東京都「認定こども園の認定基準に関する条例」制定に対する
見解と当面の取り組みについて
2007年1月30日
東京自治労連中央執行委員会
 去る12月15日の都議会本会議において「認定こども園の認定基準に関する条例」が採択されました。
 認定こども園の東京都における認定基準の内容は、保育水準と公的保育制度切り崩しの方向に重大な影響を与えるものです。しかし、政府・財界による公的保育制度破壊を先導する東京都は、国基準をさらに下回る方向での認定基準確立と東京における保育の市場化推進をもくろんでいます。
 条例には具体的認定基準を盛り込んでおらず、規則・要綱制定段階での取り組みを強化し、認定基準の改善へ向けて全力で取り組むものです。

1 公的保育制度の切り崩しを狙う「認定こども園」制度
 昨年6月9日に「就学前のこどもに対する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律」(以下、「就学前教育等推進法」という)が成立し、新たに「認定こども園」が創設されました。
 政府・財界は、保育における公的責任制度を解体し、保育の市場化をめざして、保育への企業参入容認・公設民営方式促進・保育水準切り下げなどの全面的な攻撃を進めてきています。
 しかし、公的保育を守る運動の中で、保育は現時点においても児童福祉法24条に基づいて、行政が責任を負う制度として存続し、行政の責任で保育に欠ける子どもに対し入所を決定し、公費により保育提供を行っており、保育料も応能負担としています。
 これに対し、政府・財界は更なる保育の市場化へ向けて、「施設と利用者の直接契約」「保育料の原則自由化」を強く求めています。
 認定こども園は、「事業者と利用者の直接契約であり、入所決定は事業者が行う」「保育料は事業者の自由設定」であることが最大の特徴です。
 昨年12月25日に発表された「規制改革・民間開放の推進に関する第3次答申」において「『認定こども園』における直接契約、保育料の自由化等の実施状況等を把握・検証し、保育所にも導入することを検討すべきである。」とされているように、まさに公的保育の基盤を破壊するための突破口として、位置付けられたものです。
 したがって、認定こども園問題への対応は、公的保育を守る闘いとして極めて重要な課題となっています。

2 東京都「認定こども園の認定基準に関する条例」の問題点
(1)都道府県条例にゆだねられた認定基準
 「就学前教育等推進法」では、都道府県に対して、現行の保育所認可よりも格段に強化された「認定こども園」の認定権限(認定基準策定と認定権限を併せ持つ)を集中させており、都道府県の条例において具体的な施設認定基準を策定することとされました。
 認定基準は、施設設備や職員配置をはじめとした子どもの発達保障を確保するための条件であり、認定基準条例の中でこの引き下げがあっては子どもの発達保障は確保されません。
 さらに、公的な保育を維持していく上でも、事業者による入所決定における判断基準や適正な保育料水準の確保など、法における低い水準を条例で引き上げていくことも可能です。
 現に、他府県の認定基準条例においては、認可外保育施設が実質的に保育所水準を満たさなければ認定を受けられない北海道・大阪・高知等、職員の加配を明記した三重等にみられるように、国を上回る基準を設定しています。
 しかし、東京都は「認可保育所の世界を壊していく」との意図を明確にし、国基準を満たさない認可外保育施設を「認証保育所」として営利企業参入を軸に推進するなど、公的保育制度破壊を進めてきました。都は、こうした方向で認定こども園を位置づけ、その認可基準についても国基準をさらに下回る水準としていく方向を打ち出していました。

(2)都民意見さえ求めずに一方的な条例化
 わたしたちは、認定こども園制度の問題点を明らかにし、特に東京都の公的保育破壊推進の動きに対して、保育・幼稚園関係者と「子どもの育ちを守る都民連絡会」を結成し、34280筆に達した「子どものすこやかな育ちを保障する条例案を求める請願」署名の取り組みなど、子どもの育ちを守れる認定こども園の基準を求めて、全力で取り組みを進めてきたものです。
 また、公私立認可保育所が全都的に参画する東京都社会福祉協議会保育部会からも10項目に及ぶ対都要望書が提出されています。
 しかし、東京都は、こうした意見も無視するとともに、条例制定過程において、審議会設置やパブリックコメントさえも実施せず、都民意見を求めることさえ行わずに条例を制定したものです。

(3)具体的な内容は条例に盛り込まず
 東京都条例の最大の特徴は、具体的な認定基準について条例にはまったく盛り込まず、そのすべてを別途「規則」において定めるとしていることです。
 条例は、「認定こども園の認定基準に関する条例」であり、具体的な認定基準を条例に示さないことは条例制定目的を逸脱するといわざるを得ません。
 具体的な認可基準を「規則」で定めた場合、議会の関与=住民意思が保育水準に反映できないばかりか、東京都当局の意志に基づく規則制定・改正による水準引き下げが容易であり、非民主的で、不安定・恣意的なものとなります。
 
(4)国の指針水準さえも下回る基準制定を策動する東京都
 東京都当局は、「規則」「要綱」は「検討中」としていますが、区市町村認定こども園主管課長会議等において、認定基準案を示しており、その内容は以下のとおり、国が示した指針の水準をことごとく下回る不当な内容となっています。
@ 職員配置
 子どもの最善の利益という視点から見た場合、開所中の全ての場面において保育所と同様の職員配置基準が求められます。
 しかし、3〜5歳の短時間利用児について、幼稚園の学級編成に準じた基準である「35:1」(保育所基準は3歳児20:1、4・5歳児30:1)とする国指針どおりの水準としています。
A 職員資格
 職員資格については、不当にも国の指針を一部緩和=改悪した基準案を示しています。
 認可保育所以外の共通利用時間以外について、「6割以上が常勤保育士であれば可」とする認証保育所A型の基準を適用しています。また、0〜2歳の保育については保育士資格保有者が行うことを義務付けるべきですが、共通利用時間について保育士資格を義務付けていません。
B 施設設備
 施設設備についても国指針以上に緩和しており、保育所型・幼稚園型(単独型)について、既存施設のみならず新設の場合も幼保いずれかの基準を満たせば可としています。
 また、乳児室・ほふく室についても国指針を一部緩和し、0・1歳児1人につき3.3uを、認可保育所以外は年度途中に限り2.5uで可としています。
C 調理室
 子どもにとって食事は重要な要素であり、特に、年齢・発達段階・健康状態などに応じた食事を提供するためにも施設内において給食・調理ができることが必要です。
 しかし、認可保育所以外について、3歳以上児については加熱・保存設備を備えれば「外部搬入方式」を可としています。

(5)認定こども園移行促進へ財政支出
 認定こども園は、@「幼保連携型」(幼稚園と保育所が連携)、A「幼稚園型」(幼稚園が保育的機能を提供)、B「保育所型」(保育所が幼稚園の機能を提供)、C「地方裁量型」(認可外施設が母体となる)の4類型です。
 子どもの利益を優先した場合、学校教育法と児童福祉法双方の基準を充たす「幼保連携型」を基本とすべきであり、学校教育法はもとより児童福祉法=児童福祉施設最低基準さえ充たさない「地方裁量型」(事実上、認証保育所に幼稚園機能を組み入れたもの)は容認すべきではありません。
 しかし、東京都は「認証保育所」を「認定こども園」に移行しやすくするための誘導政策を示しています。
 「認定こども園」に対する新たな国の補助制度は創設されないため、従来の補助が適用される認可保育所や幼稚園以外に補助はありませんが、東京都は、来年度予算で3億円超の補助金を予算要求(生活文化局1億7800万+福祉保健局1億3700万)しています。
 この補助金は、私立幼稚園や認証保育所を対象とした「運営費補助」「子育て支援補助」と私立保育所を対象とする「教育機能補助」であり、公立の保育所・幼稚園については対象から排除されています。
明らかな認証保育所及び私立幼稚園の「認定こども園」移行誘導策であり、既に企業を中心に300ヶ所の事業者が認定こども園への移行を希望する事態に至っています。
 一方、「子育て支援」については、国指針以上を求めて、省令で定める子育て支援事業6事業のうち2つ以上の実施等を求めています。
 こうした事業の実施には、職員配置等の条件整備が必要ですが、補助は明らかにせず、施設の内部努力に依存しています。結果的に、公立の保育所・幼稚園並びに認可保育所の認定こども園移行への障害となることが想定され、「認証保育所を保育の中心」とする東京都の意向が明らかです。

(6)事業者本位、問題発生時は区市町村へ押し付け
 認定こども園は、事業者と利用者の直接契約であり、入所決定は事業者が行います。待機児増という実態のもとでは、事業者による恣意的な入所者選択も可能となります。
また、保育料は事業者の自由設定であるため、待機児が多い中で、保護者が高額の保育料負担を余儀なくされることも懸念されます。
 逆に、保育料における価格競争が生じることも想定されますが、この場合は必然的にコスト削減としての保育条件低下を招き、子どもの発達保障への影響が懸念されます。
 さらに、土曜日の開所や夏休みの設定も事業者任せとされています。
 したがって、入所決定における判断基準の確立や保育料上限設定が必要ですが、東京都は何ら対応しないばかりか、適切な監督・指導に不可欠な施設に対する立ち入り調査権さえありません。
 一方、保育料滞納などで退所させられた場合の対応について、東京都は「退所させられた子に保育に欠ける要件があれば区市町村は保育所に入所させなければならない。」と答弁するなど、問題発生時の対処を区市町村の責任に転嫁しています。
 最終的な責任を負わされる区市町村は、指導権限も付与されず、認定に当たっての意見表明もできず、補助制度については2分の1の負担を求められるという信じがたい扱いを受けることとなります。

3 基本的な対応:不当な認定基準を許さず、保育水準維持を実現しよう
 東京都は、極めて問題のある認定基準案を示していますが、その決定としての「規則」「要綱」制定には至っていません。
 東京都の認定基準案は、多くの保育関係者はもとより区市町村当局にとっても看過できない内容となっています。この点を踏まえて、規則制定段階で認定基準の改善を実現するために取り組みを強化していきます。
 また、認定こども園の動向が、公的保育制度切崩しに大きな影響を持つことを踏まえて、認定こども園運営の検証と問題点を広く共有化いていくことが求められます。

4 具体的な取り組み
(1) 「東京都『認定こども園の認定基準に関する条例』制定に対する見解と当面の取り組みについて」の内容を保育部会及び単組と共有化し、意思統一を早期に図ります。
(2) 早期に基本要求を確立し、対都要請を実施します。
(3) 「子どもの育ちを守る都民連絡会」を構成する各組織ならびに保育関係団体からも集中的な対都要請を組織します。
(4) 基本要求の内容について、各区市町村へ要請し、共同できる要求事項について、各自治体から東京都へ要請を行うよう求めます。
(5) 認定こども園の運営状況について検証を行うために関係団体との協議・検討に入ります。
以  上