2006年9月13日
東京自治労連第4回役員学校レジメ(一部講演内容を加筆)
「いま、金属産業の職場で何がおきているか」
JMIU書記長 三木陵一
民間企業の人事制度といっても、金属産業職場についてお話をしたい。
講演にあたって人事制度を「資本が労働者から利益を搾り出す総体の制度」と定義したい。

T.90年代以降の金属産業をとりまく社会・経済環境
 ― 急速にグローバル化する日本経済、利益第一主義、新自由主義の広がり ―
1.「産業空洞化」… 大企業の海外への生産移管(特に電器産業は早かった)
→ 国内工場の閉鎖、中小下請企業での仕事の減少
2.国際的な企業間競争の激化
→ コスト競争の激化 大企業が中小企業をのみこんでいく
3.M&A(合併・買収)とくに最近の特徴は、外資や投資ファンドによるM&A
 企業の商品化が始る。企業の商品価値を高めるために必ずリストラが行われる。
4.企業法則の改正(規制緩和)と一体となった企業再編のリストラ(分社化、営業譲渡)
5.財界(日経連、経団連)の戦略 1995年「新時代における日本的経営」 
  従業員を3つのグループに
 長期蓄積能力活用型グループ(期間の定めのない雇用契約)
  高度専門能力活用型グループ(有期雇用契約)
  雇用柔軟型グループ(有期雇用契約) ― 派遣や請負など
6.労働法制の改悪 日経連の雇用・労働戦略の要請に応え毎年労働法制を改悪 

U.グローバル化と新自由主義は「人事制度」にどのような影響を与えたか ― 「新時代における日本的経営」
0.「育てる経営」(かつては企業が若い労働者を育てる側面もあった)から「使い捨ての経営」
 短期的な利益追求 → 即「利益」に結びつく経営、人事政策

1.雇用破壊 ― 雇用の流動化
 1)90年代にすすんだ「リストラ」攻撃
(1)業績悪化による緊急避難措置 → 利益の出る企業体質をつくるための戦略的リストラに変質
(2)規模 一度に数百、数千人のリストラ
(3)人権侵害ともいえる執拗ないじめによる退職強要(IBM、NCR、セガ)
IBMではボトム10という評価があり、下位10%は退職を強要する。日常的なリストラが行われている。退職強要の多くは隔離部屋や仕事を与えないことなど。また通常業務とは全く違った草むしりなどもやらされている。
ここ10年で従業員が半数になった企業が多数。
JMIUで非正規といえば派遣や請負でパートは少数。派遣・請負は製造業では30〜40%、20〜30代でみると半数以上ではないか。
(4)リストラに対する「躊躇」「後ろめたさ」(リストラをする企業はかつて経営状態が悪いと判断されていた) → 今はリストラで株価があがる(経営理念の喪失)
2)非正社員(パート、契約社員、派遣、請負(偽装請負)、委託契約等)の増大
3)外国人労働者の増大 日系ブラジル人、中国などからの研修生
 自動車や電機関係で外国人労働者が増大している。日系ブラジル人は全国で30万人。中国などのからの研修生は、ブラジル人などより劣悪の労働条件で雇用。

2.賃金破壊
1)春闘解体攻撃 「ベアゼロ」宣言 → 「定昇制度」の廃止へ
2)成果主義賃金制度の導入
(1)成果主義賃金とは何か 
 @賃金の集団的統一的決定方式を否定し、経営者が一方的に賃金を決定する
 A結果として、労働組合との団体交渉を否定する
 JMIUの各支部でも成果主義が導入された企業と団交しても、個別に賃金が決められ、全体回答がでず、交渉がかみ合わないところが増えている。
(2)成果主義の特徴
 @年齢給、諸手当など一律的に支給されている賃金の廃止・縮小
 A一方的な評価による格付け。評価次第で賃金の減額もありうる
 B一時金や退職金にも「成果主義」を導入

3.労働時間の流動化(サービス残業の強制)
1)労働法制緩和と一体となってすすむ長時間労働
 変形労働時間制、交代勤務、裁量労働制 特に裁量労働制が急速に広がる。仕事を労働時間で管理しなくなってきている。
2)労働時間管理の否定 → 「自己責任」論
 狙われる労働契約法制

V.あらたな人事制度によって広がる矛盾
1.労働者の状態悪化 格差社会
1)失業
2)ワーキング・プアと呼ばれる「低賃金労働者」の出現 とりわけ、青年層の低賃金
  非正規労働者、中小企業労働者
3)過重労働、成果主義による健康破壊 神経疾患、過労死
2.社会に与える影響
1)消費購買力の低迷
2)地域経済、地域社会の崩壊
3)税収、社会保険財政の減少(とりわけ年金財政)
 4)少子高齢化

3.企業の持続的な発展にも大きな影響
 1)リストラによる「現場力」の低下 → 技術・機能の継承
 企業の経営基盤に影響している。トヨタのクレーム問題、日立の原発タービンの設計ミス。ソニーの電池不良など
 また、各企業で「専門工」化から「多能工」化が進められる、ある企業では、試験作業について毎日、違う試験業務に切り替わることが行われている。
 目標だけを現場に押付け、労働者に責任を押付け、利益も考えさせる
 2)過重労働からくる仕事へのモチベーションの低下

4.「新人事制度」の一定の見直しが迫られている
  経済産業省「人材マネジメントに関する研究会」報告

W.労働組合の果たす役割とたたかい
1.いまこそ求められる「連帯」と「団結」の思想
2.JMIUが追求する基本課題
 1)産業別統一闘争の強化 連帯と助け合い
 2)職場の仲間を信頼し、仲間に依拠したたたかい
 3)職場ではたらくすべての労働者が仲間 非正社員もいっしょに
  派遣、請負労働者の組織化を本格的に、外国人労働者を含め
 4)職場を基礎に地域に出て、共同のたたかいを 国民的な共同と社会的な世論
 5)政策の重要性
  労働組合運動は組合事務所でなく、職場にこそある。職場を結集させる要求をどうつくるか。労働者の要求や悩みを分析する政策力が必要。