福祉・教育など住民施策の充実と
地方自治確立のための地方税財源の確保をめざして
2007年9月19日
東京自治労連中央執行委員会
はじめに
 東京都と23区は、地方交付税が合算算定されるため地方交付税不交付団体であり、多摩地域においても、半数以上の自治体が不交付団体です。この間、自治体にも地域間で税収格差、財政力格差がある、東京の税収を吸い上げて地方へ分散する必要がある、等の政府・マスコミの論調が目立っています。この背景には、政府・財界・自民党などが推進している道州制の問題があります。道州間の格差是正が必要などとして、地方法人関係税の調整システム策定や23区を国直轄にしてその税収を配分することまで議論されています。道州制を理由にして、国から自治体への財源保障をなくしていくことは認められません。
 経済財政諮問会議など国の機関での論議に対し、東京都と区長会が「反論」を明らかにしました。東京自治労連として、これらの考え方にふれながら問題点を明らかにし、財源配分や自治体税財政のあり方等について、以下の見解を明らかにします。
 
 
1  国、財界は「地方税の税源が偏在、地域間の格差是正を」と主張
 経済財政諮問会議などを中心とした国、財界から、東京都の財政や法人二税を中心とした税収に関して、東京と地方の財政力に大きな格差があり是正するべきだ、と問題視する論調が相次いでいます。
 
(1)6月6日「平成20年度予算編成の基本的考え方について」(財政制度等審議会)
 地方交付税の基準財政収入額を引き合いに出して、都及び23区は財源超過額が1.4兆円、留保財源額が1.4兆円と指摘しています。さらに、23区では、財政的ゆとりを背景に、児童手当の上乗せや子供の医療費の無料化など標準的な水準を上回る住民サービスを行っている、選挙管理委員会や教育委員会の委員報酬が市の平均額のそれぞれ4倍以上、2倍以上、他市と比べ所掌事務は最も少ないのに人口当たり職員数は最も多いとしています。法人二税は地域間の偏在が大きく、地方消費税の地域間清算システムや都の財政調整制度などを参考に、偏在性是正のための具体的な仕組みの検討、自治体間の水平的な財政調整制度の導入検討を行うべきとしています。
 
(2)6月19日「経済財政改革の基本方針2007〜『美しい国』へのシナリオ〜」(経済財政諮問会議)
 税制改革で実現すべき6つの柱の一つである「真の地方分権の確立」の項で、法人二税を中心に財源が偏在するなど財政力に格差があることを踏まえ、地方税のあり方や国・地方間の税目・税源配分の見直しなど、地方間の税源の偏在を是正する方策を検討し格差の縮小をめざす、としています。また、地方分権改革の具体的手段の一つとして、地方財政改革推進について同様の点をあげ、さらに、「ふるさと」に対する納税者の貢献や関わりの深い地域への応援が可能となる税制上の方策の実現に向け検討する、としています。

2  都・区当局による反論の内容
 国の検討機関での議論に対して、東京都および特別区長会の反論が6月に出されました。都市部の財源を吸い上げ地方に回そうとする議論は、地方分権の本質を見失わせるものであり、真の地方分権実現に向けた改革を推進するべき、として、以下のように基本的に同一の考え方を展開しています。
 
(1)東京都の「大都市狙い撃ちの『財政力格差是正論』への反論」
 都市対地方の問題にすり替えず国と地方のあるべき姿を目指す大局的議論をすべき、権限と税源の委譲なくして地方分権はない、財政力は歳入・歳出・行財政改革努力を合わせて考えることが必要、地域間の税収の偏在を強調する税制見直し議論は東京への打撃になるのはもとより地方税のあり方から見ても問題が多い、としています。大都市特有の財政需要(道路・踏み切り整備のコスト、都市型水害対策)、他に先んじた行財政改革努力(職員削減、監理団体見直し、投資的経費をはじめとした歳出削減など)を強調し、特に、法人二税の配分見直しや国税との税目交換について、地方分権改革に逆行する、法人二税の果たしている役割を無視していると反対しています。ふるさと納税は税制のあるべき姿を歪めるとしています。

(2)特別区長会の「『東京富裕論』への反論」
 税収のみで東京が富裕だとするのは一方的で、地方交付税を含めた財政力や東京の実情を見ない乱暴な議論である、国と地方の役割を見直し、権限と財源を実質的に国から地方に移すべき、偏在は地方交付税の財源保障で調整するべきだが交付税が削減され財源不足が生じている、と主張しています。特別区は膨大な行政需要を抱えているとして、具体的な事例(公共施設の耐震化、義務教育施設の改築、深刻な介護需要、生活保護費急増、ごみ処理、密集市街地対策など)をあげ、さらに、行財政改革を率先して進めているとしてこの間の人員削減を強調し、終わりに、より一層の地方分権改革こそが必要としています。

3  都・区当局による「反論」への評価
 都・区は、地方財政の厳しさは、地方交付税の大幅削減を断行したためだ、「権限と財源を実質的に国から地方に移すべき」と批判し、「国から自治体への権限委譲、税源委譲」を主張していますが、これは当然の主張であり評価できます。「三位一体改革」として、国家財政の赤字解消と地方自治体への負担転嫁をねらう政府の姿勢を改めさせる、という点で一致した対応が行われるべきです。
 しかしその一方で、東京都・区長会はともに、「財政健全化」に努力し、職員削減をはじめとした徹底した歳出削減を国・他自治体に先駆けて行ってきた、と強調しています。都・区は、大企業本位、オリンピック口実の開発を含む大規模開発中心、住民のくらし切り捨ての大都市財政運営を推進してきました。「反論」でも、インフラ整備などの大都市財政需要は強調するものの、福祉や住宅の行政ニーズにはほとんどふれていません。開発優先の「行革」を推進し、住民や職員への犠牲押しつけを強める「財政健全化」を全国の自治体に拡大するわけにはいきません。住民福祉を増進する役割を担うべき自治体が、「財政健全化」や財源不足を理由に住民施策の見直し・削減を押し進めることは、労働組合として到底容認できないことです。

4  地方への財源配分を大幅に拡大して真の自治を確立し住民を守る民主的な税財政制度実現を
 第一に、自治体間の税収格差、財政力格差は、本来、国と地方の財政支出分担に見合った国と地方の財源配分によって対応すべき問題です。国から地方への財源配分の大幅な拡大を行うことが求められています。政府やマスコミの論調は、財源が偏在するとして地方財政の枠内での対処にすりかえ、大都市と地方との対立を意図的に描き出して分断を強める、新たな地方財政攻撃といえます。地方交付税がもつ財源調整の機能は重要であり、財政格差に関しては国が交付税の削減をすすめていることこそが重大です。交付税を削減して本来必要な国の負担を減らすのではなく、地方財政を充実していくために、地方交付税にある財政調整機能を積極的に生かし拡充していく見直しが求められています。
 憲法で規定する地方自治の本旨(住民自治・団体自治)を拡充するためにも、自治体の財政自主権を確立することが必要です。都・区が主張するように、「国から自治体への権限委譲、税源委譲」を行い、自治権の拡充を図るべきです。
 
 第二に、都民生活の困難さが増すもとで、民主的な税財政の確立とともに、都民負担の軽減を図ることが求められています。この点での都・区の対応は不十分であり問題があります。東京都は、「国や地方全体に比べて厳しい歳出削減に取り組んできた」と「改革努力」を強調し、区長会は「特別区は行財政改革を率先して進めている」としています。福祉・教育など都民施策を削るのではなく、自治体として住民のくらしを守ることが必要です。都・区は、応能負担、累進課税の強化、最低生活費は非課税とすることなど、税や社会保障のもつ所得再配分機能を発揮させるため、国に対し改正意見を出すべきです。
 
 第三に、大企業に対して、法人二税など自主課税権の強化や社会保障負担の拡大を求め、大都市ゆえに必要な都民施策を拡充するための歳入を確保するべきです。東京都は法人二税の人口基準等での「配分」や交付税財源化に反対していますが、これだけでは不十分です。大企業の法人税等の負担は連続して切り下げられ、都内でさまざまな軽減、優遇措置を受けながら、首都の巨大な産業集積を利用して莫大な利益をあげています。都民や中小企業に対する大企業の横暴勝手は正さなければなりません。法人二税制限税率の引き上げ、下げ続けた法人税率の大幅引き上げを国に対して要求するよう都・区に求めるとともに、法人二税の税率を法で定める限度いっぱいの超過課税税率に戻すこと、また、新増設にかかる事業所税の復元を行うなど、大企業に応分の負担を求め民主的な財政運営を行うことが重要です。
 
 東京自治労連は、住民・職員犠牲の「自治体構造改革」に基づく税財政制度ではなく、住民のくらしを守る民主的な税財政の確立と地方自治の拡充を求めて、今後も運動をすすめていきます。