2007年度都区財政調整協議結果に対する見解
2007年2月22日
自治労連特区連執行委員会
1 都区間財源配分問題を解決するための重要な2007年度都区財政調整協議
 2000年の都区制度改革によって、特別区は「基礎的な地方公共団体」と位置付けられ、住民に身近な事務は特別区が原則として処理することとなるなど特別区の自治権は大きく拡充しました。
 しかし、移管された事務事業の実施など自治権拡充の物理的保障となる財政自主権の確立と強化については、不十分な改革にとどまり、この問題は新たな都区財政調整制度における都区間の財源配分にゆだねられました。
 2000年の都区財政調整制度をめぐる都区協議は激しい対立のままに推移しながら、一転して政治決着が行われ、区配分割合を極めて不十分な水準である52%とした上で、いわゆる「主要5課題」として残された課題を都区間で確認して協議を終えています。
 この主要5課題は、その後の都区協議においても全課題について都区合意に至らぬまま、2006年度都区財政調整協議の中で「2007年度協議において三位一体改革の影響への対応を踏まえて配分率の変更を行う」ことを条件として、主要5課題について整理する政治的決着が行われたものです。
 したがって、2007年度都区財政調整協議は、2000年の都区制度改革以降、懸案とされている都区間配分問題=区民生活に身近な事務事業を担う特別区がその責務を担うにふさわしい財源確保問題についての極めて重要な協議であり、その結果は、特別区の自治と区民生活に大きな影響を持つものでした。

2 またも都側提案内容で政治的決着
 三位一体改革では、所得税減税と個人住民税増税によって、国から地方へ3兆円の税源移譲を行うとするものですが、同時に個人住民税の税率構造が変更され、所得階層に応じて現行5、10、13%の住民税率を一律10%としたため、所得階層の高い納税義務者を多く抱える特別区にとっては、約133億円に達する減収影響が生じます。
 さらに、税源移譲に伴う国庫補助負担金削減が実施されるため、約450億円の国庫補助削減を受けるなど、三位一体改革の特別区への影響額は△777億円に達します。
 国は、これらの影響への補填は、都区財政調整制度で対応するように指示しています。
 影響総額△777億円を踏まえて、4%以上、少なくとも3%以上の配分率引き上げを求める特別区に対して、東京都は影響総額を△622億円と試算、さらに財源超過が生じている不交付区分を除いた365億円=2%を主張し、協議は難航し、昨年12月4日の第2回財調協議会で協議が決裂する事態に至りました。
 しかし、その後、非公式な都区協議が積み重ねられ、1月16日の区長会総会において都側回答を確認するという政治的決着が行われました。

3 都区間配分は東京都45%、特別区55%
 1月31日に開催された都区財政調整協議会において最終的に決定された内容は、都区間の配分割合について、平成19年度から、東京都45%、特別区55%(現行は、都48・区52)に変更。交付金総額に対する特別交付金の割合を現行2%から5%に変更するというものです。
 この結果、2007年度当初フレームは、普通交付金9304億円(前年比787億円増)、特別交付金490億円(前年比316億円増)とされています。
 基準財政需要額の変更については、子育てひろば事業・普通教室冷房化経費・特別支援教育経費など6項目60億円が新規算定され、主な課題であった清掃費算定の見直しで172億円増、一方で標準職員数について大幅な見直しが実施され196億円減、小中学校改築経費(改築急増期への対応)については措置されていません。

4 配分率引き上げは実質2%、残り1%増は都補助金の削減で解消
 特別区の配分率が現行52%から55%に改善されていますが、三位一体改革の影響に係る都区財政調整上の対応については配分率を2%とされ、残り1%は都支出金の一般財源化としています。
 都支出金の一般財源化は、配分率1%引き上げに相当する額の東京都補助金を削減するものであり、実質的な配分率引き上げは2%にすぎません。
 特別区の試算で4%分に相当する三位一体改革の影響額の半分の措置にとどまったことは、極めて不十分な到達点であり、区民生活への影響が懸念されます。
 三位一体改革の影響への対応は、東京都が当初から主張していた2%で決着したものですが、昨年度の都区協議において、三位一体改革分として都側提案の2%では不足するという区側主張を受けて、「合意できるよう努力する」との確認に至った経緯を踏まえれば少なくとも3%以上が合意条件であり、都区間の協議経過を踏まえぬものといわざるを得ません。
 また、都区協議の中で、都側は、特別区民税・調整三税の増加見込みを受けて、「07年度は財源余剰状態であり、52%でも足りる。」と主張しています。
 この背景には、都側が都区財政調整制度について、都区制度改革以前と同様に「区ごとに積み上げた需要と収入の差を財調交付金として配る制度」という基本認識を有していることにありますが、こうした見解は現行制度の趣旨と異なるものです。
 そもそも調整三税は市町村財源であり、基礎的自治体の業務に充当すべきものであり、先の都区制度改革においても、調整三税の一定割合が特別区の固有財源的性格を有することを法律的に明確にしています。
 都側は、2000年都区制度改革に伴う都区間財源配分問題において、一貫して、制度改革の趣旨を踏まえぬ協議姿勢に終始しており、分権改革を踏まえぬ主張を強引に押し通す対応に強く抗議するものです。

5 都補助金の一般財源化をめぐる問題点
 今回の都区協議の終盤において、配分率1%は都補助金の振替えで対応することとされています。
 わずか数日で決定された補助金は、障害者グループホーム等事業(5億円)、子育て関係(保育室運営費助成、子ども家庭支援センター事業補助、福祉保健基盤等区市町村包括補助事業のうち4事業〜延長保育事業・学童クラブ運営費補助事業・トワイライトステイ等事業・子育てひろば事業A型、9億円)、乳幼児医療費助成事業補助(70億円)、義務教育就学児医療費助成事業補助(18億円)、ひとり親家庭等医療費助成事業補助(20億円)、認証保育所事業(46億円)、家庭福祉員事業(6億円)、区市町村障害者就労支援事業(地域開拓促進コーディネーターを除く、2億円)の8事業、の計176億円です。
 都側は、「いずれも都の単独事業、既に区の事業として同化・定着したもの、または、する見込みのもの」という基準で選定したとしていますが、結果として全てが福祉保健局所管の事業であり、これら8事業が、区の自主事業に切り替わることとなります。
 使途が特定される補助金が、一般財源化されることに対して、「使途の自由度が増し、より自主性を発揮して柔軟で弾力的な行政サービスが可能になった。」という主張が一部にありますが、以下のような問題点が生じます。
 今回、区の自主事業化される8事業は、いずれも現に各区において事業展開されているものであるとともに、住民生活に直結した事業であり、継続こそが強く求められるものです。
 したがって、当該事業実施に関わる安定的な財源である補助金を失うことは、むしろ事業の縮小・廃止が懸念され、住民生活を支える基本的な福祉事業が不安定な状況に置かれることとなります。
 また、これまで「区市町村補助金」として存続してきたこれらの8事業が来年度から「市町村補助金」に変更されることになりますが、この間、東京都の区市町村に対する補助金見直しの動きの中で、特別区において自主事業化されたことを口実として、廃止・縮小の対象となることも懸念されるものです。

6 特別交付金の拡大は都区制度改革に逆行するもの
 現行2%の特別交付金が5%に引き上げられていますが、今回の都区協議において、都側は最後まで特別交付金5%に固執しました。
 特に、最終段階の協議において、特別交付金の扱いについて「平成19年度については都の案で了承する」として、暫定的な扱いと主張する特別区に対して、都側の返答は「財調条例における特別交付金の割合5%は本則として改正する。」という強硬なものでした。
 特別交付金は、災害等の特殊事情に対応するために交付金総額の2%で設定されてきているものです。
 しかし、都側は、@普通交付金では対応できない不交付区の三位一体改革減収影響に対する激変緩和措置、A「その他特別な事情に要する経費」に対する措置の拡充、の2点を特別交付金引き上げの根拠としています。
 財調不交付区である渋谷・港区に対して、三位一体改革に係る一般財源の急減に対する激変緩和措置を講じることについては、一定の理解ができますが、その額は100億円弱となっています。
 来年度の特別交付金は、5%への引き上げによって総額490億円に達し、激変緩和措置を除いても約400億円と今年度比で226億円も増加することとなります。
 そもそも今年度の特別区に対する都補助金総額が600億円程度というなかで、490億円という規模はたいへん大きなものです。
 現行制度においても、災害等が発生しなかった場合、「特別な事情があると認められる特別区」に対して、特別交付金が交付されています。
 しかし、この交付は東京都による事実上の1件算定であり、どこの区のどのような事業に対して、いくら交付されたのかは明らかにされていません。
 極めて不透明であり、都の恣意的判断で運用されているといわざるを得ない現状です。
 特別区に対する都補助金総額に匹敵する莫大な財源を「その他特別な事情に要する経費」と称して、都の恣意的判断で配分することは、都区制度改革に逆行するものであり、断じて容認できないものです。
 この問題では、特別交付金のあり方に関する協議を平成20年度に向けて行うことが都区間で確認されていますが、具体的な算定方法の明確化がきわめて重要です。

7 政治決着を繰り返し、実効ある都区協議は行われず
 今回の都区財政調整協議は、2000年度の都区制度改革から続く都区間の財源配分問題に区切りをつける重要な協議でしたが、特別区側が最終の都区協議会において「十分な共通理解が得られないまま協議を整えざるを得ないことは、誠に残念である。」と発言しているように、特別区にとって極めて不十分な形で区切りがつけられたこととなりました。
 調整三税の配分については、「都区制度改革に関するまとめ(協議案)」に基づいて、「都区それぞれの大都市事務の需要額を積み上げ、これに調整税を除いたそれぞれの大都市財源を充当した後の財源不足額の割合によって定める。」こととされていましたが、結果的には、この問題についての都区間の合意はもとより、実効ある協議も行われないままに配分率が決定されたこととなります。
 都区制度改革の趣旨も理念もないがしろにされた都区協議結果は、都区制度改革を都財政「健全化」のための手段と位置付けた不当な東京都の姿勢に基づくものであり、強く抗議するものです。
 また、区民参加で財政自主権確立と都区制度改革にふさわしい財源の都区間配分実現へ向けた対応の強化を怠り、政治的決着を繰り返してきた区長会の姿勢も問題といわざるを得ません。

8 都区制度改革の趣旨を踏まえた実効ある都区協議を強く求めます。
 1月31日に第1回「都区のあり方検討委員会」が開催されています。
 都区の事務配分や区域のあり方、税財政制度について具体的な検討を行うもので、08年度末までに基本的な方向性をまとめる予定とされています。
 都区の具体的な事務配分を協議する中で、都の行う大都市事務を明確化し、都区制度改革の趣旨を踏まえた市町村財源の都区間配分について実効ある協議を行い、この問題に対する真の区切りをつけるべきです。
 同時に、特別区の自治の拡充と、大都市としての統一性と一体性の確保に留意した住民生活本位の都区制度の確立が求められています。
 また、都区財政調整協議をはじめとした都区制度をめぐる都区間の協議は一貫して密室協議で行われており、根拠のない政治的決着に終始しています。
 区民に開かれた都区協議が強く求められており、こうした要求課題の前進へ向けて引き続き対応を強化するものです。