区市町村窓口業務における「市場化テスト」対象拡大問題について
2008年2月6日
東京自治労連中央執行委員会
 政府は、1月17日付で、各自治体に対して、区市町村窓口業務における市場化テスト対象範囲の拡大について通知しました。
 新聞報道では、「婚姻届も民間委託OK」(2月4日付、読売新聞)などと、市場化テスト対象業務の拡大と、「受付」「引渡し」に加えて、新たに書類作成業務も民間委託可能とする報道がなされています。
 政府による安易な市場化テスト対象業務拡大に強く抗議するものです。
 同時に、今回の措置は、「特定公共サービス」が拡大されたものではなく、あくまで「市町村の適切な管理の確保」を前提とした対応となります。
 このため、「労働者派遣法に従わなければならない。」等の重要な留意事項が示されており、これらを踏まえて、各自治体における具体的な委託拡大阻止の対応を強化していくものです。
 
「公共サービス改革基本方針」の改定
 昨年12月24日に「公共サービス改革基本方針」改定が閣議決定されました。
 「窓口関連業務」として住民異動届や戸籍届出などの24業務が示され、「民間事業者に委託することが可能な業務の範囲、民間委託を実施する際の留意事項等について、平成19年度中に地方公共団体に周知する。」というものです。
 この閣議決定を受けて、内閣府公共サービス改革推進室が、1月17日付で「『公共サービス改革基本方針』の改定について」を各自治体に通知し、「市町村の出張所・連絡所等における窓口業務に関する官民競争入札又は民間競争入札等により民間事業者に委託することが可能な業務の範囲等について」(以下、内閣府通知という)を発表したものです。(別添参照)
 
従前は6業務の「受付」と「引渡し」のみが対象
 「競争の導入による公共サービスの改革に関する法律」(以下、市場化テスト法という)が制定され、市場化テストが06年度末に導入されています。
 自治体関連の窓口業務としては、法第34条において@戸籍謄抄本等、A納税証明書、B外国人登録原票の写し等、C住民票の写し等、D戸籍の附票の写し等、E印鑑登録証明書、について、「特定公共サービス」と規定して、民間事業者に業務委託を可能としましたが、委託業務の範囲については「受付」及び「引渡し」に限定されています。
 このため、この事態を不服とする官民競争入札等監理委員会(事務局は内閣府)は、市場化テスト対象範囲拡大へむけて、関係省庁へ「一次検討要請」を実施し、協議を進めるとともに、昨年8月には関係区市町村行政改革担当課に対して、アンケート調査を実施したうえで、「二次検討要請」を行うなど、窓口業務市場化テスト拡大へ向けた強引な対応を重ねてきたものです。
 民間委託拡大のみを目的とした内閣府主導の対応に対して、強く抗議を行うものです。
 同時に、「受付」「引渡し」以外の業務について「市町村職員自らが実施しなければならない」と主張してきた総務省・法務省が、説明責任さえ十分に果たさず、急遽、見解変更を行ったことに対しても抗議するものです。
 
24業務及び書類作成等業務への大幅な拡大
 別添の内閣府通知のとおり、今回の対象業務拡大は、「住民異動届」「戸籍の届出」「国民健康保険関係の各種届出書・申請書受付及び被保険者証等の交付」「身体障害者手帳の交付」など24業務に達し、戸籍・税・福祉・保険をはじめとする区市町村窓口全般にわたる規模に達します。
 さらに、住民票や転出証明書などの記載・作成のみならず、電算化されている場合には、端末の入出力操作を含むものとしています。
 しかし、今回の対象業務拡大は、「市町村の適切な管理のもと、市町村の判断に基づき民間事業者の取扱が可能な窓口業務」と位置付けられています。
 市場化テスト法第34条の規定に基づく「特定公共サービス」は、官署内に市町村職員が常駐しない事例を想定しており、この規定に基づく委託可能業務は、従前どおり6業務の「受付」「引渡し」業務に限定されます。
 このため、これらの窓口業務を民間事業者に取り扱わせる際の「留意事項」が示されています。
 
労働者派遣法に従うこと
 留意事項として「市町村の適切な管理の確保」を強調し、具体的には、「民間事業者が業務を実施する官署内に市町村職員が常駐し、当該職員自らが臨機適切な対応を行うことができる体制とすること。」としています。
 このことは、政府自らが、業務運営について「請負契約=民間委託」では実施できないことを明確に主張しているものです。
 市町村の指揮監督下で民間事業者が業務を行うことは、「労働者派遣」となります。加えて、「請負」の要件を示す職業安定法施行規則第4条の各号を満たしていないことも明白です。
 このため、内閣府通知においても、「市町村職員が委託先職員に指揮命令して業務の処理を行わせたと認められる場合には、契約形態にかかわらず労働者派遣にあたり、労働者派遣法に従わなければなりません。」と明記されています。
 また、個人情報保護に関わっても、個人情報保護条例の整備(罰則規定対象拡大)や情報取扱実施要領策定、端末アクセス制限などを列記しています。
 
安易な委託拡大は事実上不可能
 留意事項を踏まえるならば、「請負」では業務委託できないため、すべて「労働者派遣」となります。
 労働者派遣法は、政令で定める26業種以外は、労組の意見聴取を前提としても最長3年間の導入に限定されます。さらに、派遣労働者への雇用契約申し込み義務の扱いなど、法の規定を踏まえるならば、恒常的な委託導入は困難といえます。
 
住民サービスも大きく低下
 業務運営や効率性の面においても疑問が多く、住民サービスの低下も強く懸念されます。
 そもそも、受付・申請書審査・添付書類審査・入力・作成・交付という一連の業務の各段階において、「判断=決定審査」は伴うものです。
 民間事業者に判断を許さず、市町村職員が判断を行うということでは、常時、民間事業者に市町村職員が寄り添うことがないと、その都度、対応者が入れ替わることとなり、結果的には利用者にとってサービス低下となります。
 したがって、今回の内閣府通知に基づく業務委託は、法制度並びに住民サービスの面からも問題が多く、区市町村における安易な委託化・委託拡大に対しては強く反対するものです。

なお、この件について、2007年8月8日の窓口業務民間委託化問題アンケートに関する見解を参照して下さい。