後期高齢者医療制度をめぐる現局面と当面の対応について
2007年9月12日
東京自治労連中央執行委員会
 東京都後期高齢者医療広域連合は、保険料や保健事業など後期高齢者医療制度の具体的な事業水準に関わる検討を進めています。
 8月31日には、保険料試算を発表しましたが、厚生労働省見込み額を大幅に上回るものとなっており、対応の強化が求められます。
 このため、現在の状況を整理し、当面する取組を提起するものです。

東京社保協を軸に精力的な取組
 後期高齢者医療制度問題に対して、東京自治労連は、4月18日の中央執行委員会において、「東京都後期高齢者医療広域連合の事業運営に関わる要求課題と対応方向について」を決定し、東京都後期高齢者医療広域連合の運営並びに事業水準問題に関わる要求課題と対応方向を確立し、東京社保協内に設置された「東京都後期高齢者医療広域連合対策会議」に、東京民医連・東京保険医協会・年金者組合都本部とともに参加し、取組を進めてきました。
 この間、広域連合要請(4月23日、7月2日)東京都保健福祉局要請(7月30日)、広域連合宛要請署名、地域社保協を通じた自治体議会への請願・陳情など、精力的に取組を進めてきました。
 
高すぎる保険料試算額
 保険料については、11月20日に開催が予定されている広域連合議会において保険料条例案の審議・可決が予定されています。
 この間、東京都後期高齢者医療懇談会(学識経験者・被保険者代表・行政側代表などで構成)においても討議が行われてきていますが、8月31日に開催された広域連合議会全員協議会において、広域連合当局から「後期高齢者医療制度における保険料について(案)」が示されました。(別添、「概要」参照)
 これは、「1 保険料の基本的な枠組み」「2 保険料の賦課基準」「3 保険料の軽減」「4 保険料の徴収」「5 保険料が不足する場合への対応」とともに、「6 極めて粗い保険料の試算」が提起されています。
 一人当たり保険料については、年額15万5千円(普通調整交付金が3割程度の交付にとどまった場合で、保健事業・葬祭事業を全額保険料に算入する場合)とされています。
 厚生労働省が見込んでいる全国平均は、7万4400円とされており、約2倍に達する高額な水準です。
 また、都内国民健康保険料の1・5倍の水準に達し、特に保険料均等割額は約5万円と、特別区国民健康保険料の均等割3万5100円を大きく上回っています。
 この保険料水準は、多くが年金収入のみとなっている高齢者にとっては、大きな負担であり、後期高齢者の生存権保障を脅かす恐れもあります。

要因は低すぎる国庫負担
 後期高齢者医療制度における費用負担については、基本的に公費5割(国12分の4、都12分の1、区市町村12分の1)・4割が現役世代からの拠出金・1割が後期高齢者の保険料とされていますが、実質的には、公費負担水準はさらに低くなる仕組みとなっています。
 現役並み所得者(3割負担)に係る給付費については公費負担がありません。
 また、保健事業・葬祭費などの事業に対しても公費負担が無く、審査・支払い手数料に対しても公費負担が充当されません。
 さらに、国庫支出金のうち12分の1に相当する部分は、調整交付金(普通調整交付金90%と特別調整交付金10%で構成)となりますが、普通調整交付金は、所得格差による広域連合間の財政力の不均衡を調整するために交付されるため、所得水準が高い場合、減額されることとなります。
 これらの措置によって、実質的には、公費は5割に達せず、結果的に保険料水準を引き上げることとなります。
 
公費負担増・一般財源の繰り出しを
 高水準の保険料試算結果を踏まえて、「住民の理解は得られない」として、市長会では国や東京都の財政負担を求めるために要請活動などを実施することを確認しています。
 低すぎる公費負担が高すぎる保険料の要因であり、国・都は早期に財政支出拡充を決定すべきです。
 そもそも、国民健康保険等では、保険料水準を抑制するために、保険者である自治体からの一般財源繰り入れ措置が行われていますが、広域連合には保険料水準抑制のための一般財源繰り入れの手法がありません。
 このため、法定負担以外の繰り出し金を構成区市町村からも行う必要があります。

保健事業には一般財源投入を
 先の医療制度改悪によって、現在、老人保健法に基づいて実施している基本健診が廃止され、08年4月からは、40歳以上75歳未満の健康診査について医療保険者が実施し、75歳以上の健康診査については、後期高齢者医療広域連合の「努力義務」とされています。
 広域連合当局は、健康診査を区市町村に委託して実施することを決定していますが、保健事業に対する公費負担が無く、保険料と一部負担金を財源とするため、保険料と一部負担金のあり方などが争点となっています。
 8月20日に実施された広域連合第3回医療懇談会においても、「全体としては、国の補助が整うのであれば無料で実施することが望ましい。しかし、それで保険料が極めて高額になるのなら、公平性の観点から一部自己負担を導入せざるを得ないという意見があったという両論併記としたい。」というまとめに至っています。
 現行の基本健診については、自己負担を導入している自治体は都内ではごくわずかです。
 したがって、公費負担・区市町村の一般財源投入で引き続き無料で実施すべきであり、健診事業水準についても、現行を下回らぬ水準とすべきです。

制度そのものの抜本的見直しを
 9月4日、厚生労働省は後期高齢者医療の診療報酬体系に関する考え方をまとめた骨子案を社会保障審議会特別部会に提示しました。
 その内容は、75歳以上の診療報酬を「別建て」にする差別医療の持込となっています。
 死ぬまで高齢者本人から保険料を取り続け、年齢で線引きした格差医療しか提供せず、高すぎる保険料の支払いを強要しながら、その支払いが滞ると保険証を取り上げるという過酷な医療制度は、憲法15条の生存権保障にも反するものです。
 制度開始が目前に迫り、保険料水準などの具体化に対する対応を進めるとともに、制度そのものの抜本的な見直しへ向けた対応の強化が求められています。

当面の対応について
(1) 引き続き、東京社保協を軸に、都内関係諸団体とともに、広域連合・東京都への要請交渉などを進め、事業水準に関わる要求の実現へ向けて全力で対応していきます。
(2) 8月8日付(発2007-552号)で各単組に依頼した東京都後期高齢者医療広域連合長宛「後期高齢者医療制度実施にあたっての要請書」署名について、各単組における対応を強化します。
(3) 自治労連は、9月4日付で後期高齢者医療制度の抜本的な見直しを求める国会請願署名を提起しています。ただちに、各職場に署名用紙を配布し、多数の集約に努めます。
以上