東京自治労連第5回自治体構造改革反対交流集会基調報告(案)
2007年5月9日
    東京自治労連中央執行委員会
はじめに
 住民のいのちとくらしを守るはずの自治体の行政や施設で、子どもやお年寄りなど社会的弱者のいのちが奪われる事件・事故がおこっています。
 小泉・阿倍の自公政権と財界が一体で推進する「構造改革」が、国民のくらしのあらゆる分野に大きなゆがみを生じさせ、格差と貧困をますます拡大し、国民のいのちとくらしを脅かしています。自治体における「構造改革」は、住民のくらしと地方自治を根底からゆさぶり、自治体に働く労働者の働きがいをも奪おうとしています。自治体の役割を縮小し変質させ、自治体の仕事から公共性をなくしてしまう攻撃です。私たちは、市場化テストなど自治体構造改革を進める手法をそろえ、住民のくらしを根底から壊そうとする攻撃のねらいを明らかにして、自治体労働者と住民の対話と共同を大きく広げながら、私たちの要求と住民の願いに依拠して、職場と地域で旺盛にたたかっていくことが求められています。
 東京自治労連は、自治体構造改革に反対するたたかいを前進させるために、次のことを目的に第5回自治体構造改革反対交流集会を開催します。第5回集会は制約が多くあるなかで開催するため、重点課題にしぼりながらも、各単組の取り組み、経験、たたかいの到達点を交流し深め、貴重な成果を持ち帰り運動を発展させることをめざします。
 第一に、自治体の存在意義や役割、地域住民に奉仕する自治体労働者の仕事と役割を明らかにすることです。第二に、私たちが進める自治体の仕事が、住民の権利をないがしろにしたり、住民のくらしを危険にさらしていないかを改めて問い直し、点検を進めて改善していくことで、自治労連が提起する「見直そう、問い直そう、仕事と住民の安全、安心」運動の東京での実践と具体化を図ることです。第三に、民営化や民間委託が押し進められ、自治体職場に広がる偽装請負や違法派遣を放置せず、職場を見直し、実態を明らかにして違法な事態・行為は許さず是正させる運動を取り組むことです。第四に、単組の予算人員闘争などたたかいの到達点を確認し、今後の要求闘争の前進につなげていくため、豊富なたたかいの実践例を交流し共通認識とすることです。
 住民福祉の向上をめざす自治体労働組合や自治体労働者の運動はますます重要になっています。住民とともに自治体構造改革に立ち向かい、憲法を自治体と住民のくらしにしっかりと活かしながら、確信をもって元気に自治労連運動を前進させるために、本集会を開催します。

1 自治体の仕事と職場を見直し住民の安全・安心を
@働きがいある自治体職場を取り戻す運動を進めよう
 自治体構造改革が押し進められるなかで、自治体の職場では、住民福祉の増進どころか、住民をいじめるような仕事が増えていないでしょうか。仕事を進めることで住民と対立するようなことも起こっています。
 「住民に喜ばれる仕事」「自治体労働者としての働きがいある仕事」を求めながら、国民犠牲を強める国の政策、連続する人員・予算の削減、評価制度や成果主義の導入と職場の管理強化でゆとりが奪われ、労働者の健康や安全もおびやかされ、職場には不満、不安、そして要求が渦巻いています。自治体労働者の「いい仕事、やりがいある仕事をしたい」という要求が、自治体構造改革で阻まれているからこそ、みんなが力を合わせて、自治体労働組合として組織的な運動を形づくっていくことが大切です。
 自治体労働者としての誇りと喜びを感じながら働ける職場を取り戻すために、何が今必要なのか、どうすれば改善していけるのか、職場からおおいに討論をすすめていきましょう。

A構造改革に抗して仕事を見直し住民の安全・安心を
 自治体にかかわる重大な事故、プール事故やエレベーター事故などがなぜ連続して起こったのでしょうか。その主要な原因の一つとして、「官から民」「規制緩和」を絶対化し、住民の安全・安心を省みないで経費の削減と効率性のみを優先にする構造改革があるのではないでしょうか。住民のいのち、安全を守ることを最優先にすべき自治体が、仕事の継続性も職員の専門性も二の次にしていること、必要な施設の改修や適切な管理を行う態勢を後回しにしてきたことが指摘できます。今、構造改革に抗した見直しの取り組みが求められています。
 私たちの仕事にかかわる身近な施設、装置や用具等について、住民が利用するうえで少しでも危険なところはないか、とりわけ子どもや障害のある方、お年寄りが安心してつかえる状態かどうか、住民の目線での点検、チェックを進めていきましょう。緊急対応が求められる場合は、自治体当局に対し、年度途中であっても補正予算など必要な措置を求めて取り組みを強めましょう。

B自治体の仕事について職場で語り地域で住民の声を聞こう
 自治体労働者は、日々の仕事のなかで住民と対話し相談を受け要望や苦情を聞いています。住民との対応が、多忙ななかで画一的・事務的になっていないか、ふさわしい施策や社会資源をすべて活用したか、法令や条例・規則などを駆使してきたか、住民の基本的人権、自由や権利が守られているか、思いや要望を十分受け止めて適切な対応ができたか、等の自己点検を行い、職場で事例をあげながら討論していきましょう。
 国が押し進める数々の悪政、改悪に住民の怒りが高まっています。ワーキングプアといわれるような仕事とくらしの大変な現状や自分たちの苦難が、政府・財界が一つになって推進する構造改革に原因があると気づき始めています。地域住民や住民団体、他の労働組合と懇談をもち、さまざまな思い、要望や苦情を聴き取りましょう。また、私たちは、こんな仕事をしたい、こんな自治体をつくりたいという自治体労働者としての思いや希望も率直に語りましょう。自治体労働者の考えや思い、住民の幸せを第一にと願う本当の姿が地域に見えることが大切です。

C自治体労働者の専門性をいかして取り組みを
 住民のいのちとくらし、健康や安全にかかわる問題で、フォーラム、集会、懇談会、相談会などの開催を、少人数からでも幅広く粘り強く取り組んでいくことを追求しましょう。自治体労働組合の特性を生かして、さまざまな職種の専門家である労働者が参加し専門性をおおいに発揮して、住民のくらしの実態と向き合い、少しでも改善の方向につなげられるよう努力し取り組みましょう。
 このような取り組みを進めながら、必要に応じて自治体当局や議会とも懇談や要請を行い、お互いに地域住民のいのちとくらしを守る役割をはたすべき立場であることを確認しながら、住民生活と仕事の改善に向けての協力を進めていきましょう。

2 「偽装請負」「違法派遣」など違法、不当な自治体の実態を総点検し改善する
 自治体の業務委託、とりわけ学校給食調理や図書館窓口業務については偽装請負の疑いが強く、自治体労働組合は民間委託に反対し長年改善を求めて運動してきました。社会的な問題として認識が高まってきた今、住民のいのちとくらし、安全を守るべきである自治体の職場から、違法・不当な状態を一掃することは待ったなしの課題です。
 埼玉県ふじみ野市で起きたプール事故では、受託した企業が業務を孫受け会社に丸投げし、研修もされないアルバイトの監視員が配置されていたことが明らかになっています。契約違反が長期間放置されていました。
 公務・公共の部門で最低賃金以下の賃金で雇用されていたり、偽装請負の状態が横行し、公務・公共部門の非正規・関連労働者の低賃金が民間の非正規・関連労働者より低く、地域の賃金水準に悪影響を及ぼすことも指摘されています。自治体当局の対応の問題を改めて点検し、自治体や関連の職場で働くすべての労働者の労働条件を把握し改善する必要があります。

(1)「偽装請負」とは何か
 「偽装請負」とは、実態は派遣労働であるが、「請負」の形式をとることによって、派遣先企業が派遣労働者を受け入れる場合にある「派遣期間制限」を超えて働かせる時に生じる「直接雇用申し入れ義務」や派遣労働者に対する「安全管理義務」などを逃れるために行う「違法派遣」のことです。
 偽装請負と派遣労働の違いは、労働者への業務指示を誰が行うかがポイントになります。1986年の労働省告示第37号が区分を明らかにしています。ここでは、業務指示を自ら行うこと、資金や機械、設備、材料などを自己の責任と負担で準備することを明らかにしています。これを行っていなければ、請負業者は「労働者派遣事業主」ということになります。
 今自治体職場では、請負(業務委託)といいながら、実際には派遣先企業(自治体)が当該労働者への業務指示を行い、派遣先企業(自治体)の労働者と混在して仕事をする状態が広がっていないでしょうか。使用する機械や材料に関して、「リース契約をしている」「材料は支給する」とごまかしても、「電気代は誰が払うのか」「一人当たり時間単位で決める契約が請負といえるか」など、問題は山のようにあります。業務指示については誰が行っているか比較的明確なのでごまかしにくいといえます。

(2)自治労連の調査活動から見えるもの
 自治労連は、自治体職場に広がる違法・不当な偽装請負などの実態を明らかにするため、3市について現地調査を実施しました。
@愛知県高浜市
 市が100%出資する総合請負会社を設立し、最初は派遣、仕事に慣れれば請負に切り替えという制度を無視した運用をしています。
A京都府京丹後市
 市が100%出資する京丹後市総合サービス株式会社を設立し、学校・保育園の給食業務に従事する臨時職員を移籍し、派遣として受け入れようとしています。
B広島県安芸高田市
 市立保育園の臨時職員を大新東ヒューマンサービス株式会社に移籍、その他の臨時職員は市が100%出資する財団法人安芸高田市地域振興事業団に移籍させ業務委託契約で勤務させます。
 
 調査での共通点として、自治体職場に偽装請負、違法派遣が広く存在していること、行政改革や財政危機の名の下拡大していること、雇用に関する法令、ルールに関心なく受け入れていること、自治体の責務に悪影響を与え、行政の総合性、継続性、安定性を突き崩す恐れがあること、地域全体の不安定雇用・低賃金に影響を与えていること、などが指摘されています。

(3)自治体職場の偽装請負と違法派遣の広がりの実態
 自治体職場の偽装請負と違法派遣は、労働法制の規制緩和や公務の民間委託を原因として広がってきました。住民福祉の増進を図ることを目的とする自治体が、自ら違法・不当な雇用を行って、ワーキングプアをつくり出すという異常な事態は許されません。偽装請負や違法派遣は、自治体の公共性、専門性、継続性、総合性という特質を内部から掘り崩します。
 偽装請負を指摘されると、派遣に切り替えて是正指導を免れようとする動きがあります。これは派遣労働者の権利を侵害する行為であり、自治体がとるべき態度ではありません。例外的な間接雇用を規制し、直接雇用への道筋をつけるべきです。
 派遣労働は、万一の事故等の場合の法適用の違い、住民の安全・安心の確保での問題、直接雇用=任用の義務が発生する問題などから、そもそも自治体職場にはなじみにくいものです。

(4)厚生労働省・労働局の指導強化と運動の前進
 厚生労働省と労働局の指導が強化されています。第一に、労働者派遣事業と請負事業の区分基準を厳格に適用するようになってきたことは注目に値します。埼玉労働局は、北本市への指導で「備品を無償提供している」ことを指摘し、兵庫労働局は、丹波町の調理業務委託計画について、「市が購入した食材を受託業者に提供する」やり方は疑義があると指摘しています。多くの自治体の業務委託に影響を及ぼす内容といえます。委託反対や直営に戻すたたかいの力になるものです。第二に、派遣期間制限にすでに抵触している場合は、厚生労働省の方針が、派遣への切り替えを認めず直接雇用などへの指導強化に乗り出したことです。
 情勢の変化もあって、全国で取り組みが前進しています。
 大新東ヒューマンサービス株式会社の派遣保育士を全国ではじめて直接雇用の嘱託保育士に切り替え(栃木県野木町)、臨時・嘱託職員203名を雇い止めし派遣会社に移籍する計画を撤回(群馬県玉村町)、学校給食センターの民間委託を延期させ、当面直営で稼動(兵庫県丹波町)、などです。

(5)偽装請負、違法派遣とのたたかいの基本点
 公務・公共の職場は、社会的な公正と法令の遵守がもっとも求められる職場です。自治体が自ら違法・不当な雇用を行うことは、どんな圧力や押し付けがあっても許されることではありません。派遣労働などの間接雇用は、労働者の権利を守る点で問題が多くの問題があり、自治体職場にふさわしいものではありません。本来の直接雇用がふさわしいあり方です。派遣契約で偽装請負状態を解消することは、厚生労働省の指導を待つまでもなく自治体職場にふさわしくない形態として反対です。使用者は労働者派遣事業法の直接雇用義務規定を遵守すべきです。
 偽装請負、違法派遣とは次の点を基本にたたかいます。
 第一に、すべての自治体職場から偽装請負、違法派遣をなくしていくことを求めます。
 第二に、労働者に「格差と貧困」「ワーキングプア」といわれる状態をもたらしている主要な要因である、不安定で低賃金の雇用を是正させていきます。
 第三に、住民のくらしと権利を守る公務・公共業務の質を確保するという、自治体固有の意義を実現していきます。
 第四に、公務・公共業務の改善・向上、自治体責任の明確化、公務・公共関係労働者の賃金・労働条件の改善、そして自治体職場の不安定雇用労働者をはじめとしたすべての労働者の組織化を結びつけてたたかいます。
 第五に、偽装請負を派遣に切り替えるのではなく、自治体が直接雇用することを求めます。正規雇用を基本としつつ、当面は非正規での雇用であっても直接雇用を優先して取り組みを進めます。

(6)具体的な取り組み
 以下の具体的な取り組みを東京自治労連及び単組で連携して実施していきます。自治労連本部の取り組みについては要請に基づき積極的に対応します。
@ 自治体当局との懇談をすすめ、職場に存在する「偽装請負」の実態をつかみます。
A 違法状態を解消するために、自治労連作成の要求書を提出し交渉、要請を行います。
B 職場の請負労働者、派遣労働者との対話・懇談をすすめます。
C 請負労働者、派遣労働者の要望に基づき、委託・請負・派遣契約の内容を点検・見直しを行い、問題点は当局に是正を求めるともに、要求実現の取り組みをすすめます。
D 違法状態の解消を口実とした請負労働者、派遣労働者の解雇を許さず、直接雇用を要求するとともに、雇用問題の解決と要求実現のために労働組合への加入を働きかけます。

3 自治体構造改革の主な手法と攻撃の現段階
 自治体構造改革の手法のうち、「外部的民営化」は行政の「民間化」であり、民間営利企業の活動拡大をねらうものです。新地方行革指針は、自治体を「新しい公共空間の形成」の戦略本部と位置づけています。公共サービスの供給主体を多様化し、民間営利企業を中心に市場メカニズムの活用を図ろうというものです。自治体行政のアウトソーシングなど、市場化を進める「外部的民営化」の攻撃の現段階について明らかにしておきます。

(1)市場化テスト
@市場化テストのねらい
 06年7月に「競争の導入による公共サービス改革法(市場化テスト法)」が施行されました。官と民で、または民間同士で公務公共業務の競争入札を行い、業務委託を進める手続きに関する制度です。これは、公共サービスを絶えず見直して限りなく民営化し、または廃止を進めることを目的としており、公共サービスの解体をさらに進めようとするものです。個別法などによる制約や限界を克服し、民間開放を官業のすべてに拡大し、公務の市場化・民間化を一気に加速しようとする財界の強い要望が背景にあります。
A対象業務
 対象業務は、国については非常に広範な業務があり、そのほかに国と自治体それぞれについて、「特定公共サービス」を対象業務とします。これは個別法による規制をはずすものであり、今後行われる法改正でその範囲を拡大することが予定されています。内閣府は、自治体や民間事業者からの提案募集を踏まえて毎年法改正を行い、対象事業を拡大しようとしています。
 現在自治体では、戸籍謄本等・納税証明書・外国人登録原票の写し等・住民票の写し等・戸籍の附票の写し・印鑑登録証明書について、「交付請求の受付及びその引渡し」が対象業務となっています。国会答弁では、「対象業務はそれ以外は想定していない」「民間事業者はデータベースに直接アクセスできない」、としています。
B自治体独自の市場化テスト
 市場化テスト法は、自治体が法で定める業務以外について、独自に条例で競争入札制度を定めることができるようにしています。
 06年9月、足立区は市場化テスト条例を定め、窓口業務への導入を狙うなど、「自治体独自の市場化テスト」推進の動きがさらに広がっており、厳しい監視とチェックが必要です。東京都は、都立技術専門校の「公共職業訓練講座」での競争入札を実施し、07年4月から民間委託を実施しました。
 政府が自治体に市場化テストの実施を強制する法的根拠はありませんが、事実上の強要や誘導の動きをしていることは明らかです。06年8月の総務省「地方行革推進指針」では、市場化テストや独自の競争入札制度の導入を強く推奨しています。
 足立区は、市場化テスト条例に基づいて、区民事務所に民間の人材派遣会社から派遣労働者を受け入れようとしました。業務のノウハウを習得した後に、民間委託をしようとしたものですが、条例によっても行えない手法であることが明らかになり、07年度の導入を断念しました。
C市場化テストの問題点
 市場化テストは次のような問題をひき起こす恐れがあります。
 政府や自治体の事業が民間営利企業の利潤追求の道具にされ、公的責任が解体される、民間事業者がコストを下げるためにサービスを切り下げる、高度なプライバシーを取り扱う業務まで民間開放されるため個人情報が流出する、労働者の異動強制や分限免職、解雇の問題、賃金切り下げの問題が発生する、などです。
 
(2)指定管理者制度
@指定管理者制度とは
 03年9月の改正地方自治法の施行により、法人その他の団体で自治体が指定するものに公の施設の管理を行わせることが認められました。これにより、民間の株式会社やNPO法人など民間事業者が指定管理者になれることになりました。指定管理者は公の施設の管理権限がすべて委ねられ、行政処分に該当する使用許可等も行えます。利用料金を設定することもできます。
A指定管理者制度の問題点
 指定管理者制度の問題点として、すべての公の施設を収益事業の対象とし、企業の裁量で物事が決定され、公的な責任が後退すること、議会等による民主的コントロール機能が低下すること、長期かつ安定的な行政財産の収益事業での使用を認めること、営利追求で利用料金の値上げやサービスの低下になる危険があること、などがあります。また、職員は不安定雇用が多く、指定期間終了後に再度指定されなければ解雇問題が発生する可能性があります。
 この制度では、公の施設の管理主体の限定など、現在でも個別法による市場化への規制が多数残っており、これを活用することが求められています。
B指定管理者制度の現状
 施行後3年の経過措置期間を経過し、全国的には引き続き直営の施設が約7割、直営施設から約1割が指定管理者に移行しています。指定管理になった施設では、従来からの管理団体が約7割、民間企業は1〜2割です。ただし東京都は民間事業者を指定した割合が高くなっています(132施設、63%)。
C指定管理で留意する点
 制度をやむを得ず導入する場合、留意する点として、その職場で働く労働者が住民の期待に応え専門性を発揮できること、自治体から賃金・労働条件を確保できるに足る委託料等を支払わせ条件を整えること、総人件費抑制を目的とした導入をさせないこと(自治体自らがワーキングプアを増大させ、住民のいのちやくらし・権利をおびやかすことになる)、公契約労働の趣旨を充たす内容となるよう条例や規則で規制すること、指定期間中は指定管理料・応募条件・仕様書・提案内容などの変更は認めないこと、情報公開や個人情報保護を明確な基準として定めること、などが重要です。
 業務全般を一括して特定の総合サービス会社へ丸投げ(指定管理)するかたちの請負の動きが広がっています。専門的知識や技能の不足から、自治体職員が指揮監督せざるを得なくなり、偽装請負や違法派遣の状態が生じてくるため、一括の委託などには注意が必要です。
 制度の運用のなかで、住民サービスの低下、自治体や議会幹部と特定事業者との癒着、労働者の雇用問題の発生(中野区における非常勤保育士の雇い止め)などが指摘されています。

(3)PFI制度(民間資金活用制度)
@PFIとは
 PFIは、民間の資金やノウハウを活用した公共サービスの提供のことです。99年の導入以来全国では250件以上にのぼり、自治体では学校や給食センター、老人福祉施設、病院、廃棄物処理施設、複合施設の整備(運営)などさまざまな分野にわたっています。
 建物建設だけでなく、その後の運営もPFI事業者に行わせる施設運営型が出始めています。建設だけでなく、PFI事業者が指定管理者になることで、コストを削減する、利潤追求のレベルを上げるなど、長年にわたる運営が事業者に大きな利益をもたらします。
APFI方式に起因した事故
 仙台市松森工場関連市民利用施設・室内プールは、PFI方式で建設し05年7月に施設使用を開始しましたが、8月の宮城県沖を震源とする地震で9割以上の吊り天井が落下し、35名が負傷する事故が発生しました。本来自治体が責任をもつべき事業であるにもかかわらず、PFI事業での民間との「協働」としてお互いの責任があいまいになったこと、設計・工事の各段階で関係者の意思疎通を欠きチャック機能が働かなかったことなど、施設の安全性にかかわる重大な問題が指摘されています。
B求められる民主的なチェックの仕組み
 PFI事業は、特定の事業者に長年にわたって大きな便宜を与え、莫大な利益をもたらすことから、事業に対する民主的なチェックの仕組みが不可欠です。特に事業者の選定にあたって、住民福祉の見地に適合する基準をつくること、選定には選定委員会を経由すること、選定委員のプロフィールや委員会の議事内容を公開させること、住民の意見聴取のしくみをつくることなどが求められます。
 東京都では、都立病院をはじめとした公共施設の建設・改築をPFI事業化することがねらわれています。これは住民福祉を向上する公的責任と貴重な公有財産をなげすてる一方で、大企業を中心とした民の莫大な利益を確保することになります。自治体労働者や住民にとって認めがたい大きな問題です。

(4)地方独立行政法人
@地方独立行政法人とは
 地方独立行政法人は、自治体の事業を組織ごと別の法人格をもつ独立法人に移行させる制度です。これは、民間が参入しにくい自治体の事務・事業を職場ごと切り離して、経営面での独立性を強調し、運営費や人件費を切り下げ、公務員の身分の剥奪や人員削減を図るものです。特定法人(公務員型)と一般法人(非公務員型)があります。
A対象業務と財源
 対象業務は、試験研究、大学の設置及び管理、地方公営企業法適用の8事業、社会福祉事業などです。対象業務に「公共的な施設の設置及び管理」も含まれており、範囲が拡大する可能性があります。
 財源は設立団体から交付される運営費交付金ですが、その削減が業務運営上大きな問題となっています。設立時に地方独立行政法人となった「首都大学東京」では、毎年2.5%の効率化係数で一般運営費交付金が削減されます。
B地方独立行政法人の問題点
 地方独立行政法人の問題点として、公的な責任が後退し、採算性や効率性重視で事業が行われ、住民サービスが後退すること、情報公開や住民参加、住民監視が弱まること、議会の関与・チェックが後退すること、評価結果や業績を口実に賃金・労働条件が切り下げられるおそれがあること、などがあります。業務実績が評価され、その結果業務や組織の縮小、民営化や組織をなくすこともあり得ます。
 国立大学付属病院では、負債の償還義務を負わされ、毎年の運営交付金削減で深刻な経営危機の状態です。大阪の5つの府立病院は06年4月に移行し、事務のアウトソーシング、人事評価システム、給食業務の全面委託などが進められています。東京都の産業技術研究所は06年4月に移行し、毎年1%の財政運営の効率化が前提とされ、業績評価を行い任用・給与に反映するとしています。国立病院の非常勤職員には雇い止め、賃金の大幅切り下げなど不利益変更が押し付けられ裁判にもなっています。

結びにかえて
 住民の安全・安心を確保するために、どのような見直しが求められているのか、今、自治体の仕事があらためて問い直されています。公務員は全体の奉仕者であって一部の奉仕者ではありません、憲法のこの規定は公務労働の本質を端的に語っています。地方自治法は、自治体の責務を「住民の福祉の増進を図ることを基本」(第1条の2)としています。
 「憲法を守れ」「住民の生存権を保障せよ」「法をふみ破るな、尊重せよ」という要求を掲げてたたかうことが大切です。自治体が自ら違法状態を形づくる「偽装請負」「違法派遣」は、自治体労働者の権利を侵害するものであり、ただちに解消に向けて一歩を踏み出さなければなりません。
 自治体構造改革は、憲法によって保障された住民の人権を脅かしています。「公共性」のゆがみ、変質を正し、自治体の役割を取り戻して、住民のいのち、くらし、権利と安全を守る自治体にしていくことが必要です。住民のくらしに際限ない痛みを押しつけ、利潤追求の大企業には莫大な利益を保障する、このような自治体構造改革と真正面から対決することが、自治体労働者に求められています。
 日本国憲法は、国や自治体が国民・住民の基本的人権を保障する義務がある、としています。憲法がくらしの隅々までいきづく地域と社会をつくっていくために、自治体構造改革と全力でたたかう決意を固め、自治体労働者の団結の力、住民との共同の力で運動を前進させようではありませんか。