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| 2007年7月18日 東京自治労連中央執行委員会 | |
| 1 都による文京区の介護保険サービス事業者指定取り消し処分 (1)処分に至る経過と処分内容 東京都は、6月18日に文京区立特別養護老人ホーム「くすのきの郷」(指定管理者制度を適用し、運営は社会福祉法人同胞互助会)の事業者である文京区に対して、指定取消処分を行いました。 指定取り消し理由は、「施設サービス費の不正請求(介護保険法第92条第1項第6号違反)」及び「虚偽の報告(同第7号違反)」です。 「夜勤を行う職員の勤務条件に関する基準」に基づいて、同施設の場合は夜勤に職員5 名の配置が必要となりますが、人手が足りず、雇用契約のないフィリピン人ボランティアを組み入れるとともに、勤務表のパート職員欄に日本人名で表記し、職員が満たされているかのような事実と異なる報告を行い、02年4月から07年2月まで約4600万円の不正請求を行ったものです。 特養ホームをめぐり施設サービス事業指定が取り消されるのは全国初であり、介護保険 法における最も重い処分です。 さらに、連座制が適用され、他の3カ所の区立特養ホーム、8カ所の在宅サービスセンターによる通所介護も08年3月31日で都の事業者指定が切れることから、来年度から区立による運営ができなくなります。 各種報道によると、厳しい処分理由について、都当局は、「指定管理者に施設運営を委託しても、自治体には施設が適正に運営されているか、指導・監督責任がある。」としています。(6月19日付、毎日新聞より) (2)文京区当局は処分受け入れ、全施設を民設民営へ @全施設を民設民営へ 文京区当局は、介護報酬返還額の決定、事業者に対する抜き打ち検査実施など今後のチェック体制、「くすのきの郷」の運営法人公募を実施し、9月中旬に新法人を選定し、12月から新法人による運営に移行することを発表しています。 さらに、他施設についても区が退いて「民設民営」に移行するとして、いずれも区所有の土地・建物は無償で貸付するなど、事業者負担の生じないように配慮の上、現行指定管理者に引継ぎを要請するとしています。 A利用者家族会から要請の対都不服申し立ては否定 今回の問題に対して、利用者・家族は「取り消し処分には納得できない」と猛反発しています。 6月17日開催の家族会役員会において「法の欠陥。基準を満たすためにやむを得ずやったことだ。」「金儲け目的のコムスンとは違う。」として、実態を優先すべきとの考えを示し、6月24日の集会の場において、区当局に対して都に対する不服申請を求めています。 しかし、文京区当局は、「異議申し立てをする考えはない」としています。 (3)都当局の判断による極めて重い処分決定 不正請求及び虚偽報告は違法であり、許されるものではありません。また、区立施設として、管理監督が不十分であった文京区の対応も問題です。 しかし、指定取り消し処分と連座制適用によって、区立による施設運営継続ができなくなることに加え、運営に何ら問題のなかった施設が巻き込まれる形となっており、重すぎる処分といわざるを得ません。 介護保険法第92条は、不正請求など12項目のいずれかに該当する違反があった場合、「指定を取り消し、又は期間を定めてその指定の全部若しくは一部の効力を停止することができる。」としており、「できる」規定の中で、都当局が指定取り消し処分決定をしたものです。 しかし、以下に示す背景ならびに処分にかかわる問題があり、都による処分決定内容については異議があるものです。 2 背景は現行介護保険制度の問題と公的責任放棄 (1)介護労働者不足問題は現行介護保険制度の問題に起因 今回の直接的要因は、介護施設における深刻な人手不足問題です。 この間題は、社会的にも大きく取り上げられており、介護福祉士の国家資格所有者約41万人のうち、介護に従事している者が約23万人に過ぎないとされています。 これは、介護報酬の抑制・引き下げの中で、介護従事労働者が極めて低い水準の貸金・労働条件を余儀なくされていることに原因があります。 介護従事労働者が安心して働き続けることができる抜本的な介護報酬改善こそ本質的な問題解決の方向です。 (2)指定管理者制度による介護サービスヘの公的責任放棄 「くすのきの郷」は、92年に開設されていますが、04年に指定管理者制度による運営に移行しています。 「公の施設」の管理は、その公共性を考慮して、地方自治法第244条の2によって公共的団体に対する委託に限定されていましたが、公的責任の縮小と市場化を目的とした構造改革路線のもとで、法改正によって「指定管理者制度」が導入されたものです。 従前は、区から公共的団体に「委託」を行うものであり、この場合は、施設の管理権限は区にあります。 しかし、指定管理者制度では、施設の管理権限を指定管理者に「委任」して、事務事業を代行させるものであり、指定管理者制度導入によって、区の関与は法的に大きく縮小しています。 したがって、指定管理者制度導入によって、公立施設運営にかかわる公的責任が法制度的に後退させられたことも背景の一つといえます。 3 問題の多い東京都の処分決定 (1)管理権限を有する事業者よりも設置者に重い処分は不整合 指定管理者制度では委託とは異なり、「施設の管理権限」が受託事業者に「委任」されています。 しかし、設置者であることを理由として、文京区に指定取り消し処分が行われ、全ての介護施設について区立としての運営が実質的に否定される一方、運営者である同胞互助会に対しては、措置命令(法令違反の改善に係る必要な措置をとるべき旨の命令)にとどまり、同法人による他施設の運営は引き続き可能となっており、極めて不整合な事態と言えます。 (2)極めて安易な処分経過 厚生労働省は、コムスンに対する処分について、全国指導監督担当者会議(6月12日)において、指定取り消し処分ならびにいわゆる連座規定にかかわって、「今回明らかとなった不正事実のみで直ちに取り消さなければならないということでなく、個別の事業所ごとに監査等をおこない、事実確認を行ったうえで、取り消し処分を行うべきかを判断すべきものである。」と説明するなど、慎重な対応を行っており、更新不可決定にとどめています。 こうしたコムスンに対する慎重な、処分経過に比較して、今回の文京区に対する処分は極めて安易に実施されています。 今回の件については、今年2月23日に施設長自らの報告で不正が発覚しており、コムスンのような明らかな組織的不正隠しとは明確に異なるものです。 自ら告白した後、3月1日には改善も図られており、何よりも一発取り消しの処分決定には、強い疑問が残ります。 特に、都当局は、同事業所に対して03年11月28日と05年11月9日の2回にわたる指導検査を直接実施しているにも関わらず、本件発見に至っておらず、自らの指導検査で発見できなかった不正把握を文京区に求めることは道理がありません。 (3)区民サービスに大きな打撃 区立の介護施設を有することは、区民の入所決定に関わって強く関与ができることが大きな利点であり、膨大な入所待機者の存在が社会問題になっている貧困な介護施設の現状の中で、区民にとっては極めて重要なことといえます。 しかし、全ての区立介護施設が民設民営化されることによって、施設入所は利用者と施設の直接契約に移行することから、区民サービスに大きな打撃をもたらします。 さらに、区立施設であれば、区議会などを通じて、施設運営に関わって区民の意見を直接反映させることも可能ですが、民設民営化によって、この部分も大きく後退します。 (4)今後の指導監督業務にも悪影響 文京区は、介護保険者であり、区内介護事業者に対する指導監督業務を有します。 しかし、介護保険制度において最も重い事業者指定取り消し処分を受けた文京区が、今後、民間介護事業者に指導監督を行うことについて、 整合性が確保できるのでしょうか。 文京区当局は、介護保険者としての立場と今後の業務運営を踏まえ、都当局の処分に対して、異議申し立てをすべきですが、利用者家族の猛反発にもかかわらず、処分に従う姿勢を強く打ち出しており、こうした姿勢にも疑義があります。 (5)懸念される他への波及 この間、社会福祉・社会保障制度改悪は、公的責任の放棄と市場化を柱として推し進められてきました。 自治体においては、公設公営福祉施設の民営化攻撃が強まっており、地方自治法改正による指定管理者制度導入も、公の施設の民営化を促進する目的を持つものです。 今回の処分の結果として、文京区立の全ての介護福祉施設が民設民営化を余儀なくされており、都当局による安易な処分経過と文京区当局の姿勢の裏には、介護における市場化推進(=公設施設の民設民営化推進)が強くあるものと指摘せざるを得ません。 今回の処分は、指定管理者制度によって管理者責任が民間事業者に委任されている公立施設運営における自治体の管理監督責任が、結果として民設民営施設への管理監督責任よりも、重い結果となっており、今後、他自治体の介護施設運営や障害者・保育を含めた他分野において、公設民営方式よりも民設民営方式の選択に拍車がかかることも懸念されます。 5 真の解決方向は公的責任の強化 問題の本質は、指定管理者制度による区立施設運営の中で、施設運営に関わる公的責任が実質的に放棄されていることにあり、解決の方向は公的責任の強化に他なりません。 しかし、文京区が介護保険サービス事業者指定取り消しを受けたことで、他の3ヶ所の特養ホーム・8ヶ所の通所施設も今年度末に区立施設としては終了し、施設貸与などによって民設民営化を余儀なくされ、現行よりも文京区の関与が及ばない状況にいたることとなります。 これでは、解決の方向に逆行するものといわざるを得ません。 したがって、都当局に対して、処分決定内容の見直しを強く求めるものです。 6 対応について @ 当該の文京区職員労働組合と十分な連携を行い、必要な対応を進めていきます。 A 今回の処分内容にかかわる法制度的面からの検討を行います。 B 都・区議会への対応を進めるとともに、文京区職労による地域社保協対応を図ります。 C 文京区当局に対しては、今回の処分に対して、都当局に対する異議申し立てを行うように要請を当該区職労とともに実施します。 D 都当局に対して、今回の処分決定を見直すように要請を行います。 E 問題の本質は、現行介護保険制度にあり、介護従事労働者の労働条件改善へ向けた介護報酬引き上げなど、制度の抜本的改善へ向けて対応を引き続き強化します。 F 特養ホームくすのきの郷については、事業者変更が余儀なくされることから、東京公務公共一般労組と連携し、社会福祉法人同胞互助会職員の組織化を進め、雇用継承などへ向けた対応を進めていきます。 |
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| 以上 |