て支援等、多様な業務が展開されるため、施設長も含め、職員に対する圏内外の研修の幅を広げることが望ましい。
 施設長には多様な機能を一体的に発揮させる能力や地域の人材や資源を活用していくコーディネーターとしての能力が求められ、その資質を向上させることが必要。
 E 子育て支援について
 園児のみならず、在宅の子育て家庭を含めたすべての子育て家庭に対する支援の充実が求められており、子育て支援は、地域の様々な人々の参加も得つつ、総合施設が自ら取り組むべき必須の機能とすべき。
 子育て支援については、保護者が利用したいと思ったときに利用可能な体制の確保が必要である。
 F 管理運営について
 1人の総合施設の長を置き、すべての職員の協力を得ながら一体的な管理運営を行うことが必要。幼保連携型については、幼稚園や保育所の施設長とは別に総合施設長を置く、あるいは施設長が兼ねることが考えられる。
 総合施設では、自己評価・外部評価など子どもの視点に立った評価と改善を行い、その結果の公表を通じて教育・保育の質の向上に努めることが望ましい。
となっています。

参考 学校教育法第78条
第七十八条 幼稚園は、前条の目的を実現するために、次の各号に掲げる目標の達成に努めなければならない。
 一 健康、安全で幸福な生活のために必要な日常の習慣を養い、身体諸機能の調和的発達を図ること。
 二 園内において、集団生活を経験させ、喜んでこれに参加する態度と協同、自主及び自律の精神の芽生えを養うこと。
 三 身辺の社会生活及び事象に対する正しい理解と態度の芽生えを養うこと。
 四 言語の使い方を正しく導き、童話、絵本等に対する興味を養うこと。
 五 音楽、遊戯、絵画その他の方法により、創作的表現に対する興味を養うこと。