東京都後期高齢者医療広域連合の
事業運営に関わる要求課題と対応方向について
2007年4月18日
東京自治労連中央執行委員会
 後期高齢者医療制度問題については、本年1月30日付で「東京都後期高齢者医療広域連合問題への対応について」を決定し、検討・対応すべき課題として、派遣職員の労働諸条件に関わる問題と後期高齢者医療の事業水準に関わる問題への対応を位置付け、これに基づいて、この間、派遣職員の労働条件問題での対応を進めてきたところです。
 今後は、後期高齢者医療の事業水準に関わる問題への対応を具体的に進めていくために、以下に、東京都後期高齢者医療広域連合の運営並びに事業水準問題に関わる要求課題と対応方向を示すものです。
 なお、後期高齢者医療制度については、制度そのものに極めて多くの問題を有しており、別途、制度に関わる問題点と対政府要求を整理することとします。

T 広域連合運営に関わる課題

1 後期高齢者医療広域連合議員の選挙
 東京都後期高齢者医療広域連合は、本年3月1日に正式に発足し、今後、6月に各区市町村議会において広域連合議員選挙が実施される予定です。
 「広域連合」は1994年の地方自治法改正によって、広域的処理が望ましい分野における事務の共同処理方式として導入されたもので、特別地方公共団体です。
 「広域連合」については、住民の参加権が法定化されているという特色を有しており、地方自治法291条の5第1項で直接選挙、同第2項で間接選挙を規定し、いわゆる「充て職」を認めていません。
 しかし、東京都後期高齢者医療広域連合は、こうした地方自治法の趣旨を踏まえぬ不十分な選挙制度となっています。

2 民意の反映されない少ない議員定数
 議員定数は、都内62自治体で構成されているにもかかわらず、31名とされ、区17名・市12名・町村2名と配分されています。
 62自治体に在住する後期高齢者の医療に関わる事業を共同処理する事業趣旨を踏まえれば、全自治体の意見・要望の反映が必要であり、最低限、62名の定数とすべきです。
 政令指定都市を有する道府県の状況を見ても、宮城・千葉・兵庫県などの議員定数は構成自治体数と同数であり、京都府・広島県は構成自治体数を上回っています。
 特に、構成自治体の半数の定数設定に加え、人口規模を根拠として、区市町村配分を設定しているため、23区で17名定数に対して、13町村で2名定数との格差が生じています。
 これでは、町村の場合、12年後に初めて議員を選出する自治体が生じるなど、不利な実態が生じます。
 東京における検討の中でも、市町村側からは62名案を推す意見が強かったと報道されていますが、議員定数については事業趣旨を踏まえて再検討すべきです。
 
3 特定党派独占の懸念される選挙方法
 地方自治法では、広域連合への住民参加権を法定化し、直接選挙も示していますが、東京都後期高齢者医療広域連合設立規約第8条では、間接選挙として、具体的には、各区市町村議会の推薦のあった人を候補者として、区・市・町村の各圏域ごとに、各圏域の全議会での得票総数の多い順番に当選が決まる仕組みとされています。
 しかし、各区市町村議会の推薦がなければ候補者となることができないため、議会与党など特定党派の独占も懸念されます。
 これでは、事実上の「充て職」化することも想定され、地方自治法の趣旨を踏まえていないと言えます。

3 住民意見の反映へ向けて
  後期高齢者医療広域連合は、保険料決定、健康診査、医療給付などの保険者事務を担うこととなりますが、保険料決定方法やその水準などは後期高齢者の生活に直結する問題となります。
 したがって、被保険者である後期高齢者をはじめとした住民意見が反映する仕組みの確立など、組織運営に関わっても、住民参加の観点での対応が必要となります。
 基本的には、議員定数の拡充、被選挙権を議員としたうえで立候補の自由を保障し、都内区市町村議会議員全員による選挙実施とするなど、都内議会に占める割合が反映可能な選挙方法とすべきであり、規約改正を求めると共に、当面の措置を含めて、住民意見の反映へ向けた以下の事項を要求案として示すものです。
(1) 住民が議案成立過程で意見表明し、議案に反映される制度として、被保険者代表を構成員とする審議会や公聴会などの権限ある機関の設置。
(2) 十分な期間を置いたパブリックコメント等の住民意見反映制度の確立。
(3) 議員の非選出自治体議会からの事前意見表明の制度化。
(4) 基本的には、選出された議員が個人としてではなく、民意の反映を担う観点から、事前に各区市町村議会において議案討議を行い、議会としての意思決定を経て、広域連合議会に参加するなどの対応。
(5) 「行政機関の保有する情報の公開に関する法律」の適用を受けることから、情報公開条例を制定させることは当然として、住民に対して積極的な情報提供を行う仕組み・ルール作成が求められます。

U 事業水準に関わる課題
 後期高齢者広域連合の行う事業水準に関わっては、以下の問題点が指摘され、その改善へ向けて必要な対応が求められます。

1 求められる保険料水準の抑制
 後期高齢者医療制度における費用負担については公費5割(国12分の4、都12分の1、区市町村12分の1)・4割が現役世代からの拠出金・1割が後期高齢者の保険料とされており、厚生労働省の試算では、制度発足時の一人当たり保険料は約61000円、2015年には85000円に増額されます。
 この保険料水準は、多くが年金収入のみとなっている高齢者にとっては、大きな負担であり、特に、現在は保険料負担の無い被用者保険加入者の家族は、新たに保険料負担を余儀なくされます。
 また、年金額が年間18万円(月額15000円)以上の場合は、年金から保険料が天引き(特別徴収)されることとなります。
 これでは、後期高齢者の生存権保障を脅かす恐れがあり、保険料水準を抑制していくことが強く求められます。
 国民健康保険等では、保険料水準を抑制するために、保険者である自治体からの一般財源繰り入れ措置が行われていますが、広域連合には保険料水準抑制のための一般財源繰り入れの手法がありません。
 このため、法定負担以外の繰り出し金を構成区市町村から行う必要があります。

2 応益負担割合設定は高齢者の所得水準を踏まえた対応を
 保険料について、厚生労働省は、「応能負担」と「応益負担」の割合について、「5:5」とする考え方で個人単位に賦課することを示しています。
 高齢者は所得水準格差が大きく、特に基礎年金収入のみの高齢者が多いなかで、応益負担5割は極めて重い負担となります。
 高齢者の所得水準の格差を踏まえて、応益割の割合については低くすべきです。

3 住民実態を踏まえた制度設計を
 後期高齢者医療制度においては、資格証明書・短期被保険者証発行、差押処分、保険料減免処分、世帯合算による高額医療費の給付決定処分、一部負担金減免処分などの権限は広域連合が有し、区市町村は窓口機能のみとなります。
 このため、事務処理の判断基準について明確化を図ると共に、その内容を検証し、必要な改善を行う仕組みを確立することが必要です。また、具体的な窓口業務を担う区市町村において一定の判断を可能とすることも求められます。

4 健康診断事業問題
 2008年度から保険者に対して「特定健診・特定保健事業の実施義務」が課され、これに伴って、老人保健法に基づいて区市町村で実施している住民基本健診の廃止・縮小の方向が示されています。
 しかし、住民の健康保持は公衆衛生の柱であり、自治体の基本的責務であることを踏まえた対応こそ強く求められます。
 この視点から、広域連合における対応などに対する要求方向の検討が必要です。

V 対応の方向について
(1) 東京社会保障推進協議会において設置された「後期高齢者医療制度問題対策会議」に主体的に参加し、東京都後期高齢者医療広域連合の運営並びに事業水準問題に関わる要求実現へ向けて奮闘します。
(2) 東京社会保障推進協議会後期高齢者医療制度問題対策会議の提起に基づく具体的な取り組みに積極的に参加します。
(3) 後期高齢者医療制度問題について、制度概要・基本的な問題点・東京都後期高齢者医療広域連合に対する要求などについて、学習会を開催します。
(4) 各単組が対応する自治体に対する対応を重視して取組を行います。
(5) 保険者の「特定健診・特定保健事業の実施義務」問題、及び住民基本健診問題などについて、関係職域部会などと協議を行い、対策会議を開催し、要求と対応方向を検討します。
以上