安易かつ拙速な生活保護基準の引き下げに反対する
(生活扶助基準に関する検討会報告について)
2007年12月15日
東京自治労連中央執行委員会
 厚生労働省社会・援護局長の私的研究会である「生活扶助基準に関する検討会」(以下「検討会」という。)は、11月30日、生活保護基準の引き下げを容認する報告書を出し、これを受けて舛添要一厚生労働大臣は、この報告を基本に来年予算編成にどう反映させるか検討していくとしています。
 生活保護基準は、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」の基準であって、国民の生存権保障の水準を決する極めて重要な基準です。「改正」された最低賃金法には、生活保護基準を下回らないことが盛り込まれ、生活保護基準が下がれば、それに連動し最低賃金の引き上げも抑制されることになります。また、生活保護基準は、地方税の非課税基準、介護保険の保険料・利用料や障害者自立支援法による利用料の減額基準、公立高校の授業料免除基準、就学援助の給付対象基準、また、自治体によっては国民健康保険料の減免基準など、医療・福祉・教育・税制などの多様な施策の適用基準にも連動しています。生活保護基準の引下げは、現に生活保護を利用している人の生活レベルを低下させるだけでなく、所得の少ない市民の生活全体にも大きな影響を与えるものです。このように重要な議論は、充分に時間をかけて慎重になされるべきであり、公開の場で広く国民に意見を求めた上、生活保護利用者の声を十分に聴取してなされるべきです。にもかかわらず、厚生労働省局長の私的研究会が、10月19日の第1回開催からわずか1ヶ月半足らずでまとめた報告書を根拠として、基準の切り下げに踏み込むとすれば、手続的にも極めて問題が大きく、拙速に過ぎると言わざるを得えません。
 検討会報告書は、低い方から1割の低所得者層の消費支出統計よりも現行生活保護基準のほうが高いことを保護基準切り下げ容認の根拠として挙げています。生活保護の「捕捉率」(制度を利用する資格のある者のうち現に利用できている者が占める割合)が極めて低く、生活保護基準以下の生活を余儀なくされている低所得者が多数存在する現状において、現実の低所得者層の収入や支出を根拠に生活保護基準を引き下げることを許せば、生存権保障水準を際限なく引き下げていくことになります。「ワーキングプア」が多数存在する中で、生存権保障水準を上記のようなことを根拠として切り下げることは、格差と貧困の拡大・固定化に繋がります。一部マスコミ報道では、厚生労働省が保護基準の切り下げを断念し、級地基準を見直して、都市部の基準引き下げを行う方針を固めた、とされています。しかし、この検討会でも級地基準について充分に論議・検証されたとはとても言えない状況です。
 これまで東京自治労連は、生活保護基準よりも低い最低賃金の引き上げを求める運動と同時に、低い最低賃金に保護基準を合わせるのは貧困へのスパイラルを招くものであると批判してきました。この立場から、安易かつ拙速な生活保護基準の切り下げや級地基準の見直しには断固として反対する取り組みを提起し、厚生労働省への「生活扶助基準の引き下げ中止を求める要望書」集中を実施してきました。
 また、検討会に対する運動は、生活保護問題対策全国会議や日本弁護士連合会や各地の弁護士会、司法書士会、全生連、自治労連などの粘り強い運動と共同の取り組みが進められました。その結果、厚生労働省も保護基準引き下げを強行できず、「生活保護基準の切り下げを断念」と、一部マスコミに報道されるまで追い詰められています。
 東京自治労連は、厚生労働省が生活保護利用者や市民の声を充分に聴取し、慎重な検討を行うことを強く求め、今後も関係諸団体や市民とともに生存権を守るために運動を繰り広げ、保護基準の切り下げに断固として反対し、厚生労働省が断念するまで闘うこと、廃止された老齢加算、削減中の母子加算の復活を求め、引き続き、「生存権裁判を支える東京連絡会」に結集して運動を進めることを表明します。