都立病院経営委員会報告
「今後の都立病院の経営形態のあり方について」に対する見解
2008年1月16日
東京自治労連中央執行委員会
 11月26日、都立病院経営委員会は、「今後の都立病院の経営形態のあり方について」とする報告(以下、経営委員会報告という)を東京都病院経営本部に提出しました。
 都立病院にふさわしい新たな経営形態として「一般地方独立行政法人(非公務員型)が制度的に最も柔軟な経営形態である。」とする都立直営を放棄する内容となっています。一方で、地方独立行政法人の制度面での大きな課題を具体的に掲げているなど、矛盾ある報告となっています。
 さらに、「誰もが安心して医療を受けられる環境を整備することは、東京都に課された重要な責務」としたうえで、「現時点ではまず、(医師不足対策など)現行の制度の下で可能な限りの方策を講じることが重要である。」とし、拙速な経営形態移行に対して形式的には慎重な対応を求めています。しかし、経営委員会が11月1日、最終委員会の(案)で報告したものを11月26日プレス発表の際、あらためて独法化のメリットを強調しています。
 経営委員会報告の内容は、事実上、地方独立行政法人化の問題点を指摘すると共に、私たちの立場からみれば、慎重な対応を求める運動の手がかりとなるものであり、この間の都立病院を都立直営で堅持し、都民の命と健康を守る闘いの到達点といえます。

経営委員会報告は職員や地域住民の要求と真っ向から対立する
 東京都は、昨年7月13日に「行財政改革実行プログラム」を発表し、都立病院について「地方独立行政法人化などを視野に入れ、新たな経営形態のあり方を検討する。」ことを明記すると共に、老人医療センター等については、具体的に平成21年度に地方独立行政法人設立予定とする方針を打ち出しています。
 そして、これに基づき、5月31日には老人医療センターなどを非公務員型地方独立行政法人に移行する「板橋キャンパス再編整備基本構想」が発表されるなど、都立病院の地方独立行政法人化推進へ向けた強い流れの中で、都立病院経営委員会における経営形態検討が進められてきました。
 養育院支部は、「独立行政法人化は、民営化か廃止への一理塚であるといっても過言ではありません。高齢者医療・研究は、まさに不採算部門であり、独立行政法人化には最もなじまない事業です。」とし、また、衛生局支部は、「都立病院を変質させる地方独立行政法人化については断固として撤回を求め、都立直営で都民・患者の生命と健康を守るため奮闘するものである。」と見解を発表し、都立直営を堅持する地域ぐるみの駅頭宣伝・集会を開催しています。
 経営委員会報告の内容は、こうした現場職員や地域住民の声をまったく無視したものとなっています。

地方独立行政法人化を推進するも大きな5課題を指摘
 私たちは、都立病院等の地方独立行政法人化に対し、基本的な問題点として、@医療をコスト削減の対象とするものであることA地方独立行政法人化は都民不在・職員犠牲の都立病院運営をもたらすことB地方独立行政法人という運営形態では、東京都自らが掲げる「安定的で継続的な行政医療提供」は構造的に不可能であることを指摘するとともに、「板橋キャンパス再編整備基本構想」において、都当局が地方独立行政法人化のメリットと称した内容に対しても、具体的な反論を見解として表明してきました。
 経営委員会報告は、「地方独立行政法人の制度面での課題」として、以下の5点を指摘し、「新しい経営形態への移行は、質の高い医療サービスの提供に資するものでなければならない。そのためにも移行に当たっては、様々な課題の解決に向けて十分な検討を行うべきである。」としています。
 課題として、@導入事例が極めて少なく、十分な検証がなされていないA開設準備を進めている「精神医療センター(仮称)」は、現行法規定により非公務員型では運営できないB国の独立行政法人は、運営交付金一律削減など、財政面からの効率化が前面に出ており、財政状況によっては影響を受けるおそれがあるC法人独自に長期資金の調達ができないD職員の職場環境整備に配慮する必要があることを指摘しています。
 このことは、私たちが強く主張してきた問題であり、東京都が5課題をクリアーしなければ都立病院の独法化にすすめないとすれば、このハードルを引き下げない運動や取組みが重要であり、東京都の対応を注視していく必要があります。
 
都立病院を評価するのであれば、結論を独立行政法人化とすることは論理矛盾
 経営委員会報告では、制度面での課題とともに、運営面での課題として医師不足問題などを指摘し、現時点においては、「現行の制度の下で可能な限りの方策を講じることが重要である。」と強調しています。
 さらに、「誰もが安心して医療を受けられる環境を整備すること」を「都に課された重要な責務」とし、「都立病院が中核的な役割を担って」いくこと、「良質な医療サービスの確保に引き続き努めていくことが不可欠」としています。
 このように指摘するのであれば、都立直営での運営で改善することが当然であり、結論を独立行政法人化とすることは論理矛盾です。
 経営委員会報告の矛盾した報告は、都立病院の再編と地方独立行政法人化などに反対し、都民の命と健康を守るために、都民との大きな共同をつくり、闘ってきた運動・世論の反映でもあります。
 
都当局は、都立病院の直営を堅持し充実発展させるべき
 病院経営本部は、経営委員会報告を受けて、今年度中に「第二次都立病院改革実行プログラム」を策定する予定ですが、報告が指摘する問題点を優先して解決すべきで、安易な経営形態見直しを推進することなく、質の高い医療サービス提供へ向けて現行の制度の下での改善方策をただちに具体化すべきです。
 さらに、老人医療センターの地方独立行政法人化の具体化についても、ただちに中止すべきです。
 東京自治労連は、石原都政の都立病院を崩壊しようとする意図をいささかも軽視せず、地方独立行政法人化を阻止し、直営で充実した医療を都民に提供できるよう全力で取組みを進めていくものです。